何もしないで発作が治まることなど、あまり有り得る事ではなかった。
 『発作』を起こす人には、必ずそれに見合った『対処法』があるはずなのだ。
 それを施さず、ただ大人しくしているだけでは、発作は治まりそうになかった。
 だが、対処するための薬は教室の自分のカバンの中にある。自分の弱々しい姿を他人に見せるなんて事は、はできなかった。
 それでも、心地の良い風と湿気の丁度良い場所が、の命を繋げていた。

 学校中に響き渡った4時限目終了を示すチャイムが鳴り、校内は騒がしくなった。
 なのにが教室に戻ってくる気配がないため、跡部は不審に思った。
 そう思っていると、教室内で小さい女子の騒ぐ声が聞こえた。
 教室の入り口の方を見ると、忍足がゆっくりと跡部の方へと近づいた。
「跡部、はどこへ行ったん?」
「知らねぇよ。3時限が終わってから戻って来てねぇ…。」
 跡部の言葉に、忍足は不信を抱いた。との約束をあっさりと破るとは思えなかったからだ。
 だが、戻ってきていないのは事実だ。
「…また、…何かあったんやろか…。」
 忍足にとっては、に何かがあったのかもしれないと思うだけで辛かった。
 頼ってもらえず、の領域に踏み込むこともできず、ただ眺めているだけの自分。
 忍足の中に歯痒ささけが残り、思わず拳を握り締めていた。
 結局、受け入れられたようで、変わったコトは何一つ無かったのだ。

「くそッ!治まらねぇ…。どうすりゃいいんだよ…。」
 はまだその場にいた。少しずつ治まってはいるものの、完全に治まることは無かった。
…。」
 小さく親友の名を呟いてみても、本人が来るわけではないのに、今のは口に出して呼ばずにはいられなかった。
「忍…足……。」
 何故ココで、忍足侑士の名が出てくるのか、には分からなかった。無意識のうちに呟いていた。
 自分は何をしているのかと、だんだん惨めな気分になってきていた。
 もし、このまま死んでしまっても、案外平気かもしれないとまでは思うようになっていた。
ッ!!!」
 を呼ぶ声が聞こえた。それが誰なのか判断するまもなく、は意識を手離した。