紙上レポート:
東洋医学とペインクリニック研究会より


『多発性脱毛症に対する星状神経節近傍への
  直線偏光近赤外線照射の一症例』

大阪医科大学麻酔科ペインクリニック
伊地知和男、柏木みのり、一井綾乃、久下浩史、河内 明、赤塚正文

 日本鍼灸マッサージ新聞 018.10.  

【緒言】
 多発性脱毛症は皮膚科での治療と併行して星状神経節ブロック(以下、SGB)も試みられている。われわれは、患者の希望に応じ、直線偏光近赤外線治療器(以下、SL照射)を用い星状神経節近傍へ照射を行い改善した一症例について報告する。
【症例】
 女性、38歳、主婦。初診は2000年5月。主訴:頭部の脱毛。現病歴:99年8〜9月頃にヘアカラーを使用。10月から脱毛が始まった。11月より本学の皮膚科にて受診中で脱毛の進行は停止した。改善の徴候がなく精神的不安を持って本麻酔科に来科した。現症:身長162cm、体重50kg。頭部全体の約半分に脱毛白髪及び切れ毛が混在。頭皮の発赤なし。頭皮のかゆみなし。頚部と肩背部の筋緊張感あり。下肢の冷えあり。爪の横構なし。なお患者のプロフィールはCMI健康調査表において第T群に属し、正常域。良導絡測定は平均電流量が低く交感神経低下型といえる。アレルギー体質(−)、飲酒(−)、喫煙(−)。既往歴・家族歴:特になし。治療及び経過:直線偏光近赤外線治療器(HA−550、東京医研製)のレンズユニットSGタイプ(出力1500mw、星状神経節用)を用い星状神経節近傍を固定照射した。出力は70%、・2秒照射、4秒休止のサイクル照射を10分間照射した。さらにCタイプの出力は90%、4秒照射、1秒休止を頭部脱毛部へ4〜5カ所を合計20分間照射した。120日間に33回施行した。症状の変化は、治療開始38日目(14回目)で発毛現象が多数あり。56日目(21回目)には、連続した帯状の脱毛部分が減少し独立した円状に変化。84日目(28回目)では後頭部と側頭部の髪際の3カ所以外は全てに発毛した。94日目(31回目)には後頭部に一部を残し発毛が認められた。なお皮膚科にて継続して服薬(セファランチン錠、グリチロン錠、ユベラNソフトカプセルなど)と外用薬(フルメタローション、フロージン液など)などにて治療を受けていた。
【考察及び結語】
 多発性円形脱毛症にSGBが効果が大きいとの報告がある。SGBは脱毛症の末梢循環障害の改善、自律神経への作用などを期待している。SL照射の作用は、SGBに比較して弱く、その作用機序について不明があるが、末梢血管の血流量と交感神経への影響を与えることにより、発毛現象を促しているものと考えられる。本症例は皮膚科の治療に併用しながら、SL照射により治癒への機転を与えたと考える。
【キーワード】
 脱毛症、星状態神経節、近赤外線照射治療、発毛現象

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