「――――あの……ロイ……?」
「何だ?」
「オレ達…何をするんだ、これから?」
「決まっているじゃないか。お互いの愛を確かめ合う行為だ」
「それって……」
優しい、包み込むようなキスの後、エドワードを再びベッドへと寝かしつけたロイは、彼の身に纏っている薄い夜着のボタンを器用に外し始めたのだ。
そんな彼の突然の行動に戸惑って、尋ねたのだが。
返ってきた答えは、薄々察しはついたものの、出来ればそうであって欲しくはないなとエドワードが考えていたことだったのだ。
「…そんなこと、男同士でも出来るのかよっ!」
やはり、とは思った。
だが、男女の行為としては、知識では持っているものの、実際どうこうするのは全く知らないのだ。そんなエドワードが、男同士でも出来るということなど知らなくても無理はないだろう。
「出来るとも。だからこうしている」
ボタンを全て外され、ロイがはだけようとするのを、エドワードは手で押さえて抵抗しようとする。
「だからといって、今すぐ手を出すかっ、普通?大体、こんなことって、結婚してからするもんだろーがっ!」
ごくごく常識的な知識しか持ち合わせていないエドワードには、婚前交渉など論外!という
意識が植え付けられているようだ。
ロイにしても、こういうことは結婚してからだと、考えていた。
エドウィナ姫が、エドワードだったということを知る前までは。
仮にも王族を娶るので、そんな順番を踏むことは必要だろうと思っていた。
だが。
「…すまない。もう、待てそうにないんだ、私は」
再度、軽くエドワードの唇にキスをして、ロイはじっと見つめながら呟く。
その真剣な顔を真上から向けられて、エドワードの鼓動はいきなり跳ね上がってしまった。
「君が…あの時のエドワードだと分かったから…。ずっとずっと、思い続けていた人だと分かったから…」
「ロイ……」
「君にひどいことをすると分かっていても…止められそうにない…」
「―――それって、オレが欲しいから?」
「ああ、そうだ…」
ずっと欲しかった、愛しい人。それが目の前にいるのだから、我慢などとうに限界を超えている。
「……だったら、仕方ないな。…やるよ」
「エドワード……」
そっとロイの頬に手を当て、エドワードは優しく微笑んだ。
「オレをやる。おまえに」
はっきりと言い切ったエドワードはすぐさま、
「ただし、最後まで、きちっとしろよ。途中で止めたら、許さないからな…!」
と、顔を赤らめながらも断言した。
「……勿論だよ。それに途中でなんて、止められない」
ロイは、優しく微笑んで、エドワードの耳元で囁いた。
たったそれだけなのに、エドワードはビクッと身体を震わせて緊張している。
そんな初々しい反応を堪能しながらも、ロイはエドワードの小さな身体をそっと腕の中に抱き込だ。
「そんなに…緊張しなくてもいい…。ゆっくりと…するから…」
はだけた夜着をするりと脱がせ、ベッドの端に置いて。
全裸となってしまったエドワードの、滑らかな肌を手で触れながら、ロイは今度は深く唇を合わせた。
「う……ん……」
(あったかい……)
エドワードは、ぼんやりと思った。
(暖かくて…ふわふわしてて…気持ちいい…)
微かに何かの音が聞こえてくる中、エドワードはその心地よさを受け入れて、再度意識を飛ばそうとしたのだが。
(……え…?)
ふと、疑問がよぎった。
いきなり。
(……ここって…どこ?)
確か自分は……!
(ロイと……) ]
エドワードは、瞼を開けた。
すると、まず目に入ってきたのは、大理石の浴槽。
そこは、エドワードの寝室の隣にある浴室だと、すぐに分かった。
その広い浴槽には、溢れんばかりに温かい湯が張られていて、エドワードはその湯に浸かっていたのだ。
一人ではなく。
「……目が覚めたか、エド?」
すぐ後ろから聞こえてくる、彼を気遣う声。
それだけで十分だった。
自分の身体が、ロイに抱き締められたまま浴槽に浸かっている状態だと把握するのには。
「ロイ……何でオレ……ここに?」
未だぼんやりとする頭で、懸命に記憶を手繰り寄せようとしながら呟く。
(確か……オレ……ロイと寝室にいて…それで…)
思い出そうとしながら、ふと目の前にある自分の身体を見た。
(――――オレ…!)
それこそ全身至る所につけられた、小さな赤い痕。
それを見て、一気に思い出してしまった。
(オレ……ロイと……!)
全裸になって、ロイにベッドへと沈められて。
その後服を脱いでエドワードと同じ姿になったロイに、抱かれた。
ロイは、エドワードの身体のあちこちに唇で触れて…時には少し強く噛むようにしては、赤い痕を残していった。その痕がまるで、ロイの証だとでもいうように、全身くまなく残していくのだ。
それだけで、エドワードにとっては恥ずかしくて、どこかへ逃げたいと思っていたのだが。
やがてそれも――――考えられなくなってしまった。
「……あっ…やァ……ん!」
唇が、エドワードの胸の、赤く尖った飾りに触れたために。
続けて舌で丁寧に辿られる。
「やだ……ッ…そんなとこ……っ」
「いや……?」
「なん…か…へん…になる…。背中…ぞくぞくして……っ」
「それは、気持ちいいってことなんだ、エド」
「やっ…!喋りながら…触るな…!」
ロイの舌が触れるたびに、背筋を何かが走っていく。
触れられている所から、全身の末端まで、熱が放出されていくようで…エドワードの体はうっすらと汗に濡れて、一層その滑らかさを美しく見せていた。
「……こんなこと…するの…かよっ!」
胸に触れられ、息を上げながらもエドワードは尋ねる。
自分の持つ知識では、こういった過程は全くなかった。生殖行為の結論しか、知らないのだ。
「ああ、するんだよ。愛し合った人間はね…」
「どうして……?」
「お互いが、気持ちよくなりたいから」
「……気持ちよく…?」
「そう。エドワードは、気持ち悪い?」
聞かれて、エドワードは暫し考える。まだ熱に侵されていない、ほんの少しの理性で。
「私に触られて、気持ち悪いかい?」
「―――気持ち悪くはない…」
ロイに体のあちこちを触られて、熱くなっても、嫌悪感は全くない。
むしろ、自分に触れる指先の熱さが心地よくて…もっと触れていてほしいとさえ思ってしまう。
ただ、あんまり触れられると困るのだ。
触られたところ以外が、どんどん熱くなって……。
「けど……ロイに触られると…他の所も一緒に熱くなって…ムズムズする…」
それが、恥ずかしかった。
「―――どこが?」
「…………」
声には出せなくて、ロイの手を取り、そこへと導く。
自分の脚の間へと。
「……ここ?」
つけ根に触れ、少しだけ指に力を込めれば、それだけでエドワードは息を飲み、背筋を反らせて。
「………っあ…!」
ロイの手を白濁の液体で濡らした。
「……は…っ……!」
肩で息をし、暫く背筋を震わせる。それに応じるかのように、硬くなったそれからは、なおも液体が流れ出ていた。
「…気持ちいいだろう?」
荒い呼吸を繰り返すエドワードの前で、ロイは濡れた自分の指をぺろりと舐める。
それが何であるかは分かるエドワードは、途端に顔を真っ赤にした。
「…そんなの舐めるなッ!拭けよ!」
「そんな勿体無いことが出来るか。君が感じてくれた証だというのに」
「オレ……が…?」
「そう。私に、感じてくれているのだろう?」
全て綺麗に舐め取って、ロイは微笑む。
「…なら、ロイは?」
「うん?」
「ロイは…感じているのか?」
それは、何となく思った疑問。
自分は気持ちいいのだとしたら、ロイはどうなのか、と。
だがエドワードのそんな疑問に、ロイは苦笑を浮かべて答えた。
「私だって……感じているよ。エドに」
そっとエドワードの手を取って、自分の脚の間のそれに触らせる。
「………っ!」
エドワードの指が触れた途端、彼の体はビクリと震えた。
自分と同じ器官。
だけど明らかに違う。
大きさも、形も、そして熱さも。
「これ……感じているの?」
「ああ、君にね…」
大人のそれを目の当たりにしたエドワードは、触れた手を外せずにいた。そうやって少し触れているだけでも、ロイのそれは震え、大きさが増しているような…気がする。
「これ…オレはどうしたらいい?」
「エド……?」
「ロイみたいに…触れたら…いいのか?」
触れていたら、自分と同じ反応を見せるのだろうかと考えていると、ロイはそっと手を外させて、強く抱き締める。
「ロイ……?」
「そうしてくれるのも嬉しいけれど……私は、君と一つになりたい」
「一つって……」
エドワードはぼんやりと考える。男と女が一つになれるのは、わかる。だけど。
「男同士でも…出来るのか?」
それは彼にとって、素朴な疑問だった。
「ああ、なれるよ。ただし、少しばかり、準備が必要だけどね…」
「準備?」
何のことかさっぱり分からず、エドワードはきょとんとしている。
「…君が許してくれるなら…したい」
そう伺うロイの眼差しは熱くて。
その瞳を見ているだけで、エドワードの身体の芯がふたたびじんわりと熱くなるのを感じていた。
「―――いいよ、して…」
ロイの首に腕を回し、彼の耳元で呟く。
「オレも感じてるんだ…。だから、ロイも感じて…」
そう小声で呟き、ロイに微笑みかける。
その笑顔を見ているだけで、ロイはますます我慢できなくなっていた。
「…ありがとう、エド」
整った顔に見惚れるような笑顔を作り、ロイは何度目になるか分からないキスをした。
深く唇を合わせて…舌を絡めて……唾液を交わして…ゆっくりとロイの指が、エドワードの背筋を這い、下りていった。
そして―――
(うわわわわーっ!)
ボンッと、エドワードの顔が茹でたように真っ赤になってしまう。
全て、思い出してしまった。
つい先刻までロイとしていたこと全てを、一気に思い出してしまったのだ。
あの後ロイは、エドワードの蕾へと手を伸ばし、ゆっくりと解して受け入れられる状態にして、身体を繋いだのだ。
だが、繋ぐ前にかなり柔らかくして、広げていたにも関わらず、エドワードのそこを激痛が襲った。
初めて受け入れる場所だから仕方ないのだろうが、青ざめた顔をして、痛みに震えているエドワードには、快楽なんてあろう筈もなく。
それでもゆっくりと時間をかけて、ロイの存在を慣らしていき、合間にエドワード自身も愛撫していくと、ようやく体の強張りは解けていったようだった。
その後は…よく覚えていない。
体の内部を貫くロイの熱を感じて、痛いけど嬉しくて…それが慣れた頃には、前の愛撫も伴って、とても気持ちよかったような…気がする。
ロイも、エドワードの中で熱を弾けさせて。
何もかもが終わった時に、とても嬉しそうに微笑んでいた。
その時、エドワードは分かった。
(ああ…これが一つになるってことなんだ…)
と。
その後は疲れて意識を失っていたみたいで、気づいたらロイに抱えられて入浴していたというわけだ。
「…痛むところはないか、エド?」
気遣うように、背後からロイが覗き込んでくる。
「……あそこが痛いだけ」
「………」
それだけで、自分を抱き締めている恋人は、どこが痛いのかが分かったようだ。
確かに、痛かった。
ロイを受け入れた場所は。
少し切れているのかもしれない。未だにジンジンと熱を持ったような感触が残っている。
だがそれ以外は大丈夫のようだ。
内部にも何も残った感じはないし、汗に濡れた身体も、今はさっぱりとしている。
きっと、意識を失っている間に、ロイが洗ってくれたのだろう。
「―――すまなかった。無理をさせて…」
「謝んなくてもいいよ。同意の上だったんだからさ」
確かに、身体は痛む。
だけど、嬉しかった。
そちらの方が、勝っていた。
ロイと身体を繋げたという嬉しさの方が、強かった。
ロイを受け入れてよかったと、思えた。
「……ま、そのうち痛くなくなるだろうし…」
「私が、そうしてみせるさ」
「―――自信過剰…」
くすくすと笑い、その振動で湯が揺れる。
「これから先は長いんだ。ゆっくり…慣れていこう」
「―――うん……そうだな…」
湯気が漂う温かい浴室の中。
温かい湯の中で、エドワードは幸せに浸りながら、ロイの話す声を、心地良さそうに聞いていた。
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