…あの子は確か、さんと一緒にいた子だな。こんなところで何やってるんだ?
英二がどこに行ったのか、探してたんだ。
かなり天気の良い日で、こんな日は絶対どこかで寝てると思ったんだが…中庭まで来て見たら、学ランを着た子が木を背凭れにして本を読んでいた。
昼休みだから別にいてもおかしくないんだけどね。
何だか独特の雰囲気があって、中学1年生にしてはかなり大人っぽい。英二も見習って欲しいくらいだ。
「何を読んでいるんだい?」
…思わず声をかけてみた。
「『生命の奇跡』という本です。…確か、男子テニス部のレギュラーの方でしたよね?」
その子は中性的な顔立ちで、ゆっくりと本を閉じた。
「あぁ、大石秀一郎って言うんだ。ヨロシク。」
「です。先輩はここで何をしているんです?」
…凄い澄んだ声だ。とても中学1年生とは思えない。声も、雰囲気も…
「あぁ、人を探してるんだ。見なかったかい?テニス部で頬に絆創膏を貼ってるんだけど。」
「…見ませんでしたよ。本に集中していましたから、例え通っていても気づかなかったと思います。」
「そうか…。どこに行ったんだ、英二の奴…。」
…困ったな…先生に探してきてくれって言われてるんだけど…
「…探すのを手伝いましょうか?」
「あ、いや、いいよ。悪かったね。本に集中しているところに声をかけて。」
「いえ、それは構いませんけど…。」
そう言った後、さんは何かに気づいたように学ランのポケットに手を入れた。
ポケットから出たさんの手に握られていたのは携帯電話。綺麗な手で携帯電話を開いてメールを見ている。
「…大石先輩、お探しの方は校舎の裏側にいるようですよ。」
「え…?」
「と一緒にいるみたいなんです。」
…あぁ、この前手塚の名前を大声で叫んでいた子か。…何だか、気が合いそうだからな、あの2人…
「有難う、行ってみるよ。」
「僕も一緒に行っても構いませんか?」
「あぁ、いいよ。」
さんはゆっくりと立ち上がって、制服に付いた汚れを払った。姿勢を正して、俺の方を見て綺麗な笑みを浮かべている。
「行きましょうか、大石先輩。」
「……英二…」
校舎の裏側へ行って、俺はある光景をみて呆れてしまった。額に手を当てて思わず溜息を吐いた。
「今日の気候は気持ちが良いですからね。そのせいだと思いますよ。」
「菊丸先輩は部活で疲れてるとしても、は何もしてないじゃない。」
さんもキツい事いうなぁ…しかし、起こさないと先生に呼ばれているしな。
「おい、英二!起きろ!」
「ん〜…」
…起きそうにないな、これは…どうしようか…考えていたら、さんがゆっくりと英二に近づいた。
「…菊丸先輩…起きて下さい。そろそろ予鈴が鳴りますよ?」
…ただ起こしているだけなのに、何だか不思議な感じがしたんだ。しかも、英二もちゃんと起きたしな。
「…目が覚めましたか?菊丸先輩。……起きて?」
英二の目が覚めたことを確認すると、英二の横で寝てた君を起こした。
「…あれ?大石、何でここにいんの?」
…英二、その反応は酷くないか?
「大石先輩、菊丸先輩を探していたんですよ?」
「え、そうなの?ごめん、大石ー。」
…まぁ、いいか。先生には休憩時間中には見つからなかったと言えば大丈夫だろうし。
…さんと、話もできたしな。そんなことを考えていると、予鈴が鳴った。
「…、予鈴が鳴ったよ。早く起きて?」
「…むー…」
…彼は英二と違って起きそうにないな…
「あぁもうッ!さっさと起きなさいよッ!!!」
バシッて良い音が響いた。…さん、それは痛いと思うよ…?
「痛い…のバカー。気持ち良かったのにー。」
「予鈴が鳴ったわよッ!が起こしてるんだから、早く起きなさい!!!」
…まるで姉弟みたいだな…そういえば、彼女たちは親戚同士だって言ってたっけな。
「ねぇねぇ、君、名前教えてー。」
…英二、いきなり何を聞いてるんだ…
「英二先輩、が女の子で可愛いからってナンパしちゃダメー。」
「えー、良いじゃん、別にー。」
さん、やっぱり女の子だったんだ。学ラン着てるからどうかとは思ったんだけど…でも女の子が学ラン着ててもいいのかな?
…それより、英二。そんなこといきなり聞くなんて…さんだって戸惑っているじゃないか。
でもさんは、優しい笑みを浮かべて、澄んだ声で言った。
「です。好きなように呼んで構いませんよ。」
「じゃぁ、ちゃんって呼ぶねー。」
…本当に不思議な子だな。あ、やばい。時間がないんだった。
「ほら、そろそろ移動しないと、授業が始まるぞ。」
「そうだね。」
「、。僕等も教室に戻ろうか。」
「そうね。」
「そうだなー。」
彼等は本当に仲が良いんだね。
「それじゃ、大石先輩、菊丸先輩。また部活で。」
「あぁ。」
「バイバーイ。」
さんは、小さく俺たちに向かってお辞儀をした。…礼儀正しいんだな。
英二を探すのに苦労したけど、さんたちと少し話ができたからまぁ、良かったとしよう。



…大石…分かんない…すっげぇ違和感がある気がするのは管理人だけですか…?
…ま、いいか…