跡部は忍足がを呼び出したその日、と一緒に帰った。は少し迷ったように、跡部の誘いを了承した。
「久しぶりですね。一緒に帰るのは・・・。」
「そうだな。」
二人の間で、会話が続かなかった。沈黙のせいで、五月蝿いくらいに周りの雑音が良く聞こえた。
「・・・護ってやれなくて、悪かった。」
沈黙を破ったのは跡部の方だった。は驚いたように目を見開いて跡部の顔を見た。
しかし、すぐに表情を戻した。
「跡部さんのせいではないですから・・・。私が弱いからですし、私こそ、迷惑ばかりかけてしまって・・・。」
は自分で言って、何だか情けない気分になった。
跡部のせいではない。自分のせいなのだと、無意識に自分を責めてしまう。
「・・・一つ、聞いていいか?」
「・・・はい、何でしょうか?」
は、跡部の声に顔をあげた。足を止めた跡部を見て、も歩みを止めた。
「は、俺をどう思ってる?」
思いもしない質問に、は目を見開いた。何を聞かれたのか分からない、と言った表情で跡部を見た。
跡部はいたって真剣だった。
「・・・私には、人を好きになる、と言うのがどういうことなのか正直、よく分かりません。さんも、忍足さんも、跡部さんも私にとっては大切な人です。他の人に比べれば、私にとって跡部さんは特別な人です。ただ、恋愛感情かと言われると今の私には、答えられません。でも大切な方だと思ってます。」
は正直に、ちゃんと跡部の顔を見て言った。はっきりと、自分の思いを伝える相手。
それだけで、が跡部を信用していることがよく分かった。
「・・・そうか・・・。」
跡部は、納得したような、してないような微妙な心境だった。
答えてくれたことは嬉しかった。だが、それと同時に異性として見られているのかが、不安になった。
それでも、がちゃんと自分の事を思ってくれていることが分かった。
跡部は、自分がとても特別なように思えた。
「はっきりしてない返答で、すみません。でも、これが今の正直な気持ちなんです。」
は柔らかい、優しい笑みを浮かべた。
そんなが、跡部は愛しくて愛しくてたまらなかった。
跡部はゆっくりと近づいて、の頬に小さく口付けた。


