私にはカッコイー彼氏がいます。
とてもテニスが上手いです。
そして多分テニスが大好きです。
なので今日は彼に本気で挑戦しようと思います。
(もちろん勝てないと思うけど)
「1セットマッチでいいかい?」
「うん」
「じゃあ、俺からサーブね。」
「よし、こい!」
「じゃあ、いくよ。」
「いってらっしゃい!」
「サーブ打つよ。」
キレのいいフォームでユッキーがサーブを打ってきた。
少し遅く見えるのは気のせいだろうか。
私も一応テニス部なのでこれ位の速さならとれる。
ボールがラケットに当たった。
打球の感触がちょっとだけ鈍い。
3−2
15−30
最初が私のほうだ。
一応勝っている。
けど、ユッキーは男の子で力はアッチの方があってしかも現役でテニスやってるし、私がこんなについてこれるわけない。
やはり、ユッキーが手をぬいてて本気を出していないということ。
「本気だしてよ。」
今日はユッキーに本気でぶつかって欲しくて挑戦したのだ。
こんなんじゃ本気どころかお遊び以下だ。
もう怒った。
私はユッキーを思いっきり睨みつけた。
「ねぇ、本気出してって言ってるじゃん!」
ユッキーの顔をまともに見れない。
「もう、いい!」
もう、ダメだ。
短気な私はこんな耐えられない。
私は、テニスコートから出て走って、ドコに行くかも決めないで思うがままの方向に行った。
「ちょっと、!」
ユッキーの声なんて聞こえない。
走って苛立ちを紛らわしたかった。
今日はユッキーを知りたくって挑戦したのにこんなんじゃ意味がないじゃない。
私とユッキーは付き合ってる。
ユッキーは優しい。
ユッキーはテニスが好き。
ユッキーは頭がいい。
ユッキーの手は大きい。背中も。
他にもたくさん知ってる。ユッキーのことを。
でも、もっと違うユッキーはよくわからない。
何を考えてるのかわからない。
例えば、木に鳥がとまってるとしたら私は「カワイイね」って言う。
ユッキーも「うんカワイイね。」って言うけど、その顔はもっと違うコトを考えているような顔なのだ。
「何を考えてるの?」って聞くと「なんでもないよ」って言う。
私はユッキーの事知りたいのに。
いつも教えてくれない。
だから、テニスしてちょっとはユッキーの事わかると思ったのに。
ユッキーの大好きなテニスだったらと思ったのに。
本気でやってくれないと全然ちっともわかんないじゃん。
私がわがままなの?
目に熱いものがこみあげてきた。
そう言えばユッキーさっきどんな顔をしてたのかな。
ユッキーの事わかろうとしてたのにあんな事してたらわかるものもわからないじゃん。
何してるんだろ、私。
少しバカらしくなって口元が緩んだ。
今、ユッキーは何してるんだろ。
っていうか、追いかけてきてくれない・・・?
まあ、追いかけて欲しくて走って来たわけじゃないんだけど。
来てくれなかったら来てくれないなりに寂しいっていうか・・・。
はあ、私何してるかわかんないなぁ。
本当は今頃こんな風になるはずじゃないのに。
今頃はもう試合とか終わってて、家に帰るかユッキーとどっか行ったりしてたのに。
っ て い う か コ コ ど こ で す か ・ ・ ・ ・ ?
どうしてもしょうがないので近くにあった自動販売機で適当に買って近くのベンチで飲んでいた。
ポケットに数百円入ってて良かった。
バックとかテニスコートに置いてきちゃったんだよね。
何分たったかわからなかった。
ゆっくり缶ジュース飲んでたらおちいてきた。
半分ぐらい飲み終えたぐらいになったら向こうからユッキーが走ってきた。
随分と息をきらしながら私の前まできた。
「はい。」
渡されたのは私の筒型のバッグだった。
「ありがと。」
適当にお礼を言っといた
「飲む?」
私は今まで飲んでいた缶ジュースをユッキーの前に差し出した。
「・・・うん。」
そう言ってユッキーは私の手から缶ジュースをとって私の隣に座った。
ユッキーもジュースを飲んでいたらいくらか落ち着いてきたみたいだった。
「あのさ・・・ごめんね。」
沈黙に耐えられず私から言葉を発した。
「私、焦ってたみたい。ユッキーのコトよくわかんなくてさぁ。ホラ、ユッキーって自分のコトあんましゃべんないじゃない?で、ユッキーの好きなテニスとかしたらわかるかななんて思っちゃって。でも、ユッキーはお遊びだったみたいだったからなんか苛立っちゃって。」
前からちゃんと言えば良かったんだ。
こんなまわりくどいやり方じゃなくて、ちゃんと口で聞けばよかったんだ。
「ごめん。」
ユッキーの口から発せられたのは謝りの言葉だった。
「俺、にも楽しくしてほしくて。俺が思いっきりやったらきっとついてこれなくて楽しくなくなるだろうなって。」
ユッキーはわずかに下向きになり少し顔がみずらかった。
けど、私が若干ユッキーの顔を覗き見るとちゃんとユッキーの顔が見えた。
「心の中で思ってることちゃんと言ってがイヤな気分になるんじゃないかって不安だったんだ。」
今度はユッキーが手で顔を覆ってしまったので完璧にユッキーの顔が見れなくなった。
「嫌われるのがすごく怖いんだよ。それぐらいすっごく好きなんだよ。」
ユッキーの手の隙間から赤く火照ったユッキーの顔が少し見えた。
まあ、何だかんだあったけど目標は達成できたようです。
なんか嬉しい。
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