昭和32年元旦日の出


あはき師ケアマネは累計4,655人に


 2005年2月17日
日・タイFTAにおけるタイ式マッサージ受け入れに反対する声明
                  日本理療科教員連盟
(兵庫県 吉田氏より)


2005年2月17日
日・タイFTAにおけるタイ式マッサージ受け入れに反対する声明
日本理療科教員連盟
 タイ国とのFTA(自由貿易協定)政府間交渉において、政府は2月12日、タイ式マッサージ師を受け入れる素案を示し、2月末に行われるタイ国との交渉に臨むことを表明した。
  これは、日・タイ2国間のFTA交渉の摩擦緩和のためであり、わが国内に受け入れの客観的必要性がないばかりか、この受け入れは、あん摩マッサージ指圧師免許制度の根幹を揺るがし、わが国においてあん摩マッサージ指圧業で生計をなす視覚障害者に甚大な影を落とすものである。
 日本理療科教員連盟は、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師はり師きゅう師養成教育に携わる教職員の専門団体として、これに反対し、日・タイ2国間協議における交渉項目から、タイ式マッサージ師の受け入れをはずすように強く求めるものである。

1 タイ国との交渉摩擦緩和に配慮した受け入れである
 看護師・介護士のように、供給不足により外国人労働者を受け入れるべき客観的必要性が、マッサージの場合にはない。平成14年度衛生行政報告例によれば、全国に、就業あん摩マッサージ指圧師は、9万7313人(人口10万人対比76.4人) 存在しており、たとえ供給不足が生じた場合においては、養成施設定員の増加等の措置を講ずることによりわが国内で十分対応することができるものである。
 タイ式マッサージ受け入れの背景には、日・タイ間のFTA交渉における摩擦緩和に利用された色彩が強い。日本経団連も昨年4月、少子高齢化などを理由に積極的な外国人受け入れを提言している。
 わが国の自動車や家電業界は、生産拠点の多くをASEANに配置し、地域全体で分業体制を構築している。これら地域の関税は総じて欧米に比べて高く、事業展開をする際に障害になる。ASEAN全体との関税を撤廃すれば、日本の国内総生産(GDP)は1兆円から2兆円増加し、20万人前後の雇用が創出されるとの試算もある。
 昨年11月バンコクにおいて開催された第5回日・タイFTA政府間交渉において、わが国は、自動車、鉄鋼などの関税撤廃、投資を保護するルールの整備、知的財産など幅広い分野で、タイ国に求めているが、タイ国が求める、コメや鶏肉、砂糖、でんぷんの関税撤廃については、我が国は国内農業への影響が大きいとして撤廃を拒否している。

2 単純労働から一転して専門的・技術的労働に変更
 政府は1999年、単純労働者の就労には慎重姿勢を保つ一方、専門的・技術的分野の労働者は積極的に受け入れる方針を閣議決定した。タイ国が求めるタイ料理料理人とタイ式マッサージ師については、日本側はこれが単純労働者にあたるとして拒否する姿勢を示していた。
 看護師・介護士受け入れについても、法務省は、対象が他の途上国にも広がれば単純労働者が流入し、治安維持上問題が出ると慎重姿勢であった。厚生労働省も当初、医療水準の低下につながると難色を示していたものであったが、フィリッピンFTAにおいては、以下のように厳しい受け入れ要件を付してこれを特別に認めたものである。
 今回政府が、タイ式マッサージ受け入れを決めたことは、これを専門的・技術的分野の労働者であると判断を変更したことに他ならないが、その理由や背景について何ら説明が伝わってこない。

3 受け入れ要件が明らかにされていない
 現在、タイ式マッサージ師に関しては、あん摩マッサージ指圧師免許を取得しなければならないが、政府素案による受け入れ要件は、疲労回復などリラクセーションを目的にした就労に限定し、日本にタイにちなんだ保養施設を建設し、施設内で雇用する方式に限って、受け入れるというものであり、先に合意したフィリッピン国とのFTAと比較して、受け入れ要件はあまりにもあいまいである。
 フィリッピン国とのFTAにおける、看護師・介護士の受け入れに関しては、不法就労を防ぐため国内資格の取得など厳しい条件(ア)フィリピン国内での資格要件 、フィリピン国内での実務経験、日本に入国後の日本語研修、日本国内での研修期間、国家試験の合格)、(イ)年度ごとの受け入れ枠が示されているが、タイ式マッサージについては、これらの基準が示されていない。タイ料理料理人に示された程度の要件さえ明らかにされていない。

〈参考〉
 ちなみに、フィリッピン看護師・介護士の受け入れについては、次の要件が示されている。
 看護師 → (ア)フィリピン国内での看護資格 + (イ)看護経験 + (ウ)日本に入国後は半年間の日本語研修 + (エ)2年半の研修期間 + (オ)国家試験に合格(現在でもフィリピン人が日本で看護師資格を取ることができるが、4年間の就労しか認められない。しかし今回の合意では就労期間3年の更新を可能にした 。) 
 介護福祉士 → (ア)フィリッピン国内での介護福祉士資格 + (イ)四年制大学の卒業又は看護大学の卒業 + (ウ)日本に入国後は半年間の日本語研修 + (エ) 二年間の養成施設の受講者又は三年間の実務経験 + (オ)国家試験合格者

4 あん摩マッサージ指圧師免許制度の崩壊に結びつく懸念
 あん摩マッサージ指圧師はり師きゅう師等に関する法律第1条は、医師以外の者で、あん摩、マッサージ若しくは指圧、はり又はきゅうを業とする者は、それぞれの免許を受けなければならないと規定している。
 昨年11月4日の参議院厚生労働委員会において、足立信也委員が、「足裏マッサージとか、ある無資格者が行っている行為がマッサージ業なのか、それともマッサージ業以外の医業類似行為なのか、どのように区別しているのか」と、政府見解を求めたのに対し、政府参考人・岩尾總一郎氏は、「もむとか押す、たたく、摩擦するという行為をやるわけですが、どの程度の力を加えるとか、それから置かれているその患者さんの状態にも違うかと思いますが、実は、このあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師に関する法律では、このあん摩マッサージ指圧業等の定義が置かれておりません。何が法律に規定されたあん摩マッサージ指圧業なのであるか、またそれ以外の医業類似行為なのかというのは、現在まではそれぞれ個々のケースに応じて、社会通念に照らして総合的に判断してきたところでございます。」と答弁している。
 政府のこの曖昧な態度が、今日の無免許マッサージの野放し状態をまねいているのだが、国家免許制度が存在しないタイ式マッサージを、国内法に関わらず安易に受け入れるのであれば、無免許マッサージに免罪符を与えることになり、免許制度の崩壊にもつながりかねない。無免許者による医療事故を多発させるばかりか、適当な医療を受ける機会を遅延させ、あるいは、誇大広告による被害を多発させる等、国民衛生 ・生活に甚大な被害を与えかねない。

5 わが国の視覚障害者の就労実態に無関心
 今回の受け入れは、余りにも唐突であり、わが国における視覚障害者の就労実態の特殊性について、関心が払われていない。
 視覚障害者の就業率は、その就労機会が狭められているため23%に低迷しているが、唯一、あん摩マッサージ指圧はりきゅう業がこの就業率を支えている。常用労働視覚障害者の雇用率の第1位もあん摩マッサージ指圧はりきゅう業による保健医療従事者である。
 視覚障害者は、一方では無免許マッサージ・類似行為業者の野放しによって、一方では、はり師きゅう師の養成増によって過当競争にさらされているが、これ以上の外国人マッサージの受け入れは、死活問題であり、到底受け入れを容認することはできない。
 今年は、1911年にわが国最初の中央法令である「按摩術営業取締規則」等が制定されて94年になる。同年、これらの学校等の指定標準が定められたことにより、盲学校の教育年限・学科目・設備・教員等の組織整備が本格的に始まった。以来、盲学校等における視覚障害者のためのあん摩マッサージ指圧師養成教育はめざましい発展をとげ、多くの視覚障害者を世に送り出してきたのである。
 日本理療科教職員連盟は、教職員の専門団体として、日・タイ2国間協議における交渉項目から、タイ式マッサージ師の受け入れをはずすよう重ねて求めるものである。関係者の創意と熱意ある働きかけにより、政府がタイ式マッサージの受け入れを撤回されるよう呼びかけるものである。

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