問診の重要性を再確認
 『腰痛』テーマに現代医療鍼灸臨床研究会開催
 重篤疾患を見落とさない

日本鍼灸マッサージ新聞 02.05.10.
 第15回現代医療鍼灸臨床研究会が去る4月29日、東京大学医学部講堂で開催され、約330名が参加した。同研究会は毎回一つの疾患をテーマに取り上げ、鍼灸治療がどこまで有効であるのかを検討している。今回のテーマは『腰痛に対する鍼灸治療』。
 当日はまずはじめに埼玉医科大学東洋医学科の山口智氏が基礎講座を行い、腰痛の原因を「骨・椎間板の障害」「筋・筋膜の障害」「内臓疾患」「心因性」 「その他(炎症・腫瘍)」などに大別した。山口氏は腰痛に対する鍼灸臨床では特に問診が重要だとし、▽痛みの特徴や発症様式、▽痛みの部位・性質・持続時間、▽自発痛や運動痛の有無、▽憎悪緩解因子、▽症状の経過などに留意し、問診と理学検査で症状の病態を把握し鍼灸治療が適応であるかどうかを鑑別するとした。
 午後のシンポジウムでは坂井友実氏(筑波技術短期大学鍼灸学科助教授∵宮本俊和氏(筑波大学診療科教員養成施設助教授)、佐藤正人氏(森ノ宮医療学園附属診療所鍼灸室室長)の3名がそれぞれ講演を行った。
 坂井氏は『老年者の腰痛』と題し、特に骨粗鬆症による骨折で生じた急性および慢性の腰背部痛についての理学所見として、急性期は骨折部に一致して叩打痛・圧痛がみられるが慢性期では必ずしも一致しないと述べた。また、圧迫骨折による外見上の変形として凹円背、円背、全後弯、亀背がみられるとした。坂井氏は腰背部痛の緩和や腰部の可動性を高めることを目的とする鍼治療の施術部位として疼痛局所、圧痛部、椎間関節部、スキンロールテスト陽性部(皮膚の知覚過敏点)を挙げた。
 宮本氏は『スポーツ障害』と題し、スポーツ選手の腰痛に対する鍼治療について「選手の要因(脊柱アライメント・腰仙角,年齢・性別等)」、「競技の要因(コンタクト・ノンコンタクト・走る・跳ぶ・投げる等)」「練習要因(練習の強度・時間,方法・試合日程等)」「環境要因(グラウンド・寒冷・用具等)」に着目して治療法や復帰の見通しを判断しなければならないとし、競技特性と選手の腰椎の形態が合わないため腰痛が発生するような場合は、フォーム改善などを指導する必要があるとした。
 佐藤氏ほ附属診療所鍼灸室に来院する患者について、重篤な疾患さえ除外すれば治療者側がその腰痛の病態や来院の背景(動機など)を考慮しながら鍼灸治療を行うことで大半は治療対象になるのではないかとし、治療としては鍼で筋の緊張をほぐし灸で適度に刺激を与えると述べた。
 また、最後に行われた埼玉医科大学整形脊椎外科教授の高橋啓介氏の教育講演『腰痛の診断・評価・治療について』では、急性腰痛の原因は腰椎を構成する組織の疾患であり内臓性や心因性があるとした.腰痛に対する問診で最も重要なのは腫瘍性や感染症などの重篤疾患を見逃さないことだと、問診の重要性を説いた.解離性大動脈瘤を見落としたため患者が死亡し訴訟に発展したケースもあつたとし、問診では安静時痛の有無や経過が進行性かどうかなどに注意すべきだとした。高橋氏はまた、急性腰痛では長期の安静臥床とコルセットなどによる長期固定はかえって回復を遅らせるという近年のデータも紹介した。
 腰痛は国民病の代表的な疾患で、腰痛を訴える患者が受診する医療機関は「あんま・鍼灸・整骨院」が35.2%で最多となっているように、鍼灸の臨床家にとっては密接な関係がある疾患。今回の研究会では腰痛に対する鍼灸治療の適応と限界が主に取り上げられ、中でも問診の重要性が再確認された。同研究会の次回テーマは「アトピー性皮膚炎に対する鍼灸治療」で来る11月3日開催予定。

日本鍼灸マッサージ新聞へ

研修会記録目次へ

はり・きゅう・マッサージのひろばへ