日本統合医療学会
統合医学は東西文明の融合
伝統医療多い日本に期待
日本鍼灸マッサージ新聞 01.7.10.
日本統合医療学会(JIM・渥美和彦代表)は去る六月二十四日、第一回学術大会を早稲田大学国際会議場(東京都新宿区)で開催した。| JIMは、伝統医療や相補・代替医療(CAM)への関心が世界的に高まるなか、その考えを一歩前進させて西洋医学とCAMの融和をはかり、患者中心の未来医療「統合医療」を創設しようという新たな潮流を受けて、昨年十二月に発足した。
渥美代表は基調講演『相補・代替医療から統合医療へ』で、CAMに支払われる医療費が年間二百七十億jにのぼる米国など欧米医療の現状を紹介。一方、統合医療への取り組みが遅れている日本については「日本人は身体的、社会や政治も含めて精神的にも病んでいる」として、今後の統合医療の活動には、教育・研究、医療制度の整備のほか、国際協力、関連企業の育成やマスコミによる国民の啓蒙なども必要不可欠であると語った。
また、今年五月にサンフランシスコで開かれたハーバード・スタンフォード両大学の合同シンポジウムで提示された「再発性頭痛に対する鍼」などCAMの有効例や、ガイドラインの不備といった課題を報告した。二〇〇四年には同シンポジウム開催地を「伝統医療の多く存在する日本に」と期待の目が向けられており、その際に受け皿となるJIMの今大会を「西洋医学とCAMとの橋渡しをする歴史的な大会」であると意義付けた。
五人の講師陣による特別講演では、吉田勝美教授(聖マリアンナ医科大学)が『相補代替医療のEBM』で、画一的な西洋医学の治療法とは異なり、個別性を考慮したCAMの処方内容を評価するのは困難であり、また、鍼灸などの非薬物療法ではプラセボ効果の関与を調べにくいので、従来のEBMの手法では限界があると述べた。そのうえで、観察研究を基本に仮説生成する新たなEBMを提案した。
新井賢一所長(東京大学医科学研究所)による『統合医療におけるTailored Medicine』では、統合医療の目指す道は「Tailored Medicine(個の医療)」であり、個人の体質にあった医療を選択するときにゲノム診断はひとつの指標を示すものと望まれており、ゲノム疫学と生薬などの多成分化学物質の解析を併用することで東洋医学に新しいアプローチができるとした。
『脳と認知科学』で半田智久教授(宮城大学)は、様々な医療をあるコンセプトに基づいて統合する際に必要となる認知科学を、『心療内科は統合医療である』では中井吉英教授(関西医科大学)が、心身一如の自然治癒力を重視する東洋医学を核に西洋的な身体医学的療法と心理療法を統合した「全人的医療」が心療内科の目標であると説明。『健康は呼吸で決まる』の西原克成一所長(西原研究所)は、エネルギー代謝である呼吸の 重要性を唱えた。
第一回JIM学術大会の特別講演では、西洋医学・近代科学は普遍化、再現化など客観性を追い求めてきた結果、「個別性や個体差はできるだけ排除されてきたため、その限界が現れてきている」として、いま求められているのは価値観のパラダイム転換であり、東西文明の融合であり、すなわち統合医療であるという意見の一致をみた。
当日は二重のシンポジウムも開かれ、漢方家による証の解説や、歯科臨床の場に鍼や指圧を導入した例などの紹介が行われた。また、実際にCAMを取り入れている若手臨床医らが、今後のEBMのあり方や保険診療と自由診療を併用した混合医療の必要性を切実に訴えた。
多分野、多方面からの高度な内容に満ちあふれた今回のJIM学術大会は、統合医療実現に向けて機が熟しっつあることをうかがわせるものとなつた。