『ちょっと待って』

………大佐」
「ん……?」

「いつになく、仕事を真面目にしているんじゃない?」
「そうかな?いつものことだと思うが」
「…よくそんなことが、平然と言えるよなぁ」

「そういう鋼の、も、今日は文献を読むことに集中していないね」
「そうかな…?」
「ああ。いつもなら読むことに集中して、いくら呼んでも応えてくれない」
「うーん、この本、大して役に立ちそうにないからなあ…。つまらなくててさ」

「……でもほんと、今日は仕事熱心だな」
「たまには、いい所を見せたいからね。好きな人が目の前にいるのだから」

「…よくそんな恥ずかしいこと、面と向かって言えるよな。それがいつもの手かよ?」
「いつものとは心外な。今は鋼の、にしか言わないことにしている」
「今は、だろ?一体今まで、何人の女性に言ってきたものやら」
「…鋼の」

「少しくらい言ってもいいだろ?オレは、昔の大佐を知らないんだから」
「それは、昔付き合っていた彼女達に、やきもちを焼いていると取ってもいいのかな?」
「…勝手にそう思ってろよ」

「鋼の。誓って言うが、私のこの姿を見せたことがある女性は、未だかつていないよ」
「……ほんとに?」
「ああ。付き合っていた女性は、軍部の人間ではなかったからね」
「…そっか」

「この姿を見せたことがあるのは、君だけだ」
「書類の山に埋もれているところも?」
「残業に追い込まれるところも、だ」
「ふうん……。そうなんだ」

「さて、今日の仕事はこれでおしまいだ」
「えっ、もう?まだ終業時間まで余裕があるじゃないか?」

「たまには鋼の、にも、私の実力を見せたいからね。やる時はやるということを分かってもらいたかったし」
「…いつもそうなら、中尉達も助かるのに」
「完璧な上司は疲れるだろ、部下にとって?」
「…程度の問題もあると思うけど」

「…さ、そろそろここを出るから、支度したまえ。中尉達も今日は定時で帰宅予定だから、すぐに誰もいなくなるぞ」
「えっ、そうなの?」
「今日は、東方司令部のノー残業デーだ。夜勤以外は全員定時で帰ることにしている」

「そんな日が、軍部にもあるんだ…」
「働きっぱなしだと、疲れが溜まるばかりだからな。たまには家族団らんや恋人との一時を楽しんで、心身共にリフレッシュすることも必要だろう?」
「うん…そうだね」

「ということで、これから食事に行かないか?」
「食事って…いつものあの店?」
「気に入らないかい?」
「いや。美味しいから好きだよ、あの店。落ち着いた雰囲気だし」

「じゃあ、決まりだ。今日は私のリフレッシュに付き合ってもらおうか。……心身ともに、な」
「何だよ、それ…!」
「文字通りだ。さ、そろそろ行くぞ。予約の時間に遅れてしまう」
「あ…ち、ちょっと待ってよ!コート取って来るから!」






 …ショートショートに挑戦、です。ついでにセリフだけの話ですが…玉砕。やっぱり苦手です〜!短いの。
 この後、ロイは当然のごとく心身ともにリフレッシュ…したことでしょう。エドは…疲れてるかな?身体は……。