「12月議会」一般質問全文
  【07年12月議会一般質問】
                         日本共産党市議団 魚谷さとる
1.国の政治による高齢者をはじめとした負担増について
まず最初に、国の政治による高齢者をはじめとした負担増についてお伺いします。
 @国による増税、介護保険、医療費など負担増を、市として
  どのように受け止めているか
 第1は、国による増税、介護保険、医療費など負担増を、市としてどのように受け止めているかについてです。
 小泉内閣、安倍内閣が行ってきた「構造改革」路線のもとで、増税、介護保険料の引き上げ、医療費など、高齢者をはじめ現役世代にもこれまで大きな負担が押しつけられ、今後も押しつけられようとしています。
 税金では、、65歳以上の高齢者の老年者非課税措置の段階的廃止、公的年金控除の140万円から120万円への引き下げ、恒久的減税として行っていた所得税20%、住民税15%の定率減税を廃止しました。そのため、現役世代はもちろんのこと年金暮らしの高齢者はこれらの負担増の直撃を受けています。これまで住民税を払わなくてもよかった人が払うようになる。払っていた人も税額が何倍にもなり、しかも2年連続で引き上げられています。これらの結果、市民の間に不安やとまどいが広がり、納税通知書が届いたのちの5日間で、窓口や電話での問い合わせや苦情が昨年は936件、今年も1393件寄せられたようですが、そのことを物語っています。
高齢者が納める介護保険料も、新たに住民税を納めるようになった場合、所得段階が2段階上がる人もあり、昨年から3年連続で引き上げられ3年後には尾道地区では1.8倍に、瀬戸田地区では2.2倍になる人もいます。
 医療費では、来年4月から70歳から74歳までの高齢者は、現在の1割負担から倍の2割負担に、75歳以上の後期高齢者は新しい医療保険制度が始まり、広島県では年金が201万円の人では、保険料の年額66,600円になることが先日発表されました。この保険料は、年金から天引きされることになっています。また、現在息子さんなどの扶養に入っていて、保険料を納めていない高齢者も、新たに保険料を納めなければならなくなります。
 そこでお伺いします。2年前までは住民税がかからなかった年金が265万円の夫婦とも高齢者の世帯で考えた場合、所得税、住民税、介護保険料、国民健康保険料の合計で2年前と現在では負担がどのぐらい増えたと考えられますか。また、先に挙げたように大変な負担増が、特に高齢者をはじめ国民・市民に求められ、今後も求められようとしていますが、市長はどのように受け止められていますか。国が行っていることとは言え、今後の市政運営に関わってきますのでお尋ねします。
 
A要介護認定者に対し「障がい者控除」の申請をしやすいものに
第2は、高齢者の負担を少しでも和らげるため、要介護認定者に対し「障がい者控除」の申請をしやすくすることについてです。
 「障がい者控除」というのは、一定の障がいがある人または障がいのある人を扶養している人を対象に、所得税は27万円、住民税では26万円を所得から控除して、税金を安くする制度です。対象になるのは、3級〜6級の障害者手帳を持っている人か同程度の障がいがあると市が認めた人です。
 介護保険制度が始まってからは、介護認定との関係が国会でも問題になり、平成16年に厚生労働省から通達が、県からもこれに関連した文書が出されています。その趣旨は、介護認定と障がいの認定とは目的が異なっているが、市が国の基準に基づいて取り扱いを決めて対応することや認定の際介護認定の資料を活用しても差し支えないというものです。
 障がいの程度の認定について県内の状況を調べてみますと、広島市、福山市、東広島市などでは、先に紹介した国や県の通達に基づいてすでに要綱を作って認定に当たっています。その際、要介護認定者については、これまで必要とされていた医師の診断書は必要でなく、「障がい者控除」認定の申請時に、介護認定の情報を使うことを了承するかたちになっています。
 私はこの問題を先月の決算委員会で取り上げましたが、本会議の場で改めてお尋ねします。その時は要綱はできていないということでしたが、現在要綱はできているのでしょうか。要綱では、要介護認定者が申請する場合は診断書の提出を求めず、介護認定の情報を使うという考え方かどう、かお答え下さい。

B「後期高齢者医療保険制度」の説明会を小学校区ごとに行うべきでは
第3は、来年4月から実施予定の「後期高齢者医療保険制度」の説明会を小学校区ごとに行うべきではないかということについてです。
 「後期高齢者医療保険制度」について私どもは「9月議会」でも取り上げ、中止すべきだとの立場で問題点を指摘しました。保険料を負担していなかった人をはじめ高齢者に新たな負担を求めることや滞納した場合には保険証が取り上げられること、「包括払い」という治療費の上限を決め治療が行われることなどです。今月になって各都道府県での保険料の平均額が新聞で報道されましたが、それまでほとんどこの制度に関する情報はありませんでした。市は11月の広報にこの制度についての情報を初めて載せました。
 この制度は、高齢者の健康と命に直接関わるものであることや、これまでの医療保険とは違う新しい制度である点、またこの制度の対象者が75歳以上の高齢者であることなどを考慮すれば、広報やチラシなどでの周知に留まらず、相当丁寧な対応が必要ではないでしょうか。このことについて市はどのような認識をもっておられますか。
 2000年から始まった介護保険制度では、新しい制度であったことから小学校区単位で説明会を実施した経験をもっています。来年から実施予定の「後期高齢者医療保険制度」についても、説明会を小学校区ごとに行うべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

2.来年度の予算編成に関わって
 次に、来年度予算編成に関わって2点おたずねします。これ以後の質問にも予算を伴うものがありますので、予算編成に当たっては十分考慮していただきますよう申し添えておきます。
@市民のおかれている状況から基本政策のひとつである「日々の暮らしの安心づくり」   に重点を置いたものに
 第1は、予算編成に当たっては、市民のおかれている状況から、市長の基本政策のひとつである「日々の暮らしの安心づくり」に重点を置いたものにするすべきだという点です。
 これまで自民党・公明党の連立政権のもとで行われてきた「構造改革」路線は大変な痛みを国民に押しつけてきました。今年の夏の参議院選挙では、このようなやり方に国民の側から厳しい審判が下され、与党は参議院で過半数を失い、惨敗しました。国民・市民のおかれている状況については繰り返しませんが、最初に述べたような状況です。
基礎自治体である尾道市は住民のくらしに直結しています。また、自治体の長である平谷市長は日々、市民の生活を目の当たりにされていると思います。
 来年度の「予算編成方針」では、「所信表明で述べた「都市力づくり」「日々の暮らしの安心づくり」「感動の芸術文化都市づくり」「尾道型市政づくり」「人づくり」の5つを基本政策として行うこととする。」と述べ、「日々の暮らしの安心づくり」は5つの柱のひとつとして掲げられております。また、国に対して「疲弊している地方に対して適正な財源配分を行い、国民生活の安定をまず考えた舵取りをお願いしたいところである」とも述べ、国民生活が安定していないとの認識であることもうかがえます。続いて、「依然として業種間格差や企業間格差があり、地域経済や中小企業が全体として実感できる本格的な景気の回復が望まれるところである」と市内の中小の業者が、景気回復の実感が感じられないような状況であるとの認識も述べています。
 そうであればなおさら、「日々の暮らしの安心づくり」が求められ、この点に重点を置いた予算編成にする必要があると思いますが、いかがでしょうか。また、「日々の暮らしの安心づくり」について来年度どのような具体策をお持ちなのかお聞かせ下さい。

Aしまなみ海道の橋の通行料負担軽減のためにまず市が第一歩を
2番目は、しまなみ海道の橋の通行料負担軽減のために、まず市が第一歩を踏み出すことについてです。
 この問題は、私どもが繰り返し主張してきたことですもありますし、今年2月の議会で全会一致で採択された「市域内のしまなみ海道の通行料金の負担軽減を求める請願」の中でも、「市の独自策として、市民に対する通行料の補助制度を創設すること」を求めております。
 先月の19日、20日の2日間、私も所属している「尾道松江線建設促進特別委員会」が東京、愛知に視察に行きました。1日目に地元選出の亀井静香、佐藤公治両国会議員、道路局長などと昼食をしながら懇談する機会がありました。懇談の中でしまなみ海道の通行料の話になり、同じ市域でありながら因島や瀬戸田に住む人にとって通行料が大きな負担になっていることが話題になりました。この問題について亀井代議士は、「負担を軽減するためには、尾道市が先んじて何かやらないと話が前に進まない」と述べました。また、道路局長は「平成25年に尾道大橋の通行料が無料になるが、その際は負担軽減のために、国としても何らかのアクションを起こさないといけない」との考えも示されました。
 市はこれまで、全国市長会を通じ、また機会あるごとに、国に対し負担軽減のための対策を講じるよう求め、それなりの努力をされてきたことは承知しています。また、ETCの設置に対する助成制度を実施することで、一定の負担軽減策を行っています。しかし、島嶼部に住む住民の通行料に対する負担感は大きいものがあります。
 住民の代表である議会が全会一致で採択した請願の趣旨をしっかり受け止め、亀井代議士や道路局長の発言などを考えた場合、しまなみ海道の通行料の負担を軽減するためには、来年度まず市が第一歩を踏み出し、そのことを呼び水にして県や国に働きかけてこそ説得力のあるものになるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

3.子育て支援について
 次に子育て支援について提案も含め4点伺います。
@子育て支援を市はどのように位置づけているか
 第1は、子育て支援を市はどのように位置づけているかについてです。
 尾道市は高齢化率も近隣の市に比べて高く、高齢化が進んでいます。一方で少子化が社会問題になっており、一人の女性が、一生の間に生む子どもの数である合計特殊出生率は低下し続け、尾道市も同様の傾向にあります。
 この傾向に歯止めをかける有効な手だてのひとつが、子育てしやすい環境を作る子育て支援策であることは言うまでもありません。子どもの医療費助成制度の拡充を求める請願署名に取り組んでいた若いお母さんが、次のように言っていました。「子育て支援策が充実していれば、子育て中の若い世帯は定着するし、他の地域に住む人もチャンスがあれば尾道市に移り住むようになる。そうすれば人口も増え、税金も多く入るようになる。そのことを市はぜひ理解してほしい」と。私も全く同感です。
 平谷市長は教育畑出身で、子どもと接してきた思いから、よく「未来ある子どもたちのために・・」と言われます。尾道市の子育て支援の現状をどのように認識されていますか。また、子育て支援を市はどのように位置づけておられますか、お答え下さい。
 
A近隣の市に比べて遅れている放課後児童クラブの実施校を増やすべきでは
  2番目にお聞きしますのは、近隣の市に比べて遅れている放課後児童クラブの実施校を増やすことについてです。
 私はこの問題を、「決算特別委員会」でも取り上げましたが、その際近隣の市の状況を調べて紹介しました。福山市では78小学校区のうち75小学校区で実施され、対象である1年生から3年生までの児童数約13,500名の内 3、600名が利用し利用率は26.8%でした。三原市では30小学校区のうち15小学校区で実施され、対象児童数2521名の内499名が利用し、利用率は19.8%でした。尾道市の現状は、市域全体では三原市並みですが、旧尾道市に限っていえば18小学校区のうち8小学校区でしか実施されておらず、利用率も対象児童数4、978名の内409名で8.2%に留まっています。全学区で実施されている旧因島市や近隣の福山市、三原市と比べても大きく遅れているのが現状です。
 実施場所について市は、空き教室を利用していたこれまでのやり方から一歩踏み出し、昨年4月から要望の最も強かった高須地域において、民間に委託しその業者が実施場所も確保して実施するようになりました。
 このような努力を評価をしつつも、近隣の市に比べて遅れている放課後児童クラブの実施校を増やすべきだとと思いますがいかがでしょうか。また、今後は実施校を増やすための年次計画も必要かと思いますが、いかがでしょうか。

B子どもの医療費助成制度を通院も小学校卒業まで広げては
3番目は、子どもの医療費助成制度の充実についてです。
 尾道市は、昨年18、677筆に及ぶ「子どもの医療費助成制度の拡充を求める請願署名」が議会で全会一致で採択されたことを受け、それまで対象が通院、入院とも小学校入学前まであったものを、今年10月から入院については小学校卒業まで拡大しました。この点は大いに評価しているところです。
 しかし、請願署名では「児童(小学校卒業まで)の医療費助成制度を実施すること」を求めており、その主旨は入院も通院も三原市のように小学校卒業まで対象を拡大することです。
 尾道でも、子どもの医療費助成制度を入院だけでなく通院も小学校卒業まで広げてはいかがでしょうか。子どもの人数に違いがありますが、参考までに三原市に問い合わせますと、今年4月から9月までの半年間での費用は約5883万円だとのことでした。   
 この制度に関して国との関係で述べておきます。先の「9月議会」では、「子どもの医療費助成自治体への国庫補助金の減額措置の廃止を求める意見書」が満場一致で採択されました。この意見書はわが会派の提案したもので、趣旨はこの制度を含む福祉医療を行っている自治体に対し国は、国民健康保険会計への補助金を減らす措置をとっていますが、それを止めるよう求めるものです。この意見書はすでに国の関係機関に送付されています。担当課の試算では、昨年度で6111万円も減らされています。
 このような自民・公明の連立政権のやり方は、地方自治を破壊し地方分権の流れに反するものだと思いますが、市長はどのように受け止められていますか。また今後、全国市長会など関係機関を通じ、国に対しこのようなやり方を改めるよう求めるべきだと思いますが。    

C待機者ゼロを支えている家庭保育員への支援を強化すべきでは
第4は、待機者ゼロを支えている家庭保育員への支援を強化すべきではないかという点です。
 これまで市は、子どもの医療費助成制度など子育て支援が他市と比べて遅れているとの市民団体や私どもの主張に対し、「保育所の待機者はゼロで総合的に見て、遅れはない」との主張を行ってきました。しかし、今年の「2月定例議会」でわが会派の寺本真一議員が明らかにしたように、近隣の自治体が保育園児一人あたりで補助金を支給しているのに、尾道市では家庭保育員1人が6人の幼児を見るとして支給され、全体では無認可の保育所の幼児が746名いるのに、180名分の補助金しか支給されず、幼児全体の76%、566名には全く補助金が出されておらず、待機者ゼロの状況がもっぱら無認可の保育園の努力に支えられている実態が明らかになりました。
 子育て支援では唯一と言っていいほど尾道市が進んでいるとされた保育所の待機者ゼロが、その内容においてはお寒い状況であるとの認識をお持ちかどうか、決算委員会の議論をふまえ改めてお答え下さい。また、家庭保育員制度への支援では、これまでのやり方を改め、幼児一人あたりに補助金を支給する考えであることが示されましたが、実質的に支援が強化されるかどうか、もっと言えば補助金が増額されるかどうかがカギになると思いますがその点はいかがでしょうか。

2.景観・観光行政について
 次に、景観を守ることと観光行政について4点お伺いします。
@景観条例制定は景観を守る出発点では
 第1は、景観条例制定を出発点に、景観を守るための今後の取り組みが必要ではないかという点についてです。
 昨年、尾道市は景観条例を制定しました。景観を守るとの観点から、行政や関係団体、景観に関心を持っている市民などからなる「景観計画策定委員会」で7回に渡って検討会を行い、景観条例としてまとめ上げられました。言うまでもなくこの景観条例は今後建物を建設する場合の高さ制限、建築物などの色の制限、広告物に対する制限を設けて少なくとも今ある尾道三山に囲まれた地域の景観を守ろうとするもので、この条例が制定されたからと言って直ちに景観がよくなるというものではありません。
 条例の制定まで市は、「景観夜の学校」を3回も開いて景観に対する市民意識の向上を図る取り組みをしたり、制限を受ける地域では何回か市民の意見を聞く場を設けるなど、「景観」を守るため、行政として目に見える形で活動してきたのではないかと思います。しかし、条例制定後は、行政としての目に見える形での活動がなくなっているのではとの印象を持つのは私だけでしょうか。
 景観条例制定は景観を守るための出発点だと思いますが、市はどのように考えていますか。また、事務的な業務以外に景観を守るためにどのような活動を展開してきたかをお答え下さい。

A景観に対する市民意識の向上のための取り組みが必要では
 第2は、市として景観に対する市民意識の向上のための取り組みが必要ではないかという点についてです。
 先にも紹介しましたが、市民の景観に対する意識を向上させるために「景観夜の学校」がしまなみ交流館で3回開催され、私はその内の2回に参加しました。参加者数を担当課で聞いたところ、1回目100人、2回目80人、3回目80人でした。参加者の顔ぶれを見ると、市の職員が結構参加していたように思います。また、私ども議員にも案内がありましたが、先月4日計画していた「おのみち景観ウォッチング」が、参加者が少ないために中止されるということもありました。
 景観を守るために市民グル−プが行った、駅東側の高層マンション建設に反対する署名運動では、約2万3千筆と多くの署名が市民から寄せられました。しかし、先に述べた状況などから私は、率直に言って市民の景観に関する意識は必ずしも高いとは言えないと感じています。
 市は、景観に対する市民意識についてどのように受け止められていますか。今後景観に対する市民の協力を得ようとすれば、市民意識の向上のための取り組みが必要だと思いますが、いかがでしょか。また、今後具体的な計画があればお示し下さい。

B景観重点地域である千光寺南斜面の空き家撤去などに対する対策・方針を持つべきでは
 3番目は、景観重点地域である千光寺南斜面の空き屋撤去などに対する対策・方針を持つべきではないかということについてです。
ご承知のように、千光寺南斜面は景観重点地域のいわば中核をなす地域です。しかし、これまで本会議の場でも指摘されてきましたように、空き家が多く、その中には廃屋となりつつあるものもあります。千光寺道から天寧寺の海雲塔が眼下に見えるすぐ左には廃屋同然の家があるといった具合です。空き家は屋根が壊れればまもなく廃屋になります。
 住民からすれば、廃屋を撤去するための費用は平地に比べて数倍もかかる上に、担当課に聞きますと撤去した場合には土地にかかる固定資産税が4倍から6倍のもなるそうです。それでも撤去する所有者もいますが、多くの所有者が撤去したいと思っても2重の困難があると言えます。
 尾道の景観の中核をなす千光寺南斜面には、どれぐらい空き家があり、その内廃屋がどれくらいありますか。また、景観を守る上で空き家、廃屋についてどのように考えていますか。空き家、廃屋に対する対策や方針、例えば廃屋撤去に対する助成制度や固定資産税の減額制度などを持つべきだと思いますがいかがでしょうか。
 
Cこれからの観光政策・戦略を検討する恒常的な協議機関を作っては
4番目は、これからの観光政策・戦略を検討する恒常的な協議機関を作ってはどうかという提案です。
尾道市は観光都市として全国に知られ、統計上の総観光客数は一昨年は614万人、昨年は655万人となっています。その中心となっている尾道三山に囲まれた市街地は、海、山、町並みに加え、遠く見渡せば瀬戸内の島々という景観に恵まれているだけでなく、平安時代以来はぐくまれた歴史や数多くの文人墨客が訪れて築き上げてきた文化。そして、映画の舞台としても全国にその名が知れ渡っています。合併によって周辺部の魅力も加わり、全体としてより魅力のあるものになっています。
この魅力をより引き出し、尾道を訪れる人に「きてよかったなー」と満足してもらい、また尾道を訪れてもらう。そのために、これからの観光政策・戦略を検討する市民も巻き込んだ恒常的な協議機関を作ってはいかがでしょうか。
 その際、行政でありがちな、関係団体に委員を割り当てするというようなやり方でなく、市民から委員を募集する際に行われているように、自分の考えを作文にまとめてもらい、やる気のある人に集まってもらう必要があると思いますが、いかがでしょうか。
 
5.後継者を作ることなどをはじめとした水産業の振興策について
 次に、後継者を作ることなどをはじめとした水産業の振興策について2点お伺いします。
@市の水産業の実態にあった施策の展開を
第1は、市の水産業の実態にあった施策を展開する必要があることについてです。
 この2年間の漁獲高の推移を見ますと、魚ではかれいが133tから99tへ、しゃこが32tから22tへ、アサリが72tから44tに減っています。漁業従事者数の推移では、市内の漁業組合の正組合員が3年間で894名から861名と33名減っています。平均年齢は組合によってばらつきがありますがおおむね65歳です。
 水産振興のために行っている事業では、漁業構造改善事業として毎年「ちく磯」設置が行われ、約800万円が使われています。旧因島市との合併前は、尾道市、因島市、三原市が1年交替で約3000万円かけて「波形魚礁」の設置事業を行っていました。広島県が行っている吉和漁港の改修、施設建設では、毎年2千万円近い予算が県工事の負担金として支出され、これが昭和45年から今日まで37年間にもわたって行われ、これまでに約7億9千万円が使われています。中小漁業設備資金融資預託金は昨年は1000万円が予算化され、400万円の利用がありましたが、平成15,16年は利用実績がなく、漁業従事者の高齢化と漁業後継者が生まれていないことから、充分活用される状況にはありません。魚そのものを増やす放流事業は、ほぼ毎年3百数十万円しかつかわれていません。このように、私が議員になって9年目になりますが、予算額には違いがあるものの、水産業振興の予算構成や事業展開はほとんど変わっていません。
 水産業の振興は、当事者である漁業者がまず考えなければならないことであると、私は承知しています。しかし、先にあげた状況を含め、市として水産業の実態や課題をしっかり認識し、イニシャチブを発揮して実態にあった施策を展開する必要があると考えますがいかがでしょうか。

A数値目標を持つなど後継者支援の抜本的強化を
第2は、数値目標を持つなど後継者支援を抜本的に強めることについてです。
 先月NHKテレビで、漁業で独り立ちを始めた吉和の30代の青年を取材していました。これからシ−ズンになる「でべら」の漁をしているもので、最初のアミはわずか1匹でした。私は大変頼もしく思えると共に、今後の活躍を祈らずにはいられません。
 昨年度の尾道市の後継者支援に使われた額は18万円、今年度の予算も18万円で、ここ数年このぐらいの額です。決算委員会で昨年度後継者がどれほど増えているかを聞きましたが、「ゼロ」との答えでした。
 私は先月、後継者づくりで一定の成果を上げている山口県の下松市と防府市の状況を調べるために視察に行きました。山口県では平成10年から「ニュ−フィッシャ−確保育成推進事業」を展開し、両市を含め成果を上げていました。この事業は、3泊4日程度で漁業の実際を経験する短期研修とこれならやれると漁師になる決意をした人に2年間月15万円の研修費を支給する長期研修からなっています。この事業にかかる費用は、県と市が半額ずつ負担しています。事業を展開してからの10年間で短期研修は、地元出身者をはじめ東京、神奈川、広島、福岡など10数県から127名が受けています。また、長期研修は46名が受け、現在でも10名が研修中で22名が実際に漁師として定着しているとのことです。
 これらも参考にして、市として独自に後継者づくりの数値目標を持ち、具体的に支援する制度を作るなど、後継者支援を抜本的に強める必要があると思いますが、いかがでしょうか。残念ながら、広島県ではこのような後継者支援策を実施していませんが、県に対し山口県をはじめ島根県、鳥取県などでも行っているこのような後継者支援策をぜひ作るよう求めてはいかがでしょうか。

6.教育行政について
次に、教育行政について2点おたずねします。
@「教育改革」が進められる一方で全国平均以上の不登校、県内でも比率の高い休職者の状況をどう受け止めているか
第1は、「教育改革」が進められる一方で全国平均以上の不登校、県内でも比率の高い休職者の状況をどう受け止めているかについてです。
 広島県の教育は数年前まで、「同和教育基底論」の立場で教育が行われてきました。その後、文部科学省から広島県の教育に混乱があるということで「是正指導」が行われて今日に至っています。このような流れの中で尾道市では、5年前に「教育改革」として3年間「プラン21」を行い、引き続いて「さくらプラン」を進め今年で6年目になります。
 「教育改革」で行われてきたことは、「切磋琢磨」ということで学校間、また子どもたちの間に競争が持ち込まれてきました。また、教職員に対しては管理統制が強められ、合わせて過度とも言える報告や文書の作成が求められてきました。その結果、先生方が本来主役であるべき子どもたち一人一人に目が向かない、また、向けるゆとりのない大変忙しい状況を作り出しています。こうした状況は、保護者の中からも学校の近所に住む住民からも「職員室に遅くまで明かりがついているが、体は大丈夫なのだろうか」と心配する声があがっています。
 「教育改革」が進められる一方で、先の議会でも取り上げられましたが、子どもの不登校、教職員の休職者が全国平均以上になっている状況があります。平成18年の中学生の不登校の生徒の割合が尾道市では4.47%、県が3.01%、全国が2.86%ですから、全国平均より1.61ポイントも高くなっています。小学生も同様の傾向です。また、平成17年の休職中の教職員の割合も尾道市では2.99%ですが、全国は1.21%と、これも全国平均より1.78ポイント高くなっています。このような子どもたちの不登校や教職員の休職者の状況は、これまで教育委員会が上から進めてきた「プラン21」や「さくらプラン」などの「教育改革」と無関係だとは思われません。
 市教育委員会はこの点についてどのように考えておられますか。もし関連がないとすれば、どのような要因で不登校や休職者が多いと分析されていますか。また、県内で尾道市のように年限を決め予算も使って「教育改革」を進めているところがほかにあるでしょうか。

A図書の充実や危険校舎の改修などの教育条件の整備、義務教育における父母負担の軽減にたいする認識は
 第2は、図書の充実や危険校舎の改修などの教育条件の整備、義務教育における父母負担の軽減にたいする認識についてです。
 市教育委員会は「教育改革」には熱心ですが、本来第一議的にしなければならない図書の充実や危険校舎の改修などの教育条件の整備、義務教育における父母負担の解消には不熱心だと言わなければなりません。
 最近の例で言えば、向島中央小学校の校舎の危険箇所の改修にはほとんどと言っていいほど手がつけられていません。他会派の議員が指摘しましたが、瀬戸田町にある南小学校の体育館の屋根は雨漏の修理で万国旗のようになっており、建物自体も老朽化して危険な状況にあるにもかかわらず、有効な手が打てていません。
 さらに、義務教育における父母負担では、これまでもたびたび取り上げ指摘もしてきましたが、本来行政が負担しなければならないものが、PTA会費から支出されている状況があります。市内のある中学校のPTA会費の決算を見ると収入が約591万円ですが、そのうち約293万円が諸費会計として支出され、その中には用紙費、図書費、実験費などがあります。同様にある小学校の決算では収入約494万円に対し、教育奨励費という項目で183万円が支出され、その内容は学習奨励費、備品、消耗品費などとなっています。これらの支出の中には、当然行政が行わなければならないものがあると考えます。
 市が支出している印刷費や教材費などの需用費について調べてみると、父母負担が少ない三原市では小学生5、005名に対し需用費は2億102万円で一人あたり40,160円、中学校では生徒2、450名に対し需用費は9170万円で一人あたり37,428円です。しかし尾道市では小学生7,525名に対し需用費は2億3009万円で一人あたり30,577円、中学校では生徒3,779名に対し需用費は1億2420万円で一人あたり32,876円となり、三原市と比べても低いのが現状です。小・中学校とも義務教育ですから、全体として使われる費用に大きな差はないと思われます。
 一方でこれまで「教育改革」ということで毎年数千万円がつかわれ、これまでに使われた額は「プラン21」の3年間で約1億円、「さくらプラン」の3年間で今年度を含め1億8323万円、合計で2億8323万円が使われています。
教育委員会は行政の仕事として、教育条件の整備が第一議的な仕事だとの認識をお持ちかどうか、お答え下さい。先に指摘した図書の充実や危険校舎の改修などの教育条件の整備、義務教育における父母負担の軽減についてどのように進めて行かれるおつもりですか。また、今後改善すべき具体策があればお答え下さい。