…乾…先輩でしたっけ?
 あそこまで細かく他人の情報を集められるなんて、凄いです。
 でも…テニスは頭でできるものじゃない…。…情報はあくまでプラスポイントでしかありませんよ…。
 …全ては肉体的な強さと精神的な強さがモノを言いますから…。


「ザ・ベスト・オブ・ワンセットマッチ 乾サービスプレイ!!」
 リョーマと乾先輩の試合が始まった。
 乾先輩のサーブは特に特徴がある訳じゃないけれど、フォームが綺麗だね。
「乾先輩すごいねー。何か越前君の動きを読んでるみたいー。」
 …みたいじゃなくて、本当に読んでるんだろうね、アレは…。
「海堂先輩の「スネイク」の方がスゴかったって!」
 …堀尾君、何か勘違いをしているんじゃないかな?基礎基本って言うものがどれだけ大切なのか…その考え方じゃ、強くはなれないよ?
「ゲームカウント1−0 乾リード!!」
 …データテニスってことですか…でもその頼れるデータがなくなったとき、先輩はどうするんだろうね。
 海堂先輩は1年間一緒だからデータも通用するでしょうけど…たったアレだけのリョーマの試合でデータを集めたつもりになるのは…まだ早いと思いますよ?
 …でも、いいかな。リョーマ、楽しそうだからね。
「青春学園に入って良かったよ」
 やる気満々の笑み…今までにないテニスだからね…倒し甲斐があるかな?
「色んなテニスを倒せるからね」
 さぁ、リョーマ見せて?僕に…君のテニスを…。
「最近やっと出来るようになったステップがあるんだけど…できれば温存しておきたかったね 全国大会まで!!」
 …リョーマ、どんな相手でも全力でしなきゃダメだって…それに、それはスプリットステップでしょう?
 全国に行けば、それが出来る選手はいくらでもいると思うよ?
 …日本の中学生のトップレベルがどれ程かは知らないけれど…。

 …あれ?あの人は確か…月間プロテニスの…記者…リョーマの試合に釘付けになってる…僕のこと…気づいてはいないよね?
 …お願いだから…気づかないで…。
「あ、越前君のスピードが上がり始めたよー。」
 の声でハッと我に返って、コートの中を見ると、乾先輩がミスをした。
「予想しても返せない球を打つ奴がいるなんてね」
 …当たり前だと思いますけど…だって、データはあくまで参考でしかないから…。
「来る場所が分かってても取れない球…もう一つあるよ」
 ツイストサーブ…だね。あれは、返せないことはないけれど…見たことがない人にはちょっと返しにくいかな?
 顔に向かって跳ね上がってくるしね。
「ツ ツイストサーブ!?」
 …記者の人…どうしてそこまで驚いているんだろう…いくら中学生でも出来る人はいくらでもいるのに…それとも…リョーマが…南次郎さんと重なって見える…とかかな?
 記者であるなら…当然、南次郎さんのことも知っているだろうしね。
 …乾先輩もツイストサーブの攻略法を考えてるみたい…でも先輩、理屈などではツイストサーブは敗れませんよ?
「データでくるならその上をいくまでだね」
 その通りだよ、リョーマ。これでまた、リョーマは成長した。

「ゲームセット ウォンバイ越前7−5!!」
 リョーマは乾先輩との試合を終えて、コートから出てきた。
「リョーマ、お疲れ様。」
「……サンキュ」
 せっかくタオル差し出してあげてるんだから、もうちょっと素直に受け取ってくれてもいいのね。
 生意気なところも、リョーマらしくていいけれど。リョーマと話していたから、気づかなかった。
 …いや、リョーマのことを見ていると思ったから気づかなかったんだ…。
 月間プロテニスの記者さんの視線が…僕にも向いていたことに…。

 …僕はテニスを止めたんだ…もう僕が、表で試合をすることはないと思う…。
 …今はただ、リョーマの成長を見ていたんだ…。














 …やっと2巻が終わった…な、長かった…
 俺がダラダラと長く書いてただけなんだけどねー…でも、なんかやっとって感じ…これからはちょっと…は…面白くなる…かもしれない…(滝汗)