今日は、本当に自分から病院に行った。もしかすると、初めてかもしれない。
でも、やっぱり病院は無意識のうちに怖いと感じているんだろう。
自分の病は"完治しない"と、宣告された場所だから・・・。
「・・・珍しいな、お前が自分から来るなんて。」
病院に行き、診察室に通されると、自分の主治医と向き合う形になった。いつもと同じ検診をした後、に対して主治医は問うた。
「・・・で、。何を思って自分から来たんだ?もう治らないからと、諦めたんじゃなかったのか?」
本来、ただの主治医と患者の関係ならば、主治医が患者に対してそんなことは言わないだろう。
患者にそんなことをいえるのは、その患者が親族であるからこそだった。
「・・・本気で治そうと、思っ、て・・・さ。あれだけ治療サボっておいて、言うのもどうかと思う、・・・けど。」
主治医は、の顔を見て話を聞いていた。今までにないの言葉に、少し考えるようにを見た。
「…本気で、治療をするんだな?」
「…うん。」
声は小さかったが、それでも聞こえるくらいはっきりとしていた。の言葉に、主治医は嬉しそうに口元に笑みを浮かべた。
「これでやっと、俺が医師になった目的を果たせるんだな?」
主治医は嬉しそうに言葉を発する。同時に、とても嬉しそうな表情を見せた。そして、優しい目でのことを見た。
・・・"兄"としての、表情だった。
「せっかく真幸が俺の病気治すために医師になってくれたのに・・・、ゴメン、な。」
兄らしい真幸の対応に、も嬉しくなって、口元に笑みを浮かべていた。にとって、家族は唯一の"でいられる場所"だったのだ。
このことはも知らないことだった。
「でも、真面目な話、お前の体はかなり弱ってる。これから完治させるのにはかなりかかる。覚悟はできてるんだろうな?」
急に真幸の目が真剣なものに変わる。兄としてではなく、医師としての目だった。
「どうせ最初から完治させずに死ぬつもりだったんだし、もう一度、テニスが本気でできるんだったら大丈夫だよ。」
「・・・お前、またテニス始めたのか?」
の思わない返答に、真幸は驚いて言葉を返した。
「・・・ただ趣味で打ち合うだけのつもりだったんだけど、強い人ら沢山見つけてさ。面白そうだから、俺もそれに混ざりたい。」
真幸は、が明らかに変化していることには最初から気づいていたが、まさかココまで意志が変わっているとは思わなかった。
今までは前向きな姿勢など、一度も見せなかったの言葉に、真幸は驚きながらも、嬉しさで胸はいっぱいだった。
「・・・まぁ、今日は薬を出すだけだ。ちゃんと飲むんだぞ。」
「分かってるよ。」
真幸は言葉とは反対に、口調はやさしかった。
診察は終わり、は診察室を出るために立ち上がった。出入り口の扉に手をかけると、真幸の声がに向かって発っせられた。
「頑張れよ、。」
真幸の言葉に、は口元に笑みを浮かべて振り返った。
「・・・ありがと、兄貴。」
が出て行くと、真幸も口元に笑みを浮かべて、カルテを仕舞い込んだ。



真幸(まさき)さんは、忍足ヒロインのお兄さん。・・・いきなりの登場になりました・・・、汗。