第3回(社)日本鍼灸師会臨床学術大会
『鍼灸発展の道を探る』
― 生活習慣病と鍼灸 ―
治癒や軽快がもたらされるのは鍼灸が治療真理に合致の証
日本鍼灸マッサージ新聞 01.10.10.
10月7日、8日の両日、(社)日本鍼灸師会(井口達也会長)の第3回臨床学術大会が、福岡市博多区の明治生命ホールで開催された。東京、大阪に続いて行われた今大会のテーマは「鍼灸発展の道をさぐる」、現在のニーズに応えるという目的から『生活習慣病と鍼灸』がサブテーマに掲げられた。
開会式で馬場道敬・大会実行委員長は、鍼灸という土台は同じでもそれぞれ臨床の方法は違うので、すべての発表を充分理解できるとは限らないが、鍼灸により病の治癒や症状の軽快がもたらされることは、鍼灸が治療の真理に合致するからであるとし、「せっかく多数の臨床鍼灸師が集まる機会です。発表者の意を摂取し、明日の治療向上の糧にしょぅではありませんか」とあいさつした。
特別講演は、東西両医学の立場から生活習慣病に関 するテーマが取り上げられた。東洋医学からは、『生活習慣柄と鍼灸治療』と題して森ノ宮医療学園の森秀太郎名誉理事長が講演を行った。ガン、脳卒中などの死亡原因4大病を防ぐためには、不定愁訴を改善する未病治が理想で、これは鍼灸の得意分野であると説明した。もちろん、生活習慣は鍼灸治療では改善できないので、治療の際に食事、休養、運動などの日常生活における習慣の改善法を患者とともに話し合うことが重要であると強調した。
西洋医学からは、九州大学の藤野武彦教授が『「肥満とストレス」BOOCS−生き生きとやせる−』を講演した。ストレス過剰がもたらす脳疲労が肥満の原因であると述べ、「たとえ体に悪いこと(悪い食べ物)でも、とりあえずは無理してやめない」など三原則にもとづくBOOCS(脳指向型肥満治療システム)について解説。藤野教授は、脳疲労をいやすために鍼灸は非常に有効であるので、この分野でのさらなる発展はもちろんのこと、今後は東西医学の結合も不可欠だと語った。
教育講演は、明治鍼灸大学の矢野忠教授による『産婦人科疾患における鍼灸治療の意義とその可能性について』。思春期から老年期まで各々のライフステージ特有の問題を取り上げ、とくに有効であるとの報告が多い月経困難症と骨盤位(逆子)に対する鍼灸治療について詳しく紹介した。女性の健康管理としての鍼灸を普及させるためには「疾患に目を向けるだけでなく、ライフスタイルなどを含めてトータルに女性を診ていくことが大切です」と締めくくった。
この他、経絡治療学会の岡田明三会長らによる実技発表や、『舌の変化と顔面の麻痺』『比較的短期間で緩解したバレリーナのシンスプリント』など16題の一般口演が行われた。なかでも、『鍼灸治療患者の対応について―神経言語プログラム心理学による分析─』が会場の参加者から注目を集めた。これはアメリカの心理学者の理論に基づき、眼の動きや声のトーンなどで外来患者の思考タイプを分析し、視覚、聴覚、体感の3タイプに区分するという判定法。調査結果によると、中年者にははっきりと話すなど聴覚に訴え、高齢者にはスキンシップといった体感的な言語を選んで対話することが必要であると報告された。
発表者の意欲的な取り組みばかりでなく、会場からも多くの質問が出されるなど全国各地から集まった参加者たちの積極的な姿勢がうかがえ、今大会は鍼灸発展の道への大きな一歩となったようだ。