俺は、ただ、妹を救いたい一心だった。
だから、アイツのために有名な医大へ入り、各国へ留学して最新の医療技術を勉強してきた。
だが、日本に帰ってきて見たアイツは、昔とは変わってしまっていた。
大切なあなたに捧げます
日本に帰ってきて、妹・は中学1年生になっていた。氷帝学園に通っていると聞いて、その時は安心した。
だが実際のは、真幸が知っているではなかった。
「・・・・・・。」
久しぶりに見たは、とても昔の明るかったとは思えなかった。
他人を寄せ付けないような態度を取り、口数が減り、表情も"無"に近かった。
「・・・帰ってたのか、真幸。」
真幸を呼ぶ声質は変わってはいないが、口調は昔とは大きく異なっていた。
「・・・あぁ、ただいま。」
「・・・お帰り。」
誠意というものは全く感じられなかった。冷たく、まるで赤の他人に対するような態度だった。
真幸が好きだったは、そこには"いなかった"。
それでも、の態度は、病魔による不安からだと真幸は解釈していた。今まで、この病魔にいつも悩まされていたからである。
そう思うからこそ、真幸はを喜ばそうと言葉を発した。
「そういえば、お前の病気、もしかしたら・・・。」
「あぁ・・・、それなら、もうどうでもいいよ。」
の言葉を聞いて、真幸は自分の耳を疑った。
自分が今までやってきたことを否定されたような、無駄だと言われたような気分だった。
「どうでも良いと言うのは、どういうことだ。」
「どうもこうも、そういう事だよ。・・・もう、遅いんだ。」
本当にどうでも良さそうな、他人事のような言い草だった。実際、""の命がかかっていると言うのに…。
真幸は、の変化に、ついていけずにいた。
それ以後、真幸は大き目の病院に勤め、とは別のマンションに暮らしていた。
自分の意志よりも、自身の意志を尊重する形を取った。それでも、何とか治療法だけはと、コツコツと研究は続けていた。
「…いつか、お前が未来を得たいと思ったときのために…。」
真幸は、のことだけを思って生きてきた。それは今でも変わらない。
「・・・本気で治そうと、思っ、て・・・さ。あれだけ治療サボっておいて、言うのもどうかと思う、・・・けど。」
真幸の望みは、2年後に訪れた。が中学3年生になり、真幸の研究もだいぶ進んだ頃、はようやく未来を目指した。
「これでやっと、俺が医師になった目的を果たせるんだな?」
そして、真幸の過去を活かせる時でもあった。
今までのために、患者のためにしてきたことが、活かされるときが来たのだ。
そしてもう一つ、喜ばしいこと。
から、"兄"と呼ばれた瞬間。
日本に帰ってきて、初めて"兄"と呼んでくれた、妹の表情は、昔と変わらなかった。
お兄さんですね。連載開始当初には無かった設定ですが、兄弟が欲しくなってお兄さんです。…設定が変わりまくってるのは今更なんですけどね…。それに更新遅くてゴメンナサイ…。