夜になっても問題起こしやがって・・・。
 本当に個性的っていうか、協調性がないと言うか・・・。
 しかし、切原のあの傷は・・・。


 切原が何者かに階段から突き落とされたらしい。
 その疑いは、神尾にかかった。神尾が、切原を突き落としたんじゃないか・・・と・・・。
 切原の手当てが済むと、切原は、転んだのだという。
 そして、そこにはいなかったが、その場所に現れた。
 切原の傷にすぐに気づいたようで、そこにいた竜崎班のメンバーの顔を見渡した。
「切原、その傷はどうした?」
 が赤也に聞いた。
 ごく自然な、当たり前の質問である。
「ちょっと転んだんッスよ。」
 赤也は、視線をそらして、そっけなく言った。
「転んだ・・・ね・・・」
 どう見ても転んで出来た傷とは思えなかった。
 だが、本人がそう言っている以上、はそれ以上言いはしなかった。
「ま、そんなことはどうでもいいが、お前達も早く寝ろ。明日に響くぞ。」
「どうでもいいことって・・・それはないだろう。」
 大石が反論(?)に出たが、は即座に言い返した。
「本人がこう言っている以上、無関係者が口を出すことじゃないだろう。」
 そう、大石たちは、切原の怪我に関しては、第三者に過ぎなかった。
「お前達は、他人の心配より自分の心配をしていろ。」
 の言葉は冷たかった。だが、それが確かなことだった。
 ここにいる全員が仲間でありながら、ライバルという敵でもある。
 ライバルが敵と言うのもおかしいが、それ以外に合う言葉もない。
 とりあえず、各自部屋に戻ることにした。
 最後に部屋に戻ろうとした赤也の腕をが掴んだ。
「お前は変わった。気にすることはない。」
 これはなりの励ましの言葉。
「いつものお前でいればいい。いつものお前でテニスをすればいいんだ、赤也。」
 言葉遣いはいつもと変わらないが、言い方はまるで姉のようだった。
「分かってますよ、先輩。」
 それを悟った赤也は、笑って返事を返し、部屋に戻った。


 誰もいなくなると、は溜息をついた。
 には、犯人が分かっていたのだから・・・・・
「仕方がない・・・か・・・」
 もう一度溜息をつくと、も自室に戻って行った。