私はいつもと変わらず、屋上でサボろうとしていた。
ただ、いつもと違うのはそこに先客がいったってこと。
次の授業は世界史だった。
世界史の先生はどうも嫌いで、授業もつまらないからとは屋上に行った。
今日は天気もいいから素晴らしいお昼寝スポットだと思っていたのに・・・。
「何で赤也がここにいるのよ・・・。」
屋上には、すでに赤也がいた。床に寝転がって、気持ちよさそうに日向ぼっこをしている。
「サボってるからに決まってるだろ。」
体勢はそのままで、目線だけのほうを向いた。
「そういうこそ、後で真田さんに怒られるぜ?」
「いいのよ。私は兄さんほど真面目じゃないもの。」
そう、はあの真田弦一郎の妹なのだ。
その運動神経のよさと頭のよさは同じなのだが妹のはよく授業をサボる。
は、ゆっくりと赤也に近づいて隣に座った。そしてポケットからタバコを出す。
「おいおい、お前タバコなんて吸ってんの?」
赤也は、上半身を起こした。
「いいじゃない、別に。私は赤也や兄さんと違ってスポーツ選手じゃないもの。」
そういって、タバコを一本口に銜えるとライターをだして火をつけようとした。が、赤也にライターを取られた。
「返してよ。」
「ダーメ。」
そういって、が口に銜えていたタバコもとった。
「女がタバコ吸うもんじゃねぇよ。」
「うわぁ、めっちゃ男女差別。」
赤也の言うことには溜息をついた。
「だって、それがないとなんか口が寂しいのよねぇ・・・」
は、赤也からタバコとライターを取り返すのを諦めた。赤也から顔をそらして、また溜息をついた。
「そんじゃ・・・」
赤也はの顎を掴んで、自分の方に向かせてキスをした。
それがいきなりだったので、は目を見開いて驚いた。
「っん・・・」
いきなりで抵抗もできず、は黙って赤也に口付けられていた。
赤也が舌を入れると、はさらに驚いて、赤也の制服を握り締めた。
やっと唇を離されると、苦しかったのかは大きく息を吸った。
の頬は赤くなっていて、少し息切れをしていた。
「これで、口寂しくねぇだろ?」
まるで意地悪が成功したかのように笑みを浮かべる赤也には顔をさらに赤くした。
「・・・兄さんにいいつけてやる・・・・・・。」
「待てッ!それだけはマジ勘弁ッ!!!」
赤也はあわてての肩を掴んだ。
「クスッ。冗談よ、冗談。さっきの仕返しね。」
そういっては笑った。
「・・・笑えない冗談だな・・・。」
赤也も半分本気にとっていたので、ちょっと気が抜けた。
そのとき、丁度チャイムが鳴って授業の終わりを告げた。
「それじゃ、教室にもどるか。」
そういって、赤也が立ち上がり、それに続いても立ち上がった。
「そうね。」
そういって、赤也は先に屋上を出て行こうとした。
「赤也。」
後ろから声をかけられて、赤也は振り返った。
そして、その瞬間、は赤也に触れるだけのキスをした。
「じゃ、お先に。」
は、ドアを開けて、階段を下りて行った。
屋上には、思わず固まってしまった赤也だけが残されていた。
それ以来、はタバコをやめた。
もう、口が寂しくなることはなくなったから。
一方赤也は、の兄、真田弦一郎からにらまれることとなった。