全日本鍼灸学会学術大会
鍼灸は時空を超えて
なぜ、鍼灸医でなく鍼灸師か
日本鍼灸マッサージ新聞 01.7.10.
(社)今日本鍼灸学会(丹澤章八会長)の第五十回学術大会が去るし六月八日からの三日間、大阪国際会議場(大阪市北区)で開催された。二十一世紀最初の今大会は、同学会が社団法人となってから二十周年、さらに節目となる第五十回目の学術大会という記念すべきもの。貴重な人類の歴史的遺産である伝承医学に新しい知識を吸収しようという願いが込められた『伝承と変革―鍼灸は時空をこえて』というテーマにふさわしい大会となった。
鍼灸が世界的な広がりを見せている現在において、もう一度医の原点を見直そうという視点から行われた特別講演は、大阪医科大学の大澤仲昭名誉教授の『東西医学の接点』と、順天堂大学の酒井シヅ教授の『日本の鍼灸医(師)の地位の移り変わり』の二題。
酒井教授は講演の冒頭で「演題にあえて用いた【医】という語が、厚生労働省から鍼灸師をあらわす際に使用が禁じられていることには非常に驚きました」と述べた。奈良時代の大宝律令に初めて鍼灸医の制度があらわれてから現在に至るまでの地位の変遷を解説するなかで、明治維新後に西洋医学が、主流となり、かっての医師としての高い身分が一変したことから、現在の鍼灸師の処遇が生じたと語った。
さらに特別招待講演は、『フランスを中心に、欧州の鍼治療の歴史と現状』と題したフランス鍼医師科学協会のバトリック・ソトゥルイユ博士によるもので、ヨーロッパにおける鍼灸の歴史や現在のフランスでの鍼灸をとりまく状況について説明された。フランスの鍼灸は八割が運動器官の痛みの治療に、そのほか、消化器系・婦|人科系疾患などにも用いられるが、特に情緒障害、睡眠障害といった現代のストレスに関係する症状にはかなり効果があるのではないかというソトゥルイユ博士自身の見解も述べられた。
また、最終日に行われたセミナー『医療情報と鍼灸』では、鍼灸分野のIT化について、メリット、デメリットが討議された。電子カルテは、自分の治療院で使うだけならコスト負担、技能の習得の手間がかかるだけだが、ほかの治療院、医療機関とネットワークで繋ぐことで様々な情報交換が可能になるとした。さらに、規格統一も進められており、ネットワーク化とともに実現すると、全国の医療機関から膨大な数の臨床例を集めたデ一夕ベースが構築でき、臨床の判断や教育・研究に利用できるだけでなく、患者や保険政策担当者と情報を共有することで、鍼灸がより開かれた医療へ変化するきっかけになると未来像を描いた。
このほか、『医療経済と鍼灸』などの教育講演、小児鍼や家伝の灸の実技セッション、およそ百題もの一般口演、脳梗塞のリハビリで鍼治療を受けたこともある毎日放送の角淳一アナウンサーを迎えた公開講座「はり・きゆう よもやま話」といった、あらゆる角度から鍼灸にアプローチした非常に多彩な内容で、臨床鍼灸師、研究者、学生などが多数参加した盛大な学術大会となつた。