『生活習慣病に対する鍼灸手技療法』
白畠 庸 日東医学会長基調講演
日本鍼灸マッサージ新聞 0111.10.
21世紀は予防医療の時代で、その担い手として最右翼に位置するのが鍼灸手技(マッサージ等)療法です。これは私たち関係者だけでなく、自他ともに認めていることです。
さて、生活習慣病とは生活習慣によって引き起こされる病気で糖尿病、高脂血症、高血圧症が3大生活習慣病といわれています。これらは生活内外の環境変化と心身へのストレスによって引き起こされますが、このストレッサ一に対抗できるのは、私たちが行っている生体のホメオスタシス機能の向上・安定です。ホメオスタシス効果を発揮させる鍼灸手技療法にはタネも仕掛けもありません。薬も大きな道具も使わず、外からのエネルギーも使いません。体表に対して軽微な刺激を与えることにより、すでに生体の中にあるいろいろな物質を増強・活性化させ、あるいは2大調整機能である自律神経系と内分泌系を調整・安定させ活力を高めるものです。鍼灸手技療法は外皮に対する精細で心地よい刺激で心身の安定を確保するものなのです。
また、鍼・灸・あん摩は娯楽性がある医療だといわれ、その点が他の医療とは違うとされています。医師のところでは注射や点滴など生体や精神的に負担のある治療が行われます。それに対し鍼・灸・あん摩は「今日は体調が悪いから鍼をしてもらって気持ち良くなろう。あん摩をしてもらってせいせいしよう。灸をしてもらってホクホクしよう」などと、いわゆる娯楽性のある医療だといえます。このような心地よい刺激が生体の恒常性保持機能を高めるのです。
2大調整機能である自律神経系の最高中枢は視床下部、内分泌系の総司令部は下垂体です。この視床下部と下垂体は下垂柄でつながっています。人はストレスを受けるとコルチゾールという物質が分泌され、生体が疲弊します。鍼灸手技療法を行うとサイトカインが分泌され免疫力が高まります。また、リラックスすると脳内微量物質、オピオイド物質が分泌され心身を豊かに緩やかにします。このように生活習慣病の原因となる心身へのストレスに対して鍼灸手技は非常に効果があり、病気になってしまう前段階で予防ができます。
すべての生活習慣病に鍼灸手技療法は有効ですが、さらに肩こり、腰痛、各種関節痛、企図振戦やけいれん、頭痛、歯痛、消化器失調、五臓の失調、アトピー、糖尿、高脂血症、高血圧、動脈硬化、VDT症候群、静脈瘤、悪性腫瘍、うつ・いらいら、痴呆などに効果が顕著です。これらの疾患の患者さんたちにどういう治療をするのかというと、当然それぞれの症状に対する治療をしなければなりませんが、全体としては自律神経の調整と心身のリラクゼーションを目的として刺激点、刺激エリアを選択します。そして、マッサージはソフトなマッサージが大切です。あまり強くもむと皮下結合組織をこすって、コリを再生します。灸は有痕灸が有効ですが、有痕灸を嫌がる患者さんには灸点紙などを使い半米粒大のもぐさで非常に緩やかに温刺激を与えます。鍼は細い鍼を使った浅い鍼による緩やかな刺激が基本です。