ゆずりは -1-   

 私は、アンジェリナ・マスタング。
 もうすぐ誕生日を迎えると、14歳。
 今は、セントラル市内の私立学校の中等部に通っている。

 学校は大好き。
 友達もたくさんいるし、勉強は…ちょっと苦手な科目もあるけれど、錬金術以外のことを学ぶことが出来るから。
 
 でも、1番大好きなのは。
 この世の中で、1番好きなのは。

 今は、私の家族。
 この世界の中で、何ものにも代えられない、大切な存在。

 そんな大切な、私の家族。
 
 父は、ロイ・マスタング。
 一応この国の大総統という、トップの地位に就いている。
 私が生まれる前、30代の若さでその地位に就いて以来、ずっとこの国を率いている、とても有能な大総統。
 ………らしい。
 『らしい』というのは、世間の評価を聞いたからで。
 家でのお父さんの姿を見たら、とてもそんな立派な人には見えない。
 私とジェムを可愛がってくれて。
 そして、お母さんにべた惚れしている、普通の、どこにでもいる『お父さん』だから。
 …そりゃ、ちょっとは、かっこいいとは思うけど。

 あ、それから、母は、エドワード・マスタング。
 旧姓は『エルリック』で、国家錬金術師の地位に就いていた、非常に優秀な錬金術師。
 その腕前は、結婚後国家錬金術師の地位を返上した今も劣ることはなく、私とジェムの、錬金術の師匠になってくれている。
 錬金術の師匠の時は、とても厳しいけれど、それ以外はお父さんと同様に、とても優しい。
 優しくて、すごく綺麗。
 私とジェムを、10代で産んでるから、今はまだ30代なんだけど、それを言わなければ、十分20代でも通るくらい綺麗。
 だから、私と一緒にいても、親子ではなくて姉妹に間違われることもしょっちゅう。
 そんなお母さんを、お父さんは大好きで。
 お母さんも、口ではいろいろ言いながらも、結局それは照れ隠しで。
 お父さんのことを今もって大好きなんだと、端から見ていて良く分かる。
 
 そして。
 私の双子の弟、ジェレマイア・マスタング。
 双子で生まれてきた、私達。
 だけど二卵性だからか、容姿はまるで似ていない。
 似ているのは、お父さん譲りの黒髪と、黒い瞳だけ。
 私が、お母さんそっくりなのに対して、ジェレマイア……ジェムは、お父さんそっくり。
 
 でもね。
 性格は…まるで逆、だと思う。
 私達の周りにいる、ヒューズさんや、リザさん達も、それは同意見だった。
 ……私自身も、そう思う。
 だって、ジェムってお母さんと行動パターンがそっくりだもの。
 口は悪いけど、その実、情が厚くてとても優しい正義感の塊。
 その点私は……ちょっとひねくれてるかな?そんなところが、お父さんそっくりかも…。
 
 でも、そんな自分が嫌いなわけじゃない。
 だって私は、大好きなお父さんとお母さんから、いろんなものを受け継いで、生まれてきたんだもの。
 それが、私とジェムだもの。
 嫌いになれる筈がない。

 大好きな。
 大好きな、家族。
 
 年頃の女の子には目の毒すぎるくらい、熱々の両親だけど。
 でも、大好き。
 同じ年の筈なのに、まだ何だか子供っぽい弟だけど。
 でも、大好き。

 だからもう暫くは、この大好きな4人家族で暮らしていくのだと。
 そう思っていた。


 ……この日までは。

 久しぶりに、4人揃って一緒に食事に行こうと。
 珍しく、早く帰宅してきたお父さんが言い出して。
 近所にある、行きつけのレストランで。
 いつも案内される個室で。
 何だか、やけに嬉しそうな雰囲気のお父さんと。
 何となく、恥ずかしそうに俯いているお母さん。
 そして、私とジェムの、いつものメンバーでテーブルを囲んだ時までは、そう思っていた。

「…父さん、何だか今日は、とても嬉しそうだね。いいことでもあったの?」
 ジェムも、お父さんの雰囲気に気づいて、そう尋ねて。
 お父さんが、ニコニコと、笑顔を作ったままで、口を開くまでは。
 
 ここにいる、4人家族で暮らしていくのだと。

 だけど。

「ああ、とても嬉しいことだよ。多分、ジェムとアンジェも喜ぶと思う」
「へえ……何?教えてよ、父さん?」

 ジェムの言葉を聞いて、お父さんはそっと隣に座っているお母さんに微笑みかけて。
 お母さんはほんの少し頬を赤くしながらも、こくりと頷いて。
 それを確認してから、私とジェムの方に顔を向けて、お父さんは教えてくれた。

 嬉しそうにしている、その理由を。


「……来年の初め頃に、もう1人、家族が増えるんだ」


 お父さんの、その言葉で分かった。
 お母さんも恥ずかしそうだけど、とても幸せそうな訳が。

 4人揃って、ここに来た理由が。
 ううん、もう4人じゃないんだ。
 ここには、5人、いるんだ。

 お母さんのお腹の中に。
 5人目となる、新しい命が。
 そのお祝いをするために、ここに来たんだ。








 この話は、オフで発行した『ROLL』の続編です。双子ちゃんも大きくなりました〜。
 さてさて、エドが第3子御懐妊となったところから、この話は始まります。…これは、余り長くはならない…かなあ?
 一応、用心のために『?』をつけておきます。
 これからぼちぼち更新していきますので、最後までお付き合いくださったら嬉しいです。