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ひゅんひゅんひゅんひゅん
兼続「う〜ん……」
三成「お〜い兼続……って何事だ!?」
兼続「ん、危ないぞ」
三成「見れば分かる、何でいきなり護符が飛び交ってるのだ」
兼続「探し物だ」
三成「は?」
ひゅんひゅんひゅんひゅん
兼続「いや手紙がな、置いておいた護符の山に紛れたようで……
手早く探そうと思ったのだ」
三成「全部飛んでるようだぞ」
兼続「そ〜なんだよな、おかしいな?」
三成「おかしいなって……しかし、こんだけ飛び交ってると、なんというか壮観だな。
この中にその手紙とやらも混じってるのか」
兼続「そのはずだ。お前から貰った手紙なんだが……」
三成「……俺の、だ……と?」
兼続「ああ、この前の手紙だが?」
三成「なんだとぉ!?こ、こら!すぐ止めろ!(ばたばた)」
兼続「しかし、延々幸村のことが書かれているだけで、何が言いたかったのかよく分からなかったのだが……落ち着いてから読み返そうと思って置いといたのが、不味かったな」
三成「だ、だからって、飛ばすな!!どれだ!?どれなのだ!?」
ばたばた ばたばた と、突入
兼続「だから、危ないぞ?」
兼続の注意も、最早、三成は聞いてはいない
兼続「しかし、手紙も護符も、全部手ごたえが同じなんだが……?
そうか!!」
ぽん、と手のひらを打って
兼続「手紙にも義!と愛!が溢れていたのだな!!さすがは三成!!!」
三成「くっ!とりゃ!ま、負けるかあ!!(ばたばた)」
ひゅんひゅんひゅんひゅん
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兼続「おお!美味そうなみかんだな!」
幸村「もらったんですよ、おひとつどうですか?」
三成「幸村!お前は何でも人からもらいすぎだ。特に食べ物」
幸村「そ、そうですか?」
三成「そうだ。少しは遠慮してこい!断って来い!!」
幸村「すいません……ですが……」
兼続「気にするな幸村、三成は心配しているだけだ。色々な意味で」
幸村「は、はあ……色々?」
兼続「うむ、まあ一番には『自分があげたかったのに』だろうな」
幸村「え……」
三成「わあ!?ズ、ズズ、ズイブンでかいみかんだなあ!?」
兼続「……三成……うんまあ、そうあわてるな」
三成「な、お前のせい……じゃない、だれがあわててなぞ!!」
幸村「三成殿……実は、みかん余ってたんですか?」
三成「………………」
兼続「さて、みかんがあるなら、こたつを出してもらってこなければな!!」
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幸村「どうしてもですか……兼続殿」
兼続「駄目だ、幸村。あきらめろ」
三成「一体なんだ?お前らが喧嘩とは珍しいな」
兼続「三成……別に喧嘩というわけではないんだが」
幸村「兼続殿、ひとつだけでいいですから
お願いですからっ!!」
兼続「しかしだなあ」
三成「『お願い』……(ほにゃ)」
左近「先ほどから何の騒ぎです?そして殿、なんですその顔」
三成「顔?顔がどうかしたか?ん?」
左近「いいえ〜」
兼続「顔はともかく、不義の気配はしていたな
あと別に何かあるわけでも喧嘩でもない、幸村がごねているだけだ」
三成「幸村が?めずらしいな」
幸村「う……ですが本当に素晴らしいので、つい……
やっぱりだめなんですか?一つだけでも?」
兼続「すまん、私のものではないのでな。勝手にあげられん」
三成「何をだ?」
兼続「これだ、手乗り『甲斐の虎』人形、六種」
三成「………………」
左近「ははあ、よく出来てますな」
兼続「うむ、昔越後で作られていたものだ」
三成「…………なんで?」
幸村「甲斐ではなかなか手に入らなかったんですよね……ずっと欲しかったんですが」
三成「…………だから、なんで?」
兼続「ともかくこれは見るだけだ、我慢してくれ幸村」
幸村「……はい……(しゅん)」
三成「幸村……
うん、なんだ、あれでなければ駄目なのか?」
幸村「え?」
三成「いや……あれは無理だが。信玄殿の人形なら、ないこともない」
左近「ん?」
幸村「えっ!本当ですか?」
三成「よければ、贈らせてくれ」
幸村「よければって……いいんですか!?」
左近「んんっ!?なんか圧迫感が……」
兼続「うん?どうした、左近」
幸村「で、でも……いえ……そのっ、嬉しいです!!」
三成「大したことではない、喜んでくれるなら、いい」
笑顔を幸村に向けたまま、ギラリ、目だけが光る
三成「(左近、作れ!!!!)」
左近「(えええええ〜〜!?)」
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慶次「ただいま〜っと、ありゃ? 随分騒がしいな」
兼続「ああ、すぐに帰らねばならなくなったのだ、ゆっくり観光でもしたかったのだが……」
慶次「観光ねえ……金ぴかの大仏さんが野ざらしになってるのは、なかなか面白かったけどな」
兼続「ずるいぞ慶次。」
慶次「まあまあ、土産やるから」
兼続「土産?」
慶次「御守りだがね」
兼続「御守りだと……お前が?買ったのか?」
慶次「皆の分もだけどな。
兼続にはこれ、『家内安全』の御守りだ。ま、勝手に意味を広げてるけどな」
兼続「そうか……ありがとう」
慶次「どういたしまして
で、連中にはこれ、三成と幸村に『縁結び』、でもって左近殿に『安産祈願』の御守りを……」
兼続「何をやってるんだ、換えてもらって来い」
慶次「はっは、冗談だって、でも柄が可愛らしいだろう?この『安産』の袋……」
兼続「ん?そっちじゃないぞ、それはいい」
慶次「いいのか」
兼続「『縁結び』のほうだ
あの2人の間にはすでに縁が結ばれているよ、今更願うまでもないだろう」
慶次「ははあ、そうなのかい」
兼続「しからば、今三成に必要なのは『大願成就』だろう」
慶次「ほ〜、なるほどね」
兼続「んでもって幸村には『厄除け』を送るのだ!御利益の強そうなのをな!」
慶次「厄って……単純に応援してやるわけでもないんだよなぁ、あんたも……」
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兼続「ふう……」
三成「どうした、らしくもない姿だな」
兼続「ああ……すまんな……」
三成「(謝った!?)本当に一体なにがあった?」
兼続「別になんでもない、たいしたことではないのだ……放って置いてくれ」
三成「兼続っ!どうしたのだ、それに先ほどから全く義と口にしないではないか!!」
兼続「何……?」
三成「そうだ義だ!義!いつも口にしてるではないか、うるさいぐらい、義!と」
兼続「いつも……」
三成「お前が教えてくれたのではないか!」
兼続「そう……か?」
三成「そうだ!義のため、義ゆえに、義とともにとな……
今のそんなお前の姿は見ていられぬ!」
兼続「三成」
三成「義といってくれ!義と!! 義! 義!」
兼続「もう一声」
三成「義!!!!……ん?」
左近「なに叫んでるんです?殿……」(遠巻き)
幸村「三成殿!!」(感激)
三成「か〜ね〜つ〜ぐ〜!!」
兼続「実は眠かっただけなのだが」
三成「なんだとぉ!?」
兼続「義! だな!!」
三成「喧しい!!」
7
兼続「おわ!雨だ……しまったな」
幸村「ああ、やっぱり」
兼続「ん、何がやっぱりなんだ?」
幸村「え?だって雨で濡れてしまうと、洗うのが大変そうですしね、その服」
兼続「いや、そのことではないんだが……」
幸村「あ、あれ?そうなんですか?」
兼続「外で人と会う予定だったのだが、場所を変えねばならないかと思ってな」
幸村「あ、ああ、そうですね、そういうことですかあ……」
兼続「服は他の者のほうが大変そうに思えるな……三成とか三成とか三成とか」
幸村「はあ、そうですね……兼続殿は心配ないんですか?」
兼続「うむ、実は完全防水!護符まで濡れても大丈夫!なのだ!!」
幸村「凄いですね!!どうやってるのかは敢えて聞きませんが」
兼続「そうだろう、そうだろう!!別に聞いてもいいんだぞ?」
幸村「またにします。それより相手の方に急いで知らせた方がよいのでは?」
兼続「しかし、私は呼び出されたといった方がよくてな、こっちから連絡取れるかどうか……」
幸村「はあ、では向こうの連絡を待つのですか?」
兼続「実は相手は三成なのだ、雨の中でぼんやり待ってたりということはなかろう」
幸村「そうですね、服も心配ですしね」
兼続「いや、服は……。まあ、待ってればいいか」
三成「兼続、ここにいたか」
兼続「もう来たのか」
幸村「すぐでしたね」
三成「幸村!!?」
幸村「はい?」
三成「いっしょにいたのか……」
幸村「あ……ええと……すいません」
三成「あっ!!いいや!!いかん事はない、あやまるな」
兼続「ん?だが相談があったのだろう?」
幸村「相談……?」
兼続「うむ、じつはな……」
三成「兼続!!そ、そうだ策だ!政の策について意見を聞こうと思ったのだ!」
兼続「策か……まあ、策だなあ」
三成「兼続!!!!」
幸村「そうですか……?
まあ、政のことではお二方の話に口を出すなど出来そうにありませんが……三成殿」
三成「あ、ああ」
幸村「雨の中を来たのでしょう、濡れてますよ。
ちょっと失礼します」
布を取り出して、そっと屈みこんだ
三成「む……す、すまん……」
幸村「いえ、濡れてしみになっては大変ですから」
真っ赤になった三成の顔
屈んでいる幸村の目には映らなかったけれど
兼続「……幸村、なんであんなに服の心配するんだ……?」