「あ、。お早うサン。」
さん、お早う御座います。」
 次の日、学校でのの様子は、いつもと変わらなかった。
 お互いに、そこまで深入りしなかったからだ。は、昨日のことで、口出しはしないと心に決めていたから。
 が話すまでは聞かないつもりでいる。も、の気遣いに気づいていた。
 にしても、何も聞かれないのは、正直助かった。自身が、どういっていいのか分からなかったから。
「あ、そうだ・・・」
 は、階段を上りきってから、カバンを探り出した。は、何だ?と進むをやめてを見ていた。
 がカバンから出したのは、綺麗に包装された、少し小さい箱。
「2日遅れましたけど、誕生日プレゼントです。」
 と、笑みを浮かべて、箱をに差し出した。は、一瞬固まって、箱とを見た。
 忍足とのことで頭が一杯で、自分の誕生日のことなどすっかり忘れていたから。
 も、笑みを浮かべて、箱を受け取った。
「サンキュッ♪」
 その笑顔はいつもと変わらない。は、少し安心した。
「帰ってから、開けさせてもらうな。」
「はい。」
 も、笑顔で返事を返す。
「じゃぁな。」
「はい。」
 そういって、2人とも、自分の教室に向かった。

 朝の教室には、まだ生徒はほとんどいなかった。8時にもなってない時間だと、来ていない生徒も多い。
 朝練のある生徒は教室には帰ってきていないから、ホントに人は少ない。
 は、この人の少ない時間がよかった。他人と付き合うことはあまり好まないから。
 話とかをしなくても、大勢と一緒にいるだけでもダメだった。
 生徒数の多い氷帝に通うことこそがにとってのリハビリだった。
 それでも、やっぱりは無意識に壁を作っていた。
「よぉ」
 聞きなれた声がした。自分の近くに立っていたのは・・・跡部景吾。
「おはよ・・・」
 跡部も登校してくる時間は早い。大会がすんだとかで、今のところ朝練はないらしい。
「で、昨日はどうなったよ?」
 跡部は自分の席にカバンを置いて、荷物を片付けながらに尋ねた。
 は、どう返答していいか分からなかった。
「忍足に聞けよ。俺に聞かないでくれ。」
 少し怒ったような声で、素っ気無く言った。
 さっきまでは、いつもと同じ表情だったのに、忍足の名前が出た途端に不機嫌な顔になった。
 跡部は少し驚いたが、ならこれ以上は聞かないと言った様子で
「そうかよ」
 と素っ気無く返事を返した。

 自分が言った返答に、は自己嫌悪に陥った。結局、逃げて忍足に押し付けただけだ、と。

 は、溜息をついた。どうして自分はこうなのかと、どうしても考えてしまう。
 とりあえず、何でもいいから何かをしようと、机の中を探り出した。
 勉強でもして頭を働かせれば、少しは気がまぎれると思ったからだ。
 だが、入れた覚えのない小さな紙が入っていた。それを開いてみると、何か書いてあった。

『今日の昼休みに、裏庭に来てください』

 誰が入れたものなのかは書いてなかった。しかし、どんな奴が入れたのかは、容易に想像できた。
 かと言って、ここで逃げたらまた後悔することになると思い、はそれに従うことにした。
 紙を見て、少し強張った顔するを見て、跡部は少し気になった。
 それでも、今のにはあまり話しかけない方がいいと判断して、何も聞かなかった。
 跡部なりの思いやりだった。

 が教室に入ったとき、忍足はすでに登校していた。ただ、ボーッと窓の外を見ている。
「忍足さん・・・?」
 の声に気づいて、忍足はの方を見た。なんだか、疲れているように見えた。
「忍足さん、お早う御座います。」
「あぁ、ちゃん、お早うサン・・・」
 忍足はどこが元気がなさそうだった。は、自分の席に着くと、荷物を机に入れ始めた。
 机の中に、小さな紙が入っていることに気づく。

『今日の昼休みに、裏庭に来てください。』

 ただ、それだけが書かれていた。差出人の名前はかかれていなかった。
 まぁ、無視するわけにはいかないと思って、昼休みには裏庭へ行って見ようと思った。
 紙を、ブレザーのポケットに入れて、残った荷物を机に入れた。
「忍足さん、どうかしたんですか?」
 元気のない忍足を心配して、は声をかけた。
「いや、別に、何でもあらへんよ?」
「そう・・・ですか。」
 気にはなったが、これ以上は聞かないことにした。