の誕生日である土曜日。、忍足、跡部の4人は、あるデパートに買い物に来ていた。
 ここでプレゼントを買ったりしてショッピングを楽しむつもりなのだ。
 は遊園地のようなところを嫌っていたので、こっちの方がいいだろうとは考えたのだ。
さん、何か必要な物があったら言ってくださいね。」
「んー・・・がいるから跡部と別れてっつーのはダメ?」
っっっ!!!!!」
 冗談だと分かっていてもつい怒鳴り声を上げてしまった跡部。
 跡部の隣にいた忍足は思わず耳を塞いでいた。はなんだかおかしくてクスクスと笑っている。
「まぁ、冗談だけどさぁ・・・でも、欲しいものとかって特にないからなぁ・・・」
「女にしては珍しいな。普通、アクセだの服だの、欲しがるけどな。」
「俺に女らしさを求めてどーすんだよ・・・」
 が呆れたように跡部の言葉に返事を返す。
「それにだってそんなに興味ないだろ?」
「そうですね。あんまり欲しいとかは思いません。」
 そういうものを欲しがらなくてもは女らしい。大人しくて、可愛くて、清らかな感じがする。
 も美人ではあるんだが、その性格から女らしいとは言いがたい。
 服装とかはシンプルでスッキリしていていいんだが・・・
「だいたいなぁ、自分を飾ってどうすんだよ・・・。何の意味があるのか、そっちのほうが分かんねぇ・・・」
 この時点ですでに女らしくない・・・大抵の女は飾るものである。
 好みは人それぞれだが、ここまでくると珍しかった。
「なぁ、時間決めてさ、待ち合わせて自由行動にしねぇ?」
 はクルリと後ろを向いて、提案する。は自由気ままに行動するのが好きなヤツだった。
 の誕生日なんだから従ってもいいんだが・・・それでは一緒に来た意味がない気がした。
「さすがにそれは・・・」
「二手に分かれりゃいいじゃねぇのか?」
 が詰まったように言うと、跡部が後押しするように言った。
「言っとくが、俺はと行動するぜ?忍足なんかと一緒に買い物なんかできねぇだろ?」
 確かに・・・男同士で買い物しても面白くはないだろう。(ある意味面白いかも by管理人)
「俺も跡部と買い物なんてごめんやけどな。」
「じゃぁ、俺と組むか?忍足。」
 意外な誘いだった。は特に何も考えずに言ったんだろうが・・・さり気ないことが忍足は少し嬉しかった。
「では、決まりですね。昼食は一緒にとりましょう。12時にここに集合です。」
「了解〜。行くぞ、忍足。」
「ちょっ、引っ張らんといてぇな」
「いいから、いいから。ほら、いくぞ。」
 は忍足の腕を引っ張って行ってしまった。
 明らかにが無理矢理つれていっているように見えるがと跡部はどこか嬉しそうだった。
「うまくいくといいですね。」
「あぁ」
 と跡部は小さく笑みを浮かべてから自分達も並んで歩みを進め始めた。

、お前は何か欲しい物はないのか?」
 と忍足がいなくなって跡部がに尋ねる。
「私よりもさんに何かプレゼントしてあげてください。私はまだ14歳ですから。」
 柔らかい笑みを絶やさずに言うに跡部は困っていた。
 実際に惚れた相手に何をあげていいのか、何をしてやればいいのかわからなかったからだ。
「今日はさんのための日です。お気持ちだけ、いただいておきますね。」
 跡部の想いだけは伝わったようで、跡部も口元に笑みが浮かぶ。
「でも、アイツの欲しがるものなんてわかんねぇぜ?」
「そうですね・・・。私もさんが欲しがりそうなものが分かりません・・・」
 の顔が少し曇る。
「私、いつも助けてもらってるのに・・・いろいろ分かってもらってるのに・・・私は何も知りません。」
 の気持ちが痛いほど伝わってきた。
 自分が無知だと責めるに跡部は何も言ってやれなかった。
「アイツ・・・吹奏楽部だろ?」
 跡部のまったく違う話題には少し驚いたように顔を上げた。
「あ、はい。そうですけど・・・」
「なら、音楽関係のモノとか喜ぶんじゃねぇか?」
 跡部の言葉にの表情が少し明るくなる。
「そうですね。そうしましょう。」
 の顔が明るくなって、小さな笑みが戻ってきた。