『逢』 -E.ELRIC-

 気づいたら、門の向こう側にいた。
 アルの全てを取り戻すために、自分の全てを等価交換した結果、オレは『ここ』にいる。
 門の向こう側の世界。
 機械技術が発達している、この世界に。



 錬金術が全く使えない、この世界では、他の手段で元に戻る方法を考え出さないといけなかった。
 オレはその手段として……機械技術を選んだ。
 …親父は怪しげな『黒魔術』っていうやつに傾倒しているけど、オレは胡散臭いのは苦手だから、全く別の方法を選んだ。
 そして、その研究のために、今、汽車の旅をしている。
 行く先は、トランシルヴァニア。
 そこに、オレの知りたい機械技術の知識を持っている人がいるから。
 その技術が、確実にオレを元の世界に戻してくれるという保証は、ない。
 これまでも、様々な技術について探ってみたが、全く期待外れというものもかなりあった。
 だから今度も……と考えてしまうことはある。
 だけど……今は、ほんの少しの可能性でも、賭けてみたい。
 あの世界に戻るために。
 アルと再び、会うために。

 ―――それから。

『ロイ』

 オレは、声に出さず、そっとその名を呼んだ。

 今……どうしてる?
 結局あの時…差し出された手を軽くはたいて別れたあの時が、最後になったけど。
 望みを…果たすことは出来たか?
 ……なんて、オレが心配する必要もないか。
 いつもそつなく計画を実行しているから、今度もきっと……。
 
 そして、今までと同じように、仕事を怠けては中尉に怒られて。
 そんな姿を他の人達が呆れたように笑って見てて。
 何もかもが終わった今は、いつもの光景が、繰り返されているんだ。

 それから…またハボック少尉の彼女とデートして、一悶着あったりして。
 …ちょっとむかつくけど、今はオレにもどうにも出来ないから。
 少尉には、すまないけど。
 でも、オレが戻ったら代わりにボコるむから、それで許して欲しい。

 そんな、ありきたりの日常が、戻っていると。

 そう、願いたい。
 どんなに、ホムンクルスとの戦いが苦しいものでも、生きていて欲しい。
 怪我をしているかもしれない…。
 でも、生きていて欲しい。
 
 オレは、必ず戻るから
 アンタの所へ、必ず帰るから。
 帰ったら……ずっと傍にいるから。
 今度こそ…。
 
 オレは、手袋に包まれた義手を見つめる。
 機械鎧のように、精巧ではない義手。
 だけどそれは、オレがあの゜『世界』にいた証だ。
 だからオレは、この姿で必ず戻る。
 必ず……!



 汽車のスピードが遅くなってくる。
 もうすぐ、目的地だと気づいたオレは、慌てて降りる支度をした。
 まずはこの地にいる、ロケットとやらの専門家に話を聞くことが先決だ。
 オレはプラットホームに降り立ち、地図を広げた。
「さて、と。次はどうやって行くのかな…」
 
 その時。
 俺の前を、誰かが通り過ぎた。
 
 地図を見ていたので、顔は分からなかったけれど。
 フロックコートを着た、男。
 そして。

 この香り………!

 オレは、思わず顔を上げて香りの流れる方を見た。
 そこには、人ごみに紛れて歩いていく、男の姿が垣間見えた。
 黒髪の…後姿だけだったけれど。
 香りは同じだ…!。

 ロイのつけていた、香水と同じものが、まだ、オレの周りに漂っているようだった。

 …男の姿は、すぐに見えなくなった。
 
 ひょっとしたら、この世界にいる『ロイ』かもしれない。
 親父が言っていたように、この世界にも、ロイがいるのかもしれない。

 
けれどオレは、追いかけようとは思わなかった。
 オレには…元の世界の『ロイ』がいるから。
 きっと、待っていてくれるだろうから。
 それに…ロイは1人だけでいい。
 オレだけのロイは……

 オレはそこで考えるのを止めた。
 まずは、戻る術を見つけてから。
 そこから、再び始まるのだから。

 オレは地図をたたむと、荷物を抱えて歩き始めた。
 未来と言う名の、『希望』を信じて。









 最終回、妄想大爆発!話第2弾です。今回はエドサイド。門の向こう側の世界にも、ロイがいるという可能性があって、会わせたいとも思ったのですが…これで止めておきます。だって、こっちのロイもきっと、エドにめろめろになっちゃうもんね!(確信)やっぱり、エドには元の世界のロイといちゃついて欲しいので…(願望)。