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三成「幸村はかわいいなあ、左近」
左近「俺は、それに同意していいんですかね?」
三成「駄目だ」
左近「じゃあ、否定しますよ?」
三成「なにぃ!!」
左近「鉄扇を振りかぶるのはやめてください」
三成「俺がかわいいと思っていれば良いのだ
   お前は同意も否定もせずに聞け、とりあえず四刻半ぐらい」
左近「何の拷問ですか」
三成「兼続がここのところ顔を見せんのだ……」
左近「まあ軍師に任命されましたからね、そうそう暇はないでしょう」
三成「一晩中話し込むことも、よくあったと言うのにな……もちろん幸村のことで」
左近「そんな忍耐の修行はいりません、間に合ってます
   ……そもそもあの人、人の話を聞いてるんですかね」
三成「聞いてるに決まってるだろう?」
左近「そ〜ですかね〜……」
三成「この前など、感動のあまり涙まで流していたというのに」
左近「……眠かったんじゃないかな……」
三成「まあ、とりあえず今朝幸村と会ったときのことだがな……」
左近「殿もたまに人の話を聞かないですよね……あ、蛇味線弾きながら聞いててもいいですかね?」
三成「!!!?」


結局我慢大会









「これよりよろしく、だ。ってことで、これを収めてくんねぇ」

そういって、口調とは異なり、存外丁寧に頭を下げた前田慶次
その目の前、やたらに大きな籠に乗せられて
でん、と置かれた 大根
丈はそれぞれまちまちだが、皆丸々ふとって白さもまぶしく瑞々しい
大根の山

取り出された瞬間、しん と静まって
無言で見つめる、武将一同
不動で見入る、上杉景勝(今回の大名)
そして、ゆっくりと静かに頭を上げる慶次
「これでお見知りおきを、ってやつだ、味が……」




「すばらしい!!」




静寂に包まれていたゆえに、その声は一層大きく響いて


「とくにこの葉がすばらしい!!」
きらきら目を輝かせて直江兼続(先ごろ軍師に就任)
「これで今日の味噌汁には久々に具が入りますな!!」
と、高らかに響く声


「半分は漬物にしたいですな!」
「まぶしくてっ!まぶしくてみられませぬ!」
「やはり煮物でしょうか!」
「透き通るように煮込みましょうな!」
「(……おろして飯にのせてみたいんだが……)」

妙に盛り上がる家臣団、と大名

「なるほどっ!! 
 つまり、なんにしてもおいしい万能な男!という あっぴぃ〜るだな!!」
勝手に納得する兼続、えらく楽しそうだ。
「え?いや、噛めばかむほど味が……」
珍しく戸惑う慶次に、一斉に向けられる視線
「なんと大それた男だ!でも、これはご丁寧にっ」
「新参者のくせに、何様だ!でも、ありがとうっ」
嫉まれてるのか感謝されてるのか




「一体なんだい、この反応は……」
盛り上がる家臣一同、少し離れていた景勝が口を開いた。
「すまんな……」

「毎度毎度、徳政令を提案してくるやつが居るのだ」
「んで、毎回毎回、採用するわけだね」
「……しないでか」

ふ、と口調を変えて、言い切られてはしょうがない