はアレからベットから出ることもなく、ボーッとしているだけだった。
考えるほど苦しくなって、一旦考えるのを止めた。幸い誰も来ないから少しだけ落ち着いていられた。
なのに、扉の開く音が聞こえた。1人のようだけど、今は誰かに顔を見られたくなくて、寝たふりをした。
それでも、自分の名前が呼ばれれば…振り向いてしまう。
「……大丈夫か?」
大切なアルトの声が自分の名前を呼ぶだけですごく安心した。
「さん…はい、大丈夫ですよ。」
人に見られたくないって思っていたのにはになら平気だった。
だから少しでもに心配をかけないようにしなければいけないのに…。
「……頼むから、無茶しないでくれ。…が傷付くのが…嫌…だからさ…。」
はの言葉に固まってしまった。がどれだけ自分を思ってくれているのかが分かる言葉。
「…傷の痛みより…自分の大事なモンを失う方が…もっと痛いから……俺は…を失うのが…怖い…」
の弱々しい表情を見て、は心苦しくなった。普段、を護る。
そのを元気付けるのも。を苦しませるのも。からすれば微妙な心境だった。
「…さん…私に何かさんの出来ることはありますか…?」
せめてただ護られるだけじゃなくて、何かできることを…
「…に出来ることねぇ…自分の意思表示をハッキリする事だな。黙ってたら相手が調子付くから。後は…」
の弱々しい表情が消えて、いつもの笑顔が戻る。
「俺のそばにいる事!コレ、めちゃめちゃ必須な!」
の言葉は強い。嬉しい言葉も悲しい言葉も強くて重くて…だから信用できる。
の言葉だから嬉しい。
「分かりました。努力してみます。」
もまた、いつもの笑顔になる。は今まで悩んでいたのが嘘のようだった。
も発作が治まって、精神的に落ち着いてくるといつものに戻って…強くなる。
の強さには間違いなく繋がっている。の強さには必要不可欠だった。
2人の絆が深まれば深まるほど跡部と忍足との距離は広がっていった。
2人に介入できるほど…跡部と忍足に力はなかった。
それは跡部と忍足にとって、嬉しいことであり、辛いことだった。


