『なあ、大佐。それって美味しい?』
珍しくロイが、エドワードの前でアルコールの類を飲んでいたので、ふと尋ねてみたくなった。
2人だけでいる時は、まだ未成年であるエドワードに気遣ってか、酒類は余り口にしないだけに、その日の光景は珍しかったのだ。
「…ああ、これはなかなか好みの味だな」
ロイは、ワイングラスに注がれてた、赤い液体を見ながら微笑んで答える。
彼が飲んでいるのは、赤ワイン。
その瓶が、テーブルに置かれていた。
「…へえ、30年物かあ」
その瓶のラベルに書かれてあった年は、丁度30年前。そのワインは、30年もの間眠っていたということになる。
「…大佐と同じくらいの年のワインか」
ただ、それだけなのに、妙に親近感がある。
ロイが生まれた時と、ほぼ同時期に出来たワインだから。
「…試しに味見してみるか?」
「いや、いい…」
ワイングラスを差し出されるが、あっさり断る。
「オレみたいなガキが、飲むもんじゃないだろ?」
長い年月の眠りから覚めたワインは、それに相応しい人に飲んでもらうべきだ。
自分はまだ、相応しくない。
「…そうかな…?」
ロイはエドワードの心境が察せられたのか、すぐにグラスを引っ込めた。
「確かに、年数を重ねたものにはそれなりに重みもあるけれどね。私は、年数が浅いものも好きだよ」
「へえ…。それってどういう銘柄?」
「…15年物で、色は熟成されたような蜂蜜色」
「ふんふん」
「産地は東部の田舎」
「うん」
「『リゼンブール』産の15年もの」
「…………」
「『エドワード・エルリック』という名前だ」
「………オレはワインかよ…」
「これには、どんな極上のワインも叶わない。私を心地よく酔わせてくれるからね」
ロイはそう呟いて、彼もまた極上の微笑をエドワードに向けて、そっと抱き寄せた。
自分にとって、極上の逸品を、その腕の中に納めるために。
ほんとはこれ、クリスマス更新したかったのですが…少し遅れてしまいました。ごめんなさい。この話を思いついたのは、某アニメ○トのグッズを買った時の事。それは入浴剤でしたけどね…。あんなので、ほんとにワインが出たら買うよ、私。
