「跡部と、2人きりにしたのはいいけど・・・忍足、俺らはどうするよ?」
の自由行動は、自分の為でもあり、跡部とのためでもあった。
は、どんなときでもを優先に考えたのだ。
跡部とを2人きりにしたのはいいが、は何もしたいことがなかった。
「忍足、どっか見たいトコでもあるか?」
「いや、俺は特にあらへんけど・・・」
の隣を歩いていた忍足は、少し戸惑ったように言った。
「じゃぁ、どうやって時間潰そうかなぁ・・・」
近くにあったベンチに座って、考え出す。忍足は、ただ、どうやって想いを伝えようかと考えていた。
そんな時、がすくっと立ち上がった。
「見たいトコあった。忍足、お前も来い。」
「え、あ、ちょ・・・っ」
またも腕を引っ張られる状態となって、は忍足の腕を掴んでいた。
それがなんだか少し嬉しくて、忍足は少しだけ笑みを浮かべて、について行った。
ついた先は、スポーツ用品店だった。は、迷うことなく、テニスラケットの置いてある棚に向かった。
「最近さぁ〜ちょっと真面目に考えてラケット買おうかと思ってんだけどさ。」
少し値の張ったラケットを手に持って、それを見ながら忍足に話しかけた。
「お前の意見とか聞いときたいんだけど、いいか?」
「そら、かまわんけど・・・。そらやったらちゃんとした店で買った方がええんとちゃうか?」
「そうだろうけど、何処がいいのかも知らねぇし。」
持っていたラケットを元の棚に置いて、忍足の方を向いた。
「じゃ、今度、いい店教えてくれな。」
「あぁ、ええよ。」
は忍足に友人として接している。忍足もそのことをよく分かっていた。
だからこそ、想いを伝えずらかった。今のこのささやかな幸せの時間が、関係が、崩れてしまうのが怖かった。
今のままでも忍足は幸せだったから。うまくいけば更なる幸せ。ダメだったら幸せを失う。
忍足は今も、悩み、想いを伝えられずにいた。
集合する時間になって、集合場所に行くと、と跡部はもうそこにいた。
2人が並んでいるのが様になっていて、悲しいようで嬉しかった。
はちょっと複雑な笑みを浮かべて、2人に近づいた。
「待った?」
「いいえ、今来たところですよ。」
いつもと変わらない親友の笑顔。もしかしたら、前よりも明るくなったかもしれない。
「跡部、に変なことしてないだろうな?」
「してねぇよ。」
跡部は綺麗な顔を少し歪ませて、に返事をした。
「さて、腹も減ったし。・・・何食う?」
「何でもいいですよ。あ、さんの分はちゃんと奢りますよ。」
はに、誕生日だからと、に何かをしてあげたかった。
あのが、のそんな気持ちに気づかないはずはない。
「じゃ、お願いしようかな。」
「・・・で?何を食うんや?」
「ファーストフード。」
「「はぁ?」」「ぇ・・・?」
は小さな声を出して、跡部と忍足はマヌケな声を出した。
「・・・お前・・・こんな日にファーストフード食うか?普通・・・」
「そや、も少しちゃんとしたモン食わんか?」
「いいジャン、別に。俺が食いたいんだから。ファーストフード。」
今日はの誕生日だ。皆がの意見を聞いた。跡部も、庶民の味(?)を味わうことになった。
言っていた通り、の分はが奢った。
とは言ってもは食事に少し制限があるといって、あまり食べていないのだが・・・。
が少し悲しそうな顔をするが、気にすんな。と笑っては言った。
跡部は庶民の味(?)にあまり慣れなかったようで、あまり食べなかった。忍足とは普通に食べていた。
「満足〜。、ご馳走さん♪」
「いえ、いいんですよ。」
はいつもと変わらないからか、もの体のことで悲しそうではなかった。
「これからどうしましょう?」
「俺、ラケット買いたいんだけど、忍足、案内してくれ。」
「は?今から行くんか?」
「さっき約束したじゃん。いいだろ?」
と忍足の会話に、少し嬉しそうにする跡部と。
この2人が、少しだけでも、うまくいってるのだと思った。
実際は、何も変わっていないのだが・・・
「、跡部、いいだろ?」
忍足の方を向いて話していたが振り返って2人に聞いた。
「俺はかまわねぇぜ。」
「私も、いいですよ。」
2人の了承を得ると、は、決定だ。と忍足に言った。
忍足は観念したように、「こっちや・・・」と言って3人に背を向けた。
3人は、忍足の後についていった。


