紙上レポート:
現代医療鍼灸臨床研究会より


『サーモグラフィを用いた
ルーステスト後の手指皮膚温変化の検討』
 ― 胸郭出口症候群に対する鍼治療 ―

東京大学医学部付属病院 アレルギー・リウマチ内科
 小糸康治、美根大介、粕谷大智、杉田正道、山本一彦

 日本鍼灸マッサージ新聞 01.10.10.  

【はじめに】
 胸郭出口症候群(以下TOSと略す)の評価に用いられている脈管テストは検者毎の手法や症状誘発の評価の違いにより結果に差が生じることがあり、客観性に乏しいとされている。今回我々はサーモグラフィを用いたルーステスト後の皮膚温変化のパターンを分類し、TOSの状態や症状・脈管テストとの関係を検討したので報告する。
【対象と方法】
 対象は安静時より上肢症状を自覚するTOS患者7名及び対照群として上肢症状を自覚しない成人10名。方法は一定の室温下で座位にて肘の高さの台に上肢を置き、皮膚温安定後、3分間のルーステストを行い、上肢を元の位置へ戻した後、経過を15分間観察した。測定部位は第1〜5指の爪根部とした。
【結果】
 被検者の皮膚温変化のパターンを分類すると、ルーステストに伴う皮膚温低下の後、1:速やかにテスト前の皮膚温ヘ回復し、その後安定するパターン。2:一時的な皮膚温上昇の後再び低下し、その後緩やかに回復、或いは回復方向へ向かうパターン。3:明らかに皮膚温回復の遅延を認めるパターンの3つに分かれた。
 各パターンの脈管テスト・自覚症状の内訳は、1:対照群より5名該当、脈管テストは1例のみ拍動変化、上肢症状の誘発なし。2:対照群より5名、患者群は罹病期間の短い2名が該当、脈管テストで拍動変化、対照群では上肢症状誘発、患者群は増強。3:患者群より5名該当、全例長期罹患例で脈管テストにて拍動変化と上肢症状増強。
【考察及びまとめ】
 今回サーモグラフィによるパターン分類で脈管テストの自覚症状誘発の有無と罹病期間の関与が示唆された。又、パターン1の健常例の皮膚温変化に対し、パターン2のTOS予備群及び短期罹患群では、その反応から交感神経の過敏性が示唆され、パターン3の長期罹患群では自律神経機能低下による回復遅延が示唆された。以上サーモグラフィによりTOSの病態を詳細に把握でき、鍼治療経過の客観的評価に有用と考える。
【キーワード】
 胸郭出口症候群、ルーステスト、サーモグラフィ

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