『なぁ』

 いつ頃からか、今はもうわからないけれど。
 気づいたら、いつもそうだった。
 それが、嫌だというわけじゃないけれど。ただ、どうしてそうなのかが気になって。
 とうとう我慢できなくなって聞いてみることにした。
「なぁ……大佐」
「何だね、鋼の?」
「えっとさ…どうして、オレのこと見るの?」
 オレの質問に、大佐は少し驚いたようだったけど、すぐに普段通りの、人をからかうような薄い笑みを浮かべた。こんな顔されると、大佐が何考えているかわからないんだよなぁ…。
「…どうしてそんな風に思うのかな?」
「だってさ…気がついたら、大佐、オレの顔をずっと見てるんだもん」
 ずっとずっと溜めていたことを、この際だから一気に吐き出すことにした。
「最初は、オレの気のせいかなあと思ったんだけど、でも違った。大佐、無意識かもしれないけど、オレのことずっと見てる」
「で、見られているのが嫌だと?」
「嫌じゃない、嫌じゃないけど…大佐、オレに何か言いたいことでもあるのかなあ…なんて考えると落ち着かなくてさ」
 そう、大佐に見つめられて、嫌だと思ったことは1度もなくて。
 ただ、視線を感じると何だか落ち着かないんだ。
 こう……胸の奥がザワザワしてさ。
 時々だけど、鼓動も早くなってしまうんだ。大佐の視線を感じると。
 見られるだけで、そんな風になっちまうオレ自身も、何かおかしいかな…なんて思うこともあるけど、それが何故なのかがわからなくて。
 とうとう、視線の張本人である大佐本人に聞いてみることにした。
 すると。

「……無意識ではないよ。私は君のことをずっと見ていたのだから」

 ……えっ?
 今、大佐…何て?
「…正確に言うならば、君のことが気になって、見つめていたというところかな?。初めて出会った頃からね」
 と言ってにっこり笑う大佐の顔は、目だけは笑っていなかった。
 ……本気だ。冗談で言っているんじゃない。大佐は、本心で言っているんだ。
「自分でも驚いているよ。10以上も離れたし少年の君のことが、こんなにも気になって仕方ないなんて…ね。でも、それが私の偽らざる本心だから、仕方ない」
 大佐は自嘲気味に笑うと席から立ち上がり、オレの傍まで歩み寄ってきた。そして、オレの隣に座る。
「だが…鋼のが気づいてくれたのなら、話は早いな」
 な、何の話?
 大佐の言いたいことが見えなくて、戸惑っているオレの頬に、そっと大佐の手が添えられてきた。
 な、何だよ、これっ?
「鋼の……好きだ…」
 え………好き…って…!?
 大佐が…オレのことを…!?
 オレがそうやって1人パニックしている間に、大佐は素早くオレの唇にキスをしていた。
 オレがそのことに気づいたのは、全て終わった後のことで。
 呆然としているオレを抱き締めて、髪を撫でながら嬉しそうに話しかけてきた。
「…それで、鋼のは、どうなんだね?」
 どうなんだねって…キスした後で聞くことかっ!?普通!?
「お、オレは……」
 不覚にも、どもってしまう。
 だけど、怒りは不思議となかった。
 大佐にキスされて、驚いたけど嫌じゃなくて。
 彼の眼差しは、優しくて暖かく感じるから。
 普段、旅をしている間に、好奇心の入り混じったような、不躾な視線とかは嫌で嫌でたまらなかったけれど。
 こうやって…大佐に見つめられるのは…嫌じゃない。
 もっと、見つめられていたいとまで思ってしまう自分に、少しばかり驚いた。
 だけど、これが、オレの今の偽らざる気持ち。
 そのことが分かって、オレは少し落ち着いた。
 だから、大佐にはオレの今の気持ちを伝えよう。
 大佐も、自分の気持ちを出してくれたのだから。

「オレ…大佐に見つめられるの、好きだよ」
 笑顔を添えて伝える。
「だから、これからもずっと、見つめ続けて欲しいなあ…」
 見つめ続けられるくらい、傍にいて欲しい。これからもずっと。
「……鋼の…」
 オレの想いが通じたのか、大佐の顔は一層綻んで、再び顔が近づいてきた。
 オレも今度は目を閉じて、待った。
 大佐が、オレの唇にキスしてくれる瞬間を。






 好きな人から見つめられるのは決して嫌なことじゃなくて、むしろとても嬉しいことなんじゃないかなぁ…と考えました。(当たり前ですよねぇ。)
 …いえ、出来れば絶対に見つめられたくない野郎から見つめられてしまい、非常に気分を害してしまったので、癒すために書いてしまいました。いいなぁ…ロイエド…心が癒されます…。これを読んでくださってる方々も、癒されてくれればとても嬉しいです…。