Schlussatz side story -18- accelerand 8
エドワードとロイが自宅に戻った時、既にかなり夜が更けていた。
「…長居し過ぎちゃったかな、あのレストラン?」
「店側も、いつものことだから心得ているよ」
一連の騒動で疲れているであろうエドワードを気遣って、ロイが外で夕食を済ませようと提案し、馴染みのレストランに寄ってきたため、帰りが遅くなってしまったのだ。
「……今日は、疲れただろう?今夜はシャワーを浴びて、ゆっくり休んだらいい」
と言いながらロイは優しく微笑み、寄り添っていたエドワードから離れてバスルームへと向かおうとする。
「あ…オレが…」
「いいから。エディはリビングで休んでいてくれ」
風呂の準備くらい自分でしようとしたのだが、それを軽く制して、ロイはバスルームに姿を消した。
(……ロイだって、疲れてる筈なのに)
恐らく今日一日、行方不明になった自分を探し出すために奔走した筈だ。
多分、エドワード以上に疲れていることだろう。
それでも、エドワードのことを気遣ってくれるのが嬉しかった。
いつも、自分のことを第一に想ってくれて。
大切にしてくれる。
だから………
エドワードは、心に決めていた。
「エディ、すぐに湯は張ると思うから、入る準備をして……」
リビングに戻ってきたロイは、最後まで言うことができなかった。
「……エディ…」
ほんの少し上擦った、驚きを含んだ声音で、ロイは愛しい人の名を呼んだ。
抱きついてきた、エドワードをそっと見下ろしながら。
「…どうした、エディ?」
自分に抱きついたままのエドワードを、愛しそうに見つめて、ロイはそっと金色の艶やかな髪を撫でる。
幾度も…幾度も、愛しげに。
「……エディ…?」
「オレ……子供、生めるって」
抱きついたまま、頬をロイの胸に当てたまま、エドワードは小さな声で呟いた。
「今日……病院で聞いてきた……。オレ、子供が生めるだろうって…」
「エディ……」
「……嬉しかった…それ、聞いた時は……」
本当に、嬉しかった。
ロイの子供を生むことが出来るのだと、分かって。
「オレ……よみがえってきた人間だし…それに、ほら…途中で女になっちゃっただろ?だから…少し、不安だった。オレに…女としての機能があるのかな…って」
もしかしたら、外見だけで、子供を生む機能はないのかもしれない。
そんな考えが、この身体になって常に付きまとっていた。
「外見だけだから……ロイはオレのこと、抱いてくれないのかなって思ってた…」
「…エディ、それは……!」
「うん、分かってる」
エドワードのとんでもない言葉を聞いたロイは、慌てて口を開いて誤解を解こうとしたが、それはエドワード自身によって止められた。
エドワードが微笑を浮かべた顔を、ロイに向けたことで。
「ロイは…オレのことを思ってくれて…なんだよな」
突然女性になってしまったエドワードを気遣って、触れようとしなかったのだ。
そんな、彼なりの優しい心遣いが、ロイからのプロポーズを受けた今なら、よく分かる。
「だけど……オレ…欲しいんだ…」
「エディ……」
「欲しいんだ……ロイとの絆の…証……」
最初に甦った時、共に甦ってきたヒューズが、ほんの少し羨ましかった。
甦って、この世にいたという証が残せたのだから。
あの時の自分は、まだ男だったから、そんな願いが叶うことはないと諦めていたけれど、やっぱり寂しかった。
けれど、今は……。
今なら………
「だから……」
エドワードは、じっとロイの顔を見つめる。
「だから…」
「エディ……」
エドワードは、少し潤んだ眼差しをロイに向けて。
声を出さないで。
唇を小さく動かした。
たった1つの言葉を紡ぐために。
『抱いて』
と。
そして、ロイは。
エドワードの望みに応えるために。
その仄かに赤い唇に、そっと口付けを落とした。
……はい!やっとここまで来ました〜!
ラストまであと少しです!
次からは、話が過去から現在に戻ります〜。
…過去編、長かった!