夜になってはにメールした。このことを一番に伝えようと思ったからだ。
自分にとって大切なモノが増えたことはにとってとても嬉しいことだった。
もメールを受信すると画面を見て笑みがこぼれた。
メールの内容からがどんな気持ちなのかがよく分かる。
は明日、学校に行くのが楽しみになった。の口から直接聞きたかったからだ。
の幸せそうな声を・・・。
朝はいつもと変わらない。ただ、は珍しく真面目に授業を受けた。
隣の席の跡部だけでなく、教師までもが驚いていた。いつも空席なのに今日は空席がなかった。
昼になると弁当を持って屋上に向かった。屋上にいたのは、だけだった。
「あれ?俺、すぐに来たつもりだったけど・・・遅れた?」
「いえ、私のクラスが少し早めに終わったんです。」
「そっか。」
2人はやっぱりいつもと変わらなかった。は小さな笑みを浮かべて、は会話の流れを作る。
が屋上に来てから5分くらいして弁当をあけようとしたら屋上に誰か来た。
ドアの開く音がして振り向いてみるとそこにいたのは男子テニス部レギュラー達。
「なんや、先客がおったんか。」
「いいじゃん、別に。一緒に食わねぇ?」
が弁当を広げながら声をかける。は跡部達と目があうと小さくお辞儀をした。
「それに、昨日のこと、詳しく聞きたいし。なぁ、跡部?」
意地悪っぽく言うに跡部は少し詰まって黙ってしまった。
「なんや、もしかして2人、上手くいったん?」
「そうなんだよ、俺のがついに奪われてしまったのさ・・・。」
「さんっ」
ちょっと恥ずかしそうに慌てた様のは可愛かった。
跡部以外のレギュラー達も笑いながら、円を作るように座った。
跡部は岳人や宍戸から質問攻めにあい、困っていた。
はや忍足達とそのときのことについて話している。そのとき、放送でが職員室に呼び出された。
はまだ少し残っている弁当を片付けて、じゃぁな、と先に屋上を出て行った。
「なぁ、さん、ちょい聞きたいことがあるんやけど。」
「何でしょうか?」
前のように警戒することもなくなって、レギュラー達とは普通に会話できるようになっていた。
「のことなんやけど・・・」
「さんのことですか?」
「実は・・・な・・・」
「跡部もちゃんとしたんだから侑士もにちゃんと伝えなきゃダメだろー。」
2人が話しているところに無理矢理入り込む岳人。
岳人が言ったことでにも忍足が何を言おうとしたか分かった気がした。
「忍足さん・・・さんのこと好きなんですか?」
「まぁ、そうなんやけど・・・アイツが好きそうなモンとか何も知らへんから・・・」
「分かりました。協力しますよ。」
「おぉきにな。」
と跡部が付き合い始めたことは周りには知れ渡らなかった。
あまり知られたくないというの意思を尊重して2人が付き合っていると知っているのは男子テニス部レギュラー3年とだけだった。付き合っていても日常は何も変わらなかった。
もも普段と何も変わらなかった。
「忍足さん、お早う御座います。」
「おぅ、相変わらず、朝は早いんやな。」
「そうでもありませんよ。」
これもいつもと変わらない。2人は朝の挨拶を交わすだけだった。
「そうだ、忍足さん。」
「なんや?」
から話しかける事は滅多にないことだった。
友人として少しは親しくなれたのだと思うと、忍足は少し嬉しくなった。
「この間教えるのを忘れていましたが・・・知ってますか?もうすぐさんの誕生日なんですよ?」
「はァ?!」
忍足は知らなかったのか思わずマヌケな声を出した。
「やっぱり、ご存知なかったんですね。」
「いつや?!」
「来週の土曜日ですよ。」
は忍足の好きな人がだと知った。
だから教えたのだ。幸い、朝が早いために教室には誰もいなかった。
チャンスだと忍足は思った。上手くいくかどうかは分からないが、絶好のタイミングだ。


