鍼灸マ師側が全面敗訴

広島地裁
療養費支給申請代行めぐる訴訟
民法上の委任行為否定する判決

2002.8.10.

 療養費の支給申請の手続き代行をめぐり広島県保険鍼灸マッサージ師会の会員などが東京化粧品健康保険組合を相手に損害賠償を求めていた訴訟の判決が去る7月30日、広島地裁(山垣清正裁判長)で言い渡された。山垣裁判長は、原告らの請求をいずれも「理由がない」として棄却した。
 判決によると、原告の会員が広島県保険鍼灸マッサージ師会を経由して行った平成12年4月から7月施術分の療養費支給申請計4回に対し、被告は受領委任の協定を締結していない、患者本人の申請意思が確認できないなどの理由で申請書を返戻した。
 そこで原告は、療養費支給手続きおよび支給される給付金の受け取りにかかわる一切の行為を原告に委任する旨の患者の委任状と、施術費用全額の支払いを受けた上で「この度の治療費の授受の実態は、9月13日に成立させております」などが記載された書面を申請書に添付し、再度6月施術分の療養費支給を申請したが再び返戻された。
 原告側は、医師の同意書があり、患者は施術費用全額を施術者に支払っており、また、患者の委任を受けて申請手続きを代行したにすぎないので、申請の主体はあくまで患者本人であり、同申請は適法であると主張。被告が本件申請書を返戻した真の理由は、単に鍼灸施術者が支給申請手続きを代行し、鍼灸に対する健康保険適用を推進する鍼灸師の団体である広島県保険鍼灸マッサージ師会から申請がなされたことに対し感情的になったからにほかならず、返戻によって患者に不信の念を抱かれ鍼灸師としての信用を著しく傷つけられ精神的苦痛を被ったとして提訴した。
 山垣裁判長は、▽最初の申請があった際に求めた患者の回答書中の署名と委任状の署名の筆跡が一致しないため、患者本人の申請意思を認めることができない、▽施術費用全額が支払われていると判断することはできない、などとする被告側の主張を全面的に認め、返戻は被告の裁量の範囲内のもので違法ではないと判断した。
 同訴訟は、患者が施術費用を全額負担した上で、療養費の償還払いの手続きを施術者が代行することが違法になるのかを争ったものであった。しかし判決は、療養費支給申請書に不備があり疑義が生じたため、裁量権に基づき返戻にした被告の行為は違法でないというもので、手続き代行の是非については全く触れられていない。そのうえ、被告が返戻理由に挙げている2点については、患者が施術費用を全額支払い、署名押印をしたのは事実で、原告側は控訴するとしている。
 療養費の支給申請手続きの代行については厚生労働省はかねてから、実際に償還払いの取り扱いがなされていることの確認が困難であり受領委任払いが横行することを黙認する結果になりかねないとして、認めることに消極的な見解を示している。東京化粧品健康保険組合の行為も、厚労省の指導、見解を尊重しているだけにすぎないと受け取ることもできる。しかし、患者が施術者に委任すること自体は民法で保障されており、民法上確立された委任行為を否定することになる厚労省の指導に根本的な問題があるといえる。
 現在、千葉地裁で柔道整復師に認められている受領委任払いを鍼灸マッサージ師には認めないのは不当な差別だとして争われているが、この広島の訴訟も、鍼灸マッサージにかかわる療養費の扱いに大きな影響を与えるものと考えられ、今後の行方が注目される。

山崎正隆会長の談話
     (広島県保険鍼灸マッサージ師会)
 完敗。裁判を甘く見すぎていた。申請書などに不備があり、証拠として認められなかったようだ。しかし、疑義があったのなら、被告には確認をする義務があるはず。確認もせず裁量権だけで返戻するという、このような扱いがまかり通るのはおかしい。こちらの主張には一点の曇りもなく、断固控訴する。


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