Schlussatz side story -3- calmanndo
抱き締めていた身体が、純白の光に包まれて。
次第に軽くなって……ロイの腕の中からいなくなった。
代わりに現れたのは、光の球体。
鮮やかな光を放つ『それ』が、エドワードだとすぐに分かった。
ロイは、近づいてくる球体に手を差し伸べ、抱き締める。
「――――私も……一緒に連れて行ってくれ…」
そう、腕の中の光の球に囁き、一層強く抱き締めた。
その直後のことだった。
ロイの腕の中から、鮮やかな光が一瞬にして消えた。
続いて、どさっ…と、しっかりとした重みが腕に加わる。
その弾みで、思わずロイは、地面に座り込んでしまった。
「え………!」
座り込み、腕の中の重みの存在を見て、ロイの目は驚愕に見開かれた。
「エド………?」
光の球体となって消えた筈のエドワードが、再びロイの腕の中にいたのだ。
「う……ん……」
瞼を閉じていたエドワードは、くぐもった声を唇から漏らして、ゆるゆると瞳を開く。
「エド……」
「……ロ…イ…?」
黄金色の瞳が、ロイを見つめていた。
「オレ……どうして…?」
事態を把握できていないエドワードは、自分の体をまじまじと見て呟く。
「…オレ、どうして戻らなかったんだ?」
するべきことを終えた今は、約束通り『あちら』の世界へと帰る筈だった。
そう、覚悟していた。
それなのに、まだ、この世界に留まっている。
「……それは、私も聞きたいことだよ、エド…」
「そ、そうだな…」
慌てて答え、懸命に思い出そうとしていた。
「確か……一度あの扉の前には行ったんだ。そしたらアイツがいて……」
あっさり言い切った。
『おまえは、戻らなくていい』
と。
「……オレ、びっくりして理由を聞いたら、『心残りのある奴は、戻したくないんだ』って言ってたな。何でも、本人と、残された者達双方に心残りがあったら、『あちら』の世界にひずみが生じるから…って」
「歪みが……?」
「そう。役目を全うすることで満足し、未練を残すことなく戻ってきた人だけ受け入れないと、別の歪みが起きてしまうんだって、アイツは言ってた…」
「だから……君は帰されたと…?」
「アイツの言葉だけだと、そうなるかな…。『心残りがなくなるまで、戻ってくるな』って宣告されたし……って、ロイッ…?」
エドワードの言葉は途中で遮られてしまった。ロイが思い切り、エドワードを抱き締めたために。
「……ロイ……?」
「…心残りがあって、よかった…」
「…それって、よかったっていうのか?」
普通、心残りがあるというのは、いいことではないのに。
「君が…エドがここにいてくれるというのなら、いくらでも心残りがあってもいいさ」
「……バカ…」
ロイの本音を聞いて、エドワードは照れたように笑う。
そして、その笑顔のまま、ロイを真っ直ぐ見上げた。
小さな声で、呟いた。
「…ただいま、ロイ」
ロイも、返した。
幸せそうに、微笑んで。
「おかえり、エドワード…」
と。
「…さて、私は地震の事後処理が待っているな」
腕の中のエドワードを抱き起こして、ロイは小さく溜息をつく。
「事後処理?」
「いくら地震の威力が君達のお陰で弱められたとは言っても、被害が全くなくなったわけではないからね。もう少ししたら、少佐達が被害報告を携えてここに来るだろう」
「そっか…」
いつまでも、感動の再会を喜んでいる暇など、ロイにはなかった。
彼は、この国を統べる人なのだから。
「…仕方ないよな、それが仕事だし。オレも手伝うから、頑張れよ」
「励ましの言葉、ありがとう。それより先に、エドは軍部の病院に行きたまえ」
「何で?オレ、どこも怪我なんかしてないぜ」
「一度、光の球体に戻って、再びその姿になったんだ。身体に異常がないか、調べてもらっておいた方がいい。…その方が、私も安心する」
「…大丈夫だと思うけど……。それでロイが安心するっていうなら…」
そう呟いて、自分のに手で触れる。
(…痛むところはないし……)
その手が、ふと、止まった。
(……え……?)
疑問が、頭の中を駆け巡る。
「―――どうした、エド?」
突然、動きが止まってしまったエドワードに、ロイは声をかける。
「………ロイ……」
不安そうなエドワードの声に、ロイは眉をひそめた。
ひょっとして、何か異常でもあるのか、と。
怪我でもしているのか、と。
するとエドワードは突然、自分の着ていた上着を脱いだのだ。
そして、自分でも再度、確かめるかのように顔を俯かせ、見る。
ロイもその視線を辿って、見ていくと………
「えっ、エド……!?」
ロイの瞳も、驚愕に見開かれていた。
そして彼の視線もまた、エドワードと同じ所に据えられていた。
黒いタンクトップだけの、エドワードの上半身。
その、丁度胸元。
ふっくらとした盛り上がりを見せた、その部分に、2人の目は凝固されてしまっていた。
「な、なんだよーっ、これっ!」
丁度リザが、地震の被害状況報告を携えて、大総統の執務室の扉をノックしようとした時に、その悲鳴が中から響いてきた。
さあ、過去の話に入りました!本格的に女体化話に入ります…。今の時点ではギャグテイスト…。ですがこれからはシリアスも入るかな?