入学した日から、何でだか分かんないけど気になった。
何となく懐かしい気がするんだけど。
日本の中学の授業ってつまんないのばっか。こんなに気候が良いと眠い。
俺は授業をまともに聞かずに寝てた。
「越前君、次移動だから起きた方が良いと思うよー。」
…気持ちよく寝てたら起こされた。確か…だっけ?といつも一緒にテニスコートの外にいる奴。
この前、部長らしき人の名前叫んでたけど。なーんか、あれ以来よく話しかけてくるんだよね。
思ったよりウザくないからあんま気にしてないけど。それにしても…眠い…
「越前君、遅刻してしまうよ?」
…何だか懐かしい声が聞こえて、半分寝てた頭が起きた。思わず声の主の顔を見てみたら、やっぱりだった。
…どっかで見た気がする…確か、かなり前に…親父と一緒にいたと思うんだけど…思い出せない…
「…あぁ、もうそんな時間?」
とりあえず、返事は返しておいた。返事って言えるかは分かんないけど。教科書と筆箱を持って、俺は3人と一緒に教室を出た。
俺の少し後ろをが歩いてた。
「越前君、制服に髪の毛付いてるよ。」
そう言われて、立ち止まったら返事する前にの手が伸びてきた。俺の顔の横をの手が掠める。
…あ、いいにおい…何か、懐かしい…それに、指も綺麗で、長い…お礼、言った方がいいの?
「サンキュ…。それから、リョーマでいいよ、呼び方。」
…何でだろ…普段の俺なら絶対にこんなこと言わないのに…。もまさか俺がこんなこと言うとは思わなかっただろうね。
案の定、驚いた顔してるし。でも、はすぐに優しい、穏やかな笑みを浮かべて…
「どういたしまして、リョーマ。僕の事も名前で呼んでいいよ。」
澄んだ声で俺に言った。名前で呼ばれると、もっと懐かしい感じがした。
…俺、と絶対に会った事ある…も同じこと考えたのか、凄く穏やかな顔してる。
…それがどこか嬉しく感じてる俺がいたんだ…表には出さないけどね。
音楽室に行くのに3年生の廊下を通る必要があった。でも、気がついたら、がいなくなってて…
「どうするの?チャイム鳴っちゃうわよ?」
の言うとおり、そろそろチャイムがなる時間だった。放っておけば良いのに、はの心配してるし。
に心配されてるにちょっとヤキモチを焼いてる俺がいた。
俺もまだまだだね。
でも時間、そろそろヤバいし。
「俺達、先に行っといた方がいいんじゃない?」
「そうよ。アイツが遅刻してもアイツが悪いんだから。私達まで巻き込まれる必要ないじゃない。」
の言うとおりなんだから、早く行けばいいのに。いくらなんでも、校内なんだから何とかなると思うんだけど?
…だいたい俺達も遅刻したら洒落にもならない…も観念したように声を出した。
「そうだね、行こうか…」
俺達はを探さないまま音楽室に向かった。もまだまだだね。


