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幸村「左近殿、その……これを」
左近「ん? なんですか」
幸村「私の……気持ちです」
三成「!!」
左近「は……(イタイイタイ、視線が痛い)」
幸村「父の日のお祝いです!」
左近「ち……」
三成「ぷっ!」
左近「父って……幸村……」
幸村「え? でも実際の父親でなくてもいい、と兼続殿が言ってましたし
それに……父上には、どうも会えそうにありませんし……
それで、その……代わり、というのも失礼かも知れませんが……」
左近「いえ……それはいいんですが……」
三成「くくく……ふ、良かったではないか!
では、俺は母の日の祝いでもしてやろう、少し遅いが」
左近「今度は、母親ですかい……
せめて兄の日があれば、よかったんですがね」
三成「それはずうずうしいぞ、左近
史実の年齢差なら、幸村どころか余裕で俺も産めるくせに」
左近「…………いや、産むのは無茶ですよ」
三成「…………わかっとるわい」
幸村「?」
左近「あ〜……いえいえ、これ、ありがとうございますね」
三成「中身は何だ?」
幸村「美肌の薬です、小助に作ってもらったものですが、肌荒れにもいいそうですよ」
三成「美肌ぁ!?」
幸村「毎年父上にお贈りしているものと一緒です」
左近「……あなたのお父上は、毎年何してるんですか……」
2007年6月
季節ネタ、といっていいのか
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ばたばたばた
兼続「おお! おはようだ、三成〜!!」
三成「すまん、急いでいる (パチン) 」
兼続「なんだ? 扇を閉じたりして」
三成「左近を呼んだのだ。じゃあな (すたすた) 」
兼続「ふ〜ん?」
左近「も〜、人を何だと思ってるんですか」
兼続「ほう、本当に来たな……召喚術か?」
左近「何言ってるんですか、すぐ後に来てたんですよ」
兼続「もしくは下僕のさがか……」
左近「ちっ、違いますよ!! 普通に後ろを歩いてただけですって!!」
微妙に動揺
兼続「まあ、いいか! では……」
左近「あれ? 帰ってっちゃった?」
ばたばたばた
兼続「ああ! おはようだ!! 左近〜!」
左近「…………はあ、おはようございます」
兼続「では、義を行いにいくぞ!!」
左近「であ!?」
兼続「三成の代わりだ、付き合え。左近の義、見せてもらうぞ!」
左近「勘弁してください!!」
兼続「具体的には町を回って不義を成敗し義を広めていく」
左近「全然、具体的でないですよ」
兼続「今日は、行きつけのだんご屋で新作甘味が発売されるのだ!
阿国殿が来ていると、慶次が話していたので、それも覗いてみようと思う
あとは……そうだな
新作甘味でも土産に幸村のところへでも行くか!」
さっさと歩き出す。左近を掴んで。
結構な力だ。
兼続「その頃なら、三成も何とか幸村と2人っきりになれているだろうしな!!」
左近「…………あんまり邪魔しないでやってくださいよ…………」
引き摺られながら、左近は、そっと、三成のことを思う。
左近(なんだかんだで、遊んでたんですね……)
兼続「義だからな!!」
左近「うわ!?」
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三成「は〜……疲れた、イライラする。
当分人の声は聞きたくない、左近人払いしておけ」
左近「はいはい、え〜っと(部屋の外に、ぺた)」
三成「ん、何だそれは?」
左近「はっはっはっ、じゃ、左近はどっかで呑んできますんで」
三成「なんだあの笑いは……(イライラ)
第一、何と書いたんだ、あいつは(イライライラ)」
『注意 殿がいます』
三成「さ〜こ〜ん〜!! どういう意味だごらぁ!!!」
どかん と効果音ではなく実際に巻き起こる爆発音
どかん どかん
左近「というわけで、音が静まった頃に行ってくださいね」
幸村「はあ……」
兼続「なるほど!! 主思いだな、左近!」
左近「え、ええと……(この人まで来ると、予測がつかなくなるんですが……)」
三成「うらぁ!!」
ど〜ん、と景気よく。
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「幸村! 今晩は予定はあるか?」
「あっ……すいません、ちょっと」
「む?……フッ、そうか!読めたぞ」
「は? 何をです?」
「心配するな、私には隠すことはない」
「だから何を?」
「三成のやつもやるではないか
仕方がない、三人で飲むのは明日にするか!」
「え? 三成殿も何かあるのですか?」
「……あれ?」
「……と、いうことがあってな」
「そんな話をされてもな……どう反応しろというのだ」
三成は顔を引きつらせながら、二つの碗をはさんだ先を睨む。
「そもそも変な勘ぐりをしすぎなのだ、兼続は」
「そうか?さすがに、いつまで経っても何もないということは……と思っただけなのだが」
どぼどぼと、碗へと無遠慮にそそぎつつ、首を傾げる兼続
「ぐっ……だからなんでそんな話をする!!
貴様はなにが言いたいのだ!」
「ん? 言いたいことならもういったぞ?」
「何っ!? って、ああそうか!! そういう奴だよな!!」
ぎりぎりと頭を抱えてうめく三成
その様子を眺めつつ、兼続は片方の碗を取り上げて口元へと運んだ。
「まあ、考えるのはお前だな」
「ふん……まあいい、分かっている、言われずともな」
「そうか、随分長いこと頭を抱えていたようだが」
ぎっ とまたも睨みつける三成。今度は兼続の頭を締め付けそうなほどだ。
「……まあ、ゆっくりでもいいと思うぞ」
「ふん!」
「おっと……そういえば結局幸村の用事は何だったのだろうな?」
……あまり懲りてない兼続
「!!」
その言葉に何事を思いついたのか三成は蒼い顔で立ち上がり
「左近! 左近はいるか!!
この近辺の人間の今晩の予定を調べて来い!!
左近〜〜!!」
部屋の外へ向かって喚いていたが、突然ぴたりと立ち止まり。
「いないのか、左近!!
はっ! まさか左近、貴様……!!」
「……勘ぐりすぎだな、三成」
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幸村「ふあぁ〜」
三成「でかい口だな」
幸村「うわあ!?す、すす、すいません!き、気が緩んでました!」
三成「かまわんよ、俺しかいないしな」
幸村「いや、でも……お恥ずかしい」
三成「今日はいい陽気だからな……それに……むしろ気を許しているということだろう?」
幸村「はあ……」
三成「気にするな」
三成「あの、嬉しそうですよね?」
三成「ま、まあ、な」
幸村「…………」
三成「言っとくが……笑ったわけじゃないんだからな」
幸村「わかってますよ」
三成「なら、いい……」
兼続「おおっ!! 三成、幸村っ、こんな所に居たか!!」
三成「ちっ」
幸村「ああ、兼続殿は、陽気もなにも関係なく、いつも元気ですなあ」
三成「……いいところで」
幸村「でも、嬉しそうですよ?」
三成「幸村……それは気のせいだ!」
幸村「……わかってますよ?」
三成「気のせいだというに!」