家康「暑いぃぃ、こ、こりゃもう耐えられん!!」
正信「まあ、そりゃ夏ですから」
家康「じゃあ夏止めてくれ〜〜あ〜ついぃぃ〜〜」
正信「止めてくれって……ああ、殿……おいたわしや」


よよ、と目頭を押さえる正信
ぱちん、と指を鳴らす


正信「半蔵。例のものを」
半蔵「……承知……」


ぽてっ、と落ちてきた黒装束の半蔵がずずい、と両腕に持った器を差し伸べる。


正信「氷ですぞ、殿っ。あっ、いかん」
家康「駄目」
正信「駄目って……ああ、とうとう目がうつろに」
半蔵「……困……」
正信「いや、困ることは無い」
半蔵「…………」
正信「そんな目で見てもだめだ、ハンゾ」
半蔵「……やはちー……」
正信「ええい! ハンゾ、そなたの忠誠はそんなものなのか!?
   わしは、わしはそなたなら、と……」


くうぅ、と泣きながら、片手を、くい と傾ける。


半蔵「……御免……」


くい


がちゃ
家康「がだっ!? つめたぁ!!」







正信「殿、ご報告が」
家康「ん? 何だ深刻な顔をして」
正信「半蔵から、先ほど急にちょっとばかし深刻な事情が発生したというか発見したというかな報告がありまして」
家康「なんだ一体、簡潔に話せ」
正信「まあ、城のちょっとばかし高いところに蜂の巣ができたのですが、
  あ、ここ閉めてもよいですか?」
家康「うお!? こ、ここか? この外なのか」
正信「いいえ、もうちょっと上です」
家康「ふう……そうか、では見れぬのか」
正信「見たいんですか……? まあ、見つけた当人が駆除するそうですから」
家康「なんと、半蔵自らがか!?」
正信「ええ、それで少し時間がかかるそうなので、
   今日は別のものが護衛につくことを許してほしい、とのこと」
家康「ふむ、まあ半蔵が信頼するものならば、別段かまわないが」
正信「風魔小太郎どのです」
家康「おわ!?って、ええ〜?」
正信「小太郎殿も、『今はいろいろ厄介になっているし、おっけ〜おっけ〜かまわないっすよ』
   とのことです」
家康「ええ!? いやそれ本物の小太郎どの!?」
正信「むろん、半蔵も保証しております」
家康「ええ〜!?」
正信「まあ、交渉の際、実際には2人とも黙りこくったままだったので
   わしが、老婆心ながら間に入って通訳してきましたが」
家康「ええ〜…………」







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小次郎「おじいさん、おじいさんとあの人って『水魚の交わり』だってさ」
正信「おお! わしと殿のつーかーぶり、見せてくれよう!!」
   まだ会わす事は出来んが、隣の部屋でうきうきと聞き耳を立てるがよい」
小次郎「めんどくさいね」





座したまま黙していた徳川家康。身体のゆれが止まるのを待ち、じっくりと腰を落ち着かせる。
おもむろに、口を開いた。

家康「正信よ……」
正信「はっ」

額を床につけたまま、待ち、そしてゆっくりと首を上げる。


家康「あれは……いかがした」
正信「それで……ございますな」

すう、と眼が細められ、互いに視線を交し合う。


正信「あれは……それですな」
家康「そうか、それがあれか」
うむうむ、と二人頷きあう。


家康「あれは、これでどうだ?」
正信「何と!! それがなにでこれとは!!」
家康「だってあれはあれじゃん〜」
正信「それはそれですな〜これは殿! 流石はあれのどれですな〜〜!」
家康「どれとな〜〜これは一本とられたわい〜〜このあれめ〜!」


うははははは


半蔵「……鬱……」
小次郎「かわいそうだね……影って、思うざま突っ込めないなんて
    ぼくが斬ってあげるよ」
半蔵「……止……」







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家康「正信! 正信はどうした!!」
正信「はい、ただ今ここに」
家康「おお、一体どうしたのだ、今日は顔を見せるのがおそ……」


くる、と振り向けば、目に入る顔は脳裏に思い浮かべていたものとは大きく違っていた。
まるで目の前に迫りくるかのような白い。白ジジイ。
塗りたくってあった。何を? 白粉を。
白い上に頬に赤い丸。赤い紅の唇。
視界いっぱいに広がって来る恐怖。幻覚だ、そんなばかな。というかナニアレ。
我が腹心よ、我が理性よ。
一体ナニアレ。


家康「うぃぎゃ〜〜〜〜〜〜〜!!!!」


半蔵「殿!」
正信「ん?」
半蔵「!!!!」

ひゅ、と現れ、ひゅ、と消え。

家康「わ、わしを置いていくな〜!!」
正信「失礼な話ですな……まったく
   殿、殿、深呼吸ですぞ、はい吸って〜」
家康「す? すい〜〜すいい〜」
正信「吐いて〜」
家康「っは〜〜は〜、は〜、ちょっと慣れた。耐えた。やるよわし。
   正信!! いったい何事だ、その顔は!!」
正信「先ほどは凄い声でしたな。ということはやっぱり、この顔おかしかったのですな」
家康「な、なんだ、おかしいということは分かっているのか。
   良かったお前が正気で、本当に! 良かった……!」
正信「鏡を見る時間がなかったもので、来るのが遅れてすいませぬ」
家康「あ、ああ……もういいのだよ、何かもう……そうやって平静に答えられても
   なんだかこの世のことはどうでもよくなるような視覚効果だな……」
正信「しっかりしてください、殿。泰平の世を築くまでどんなことでも耐え抜くのでありましょう」
家康「こんなことを耐える予定ではなかったのだが」
正信「これを施した者は『結構綺麗にできたよ〜』といってたんですがの」
家康「あ、ああ、お前の連れてきたあの若い剣士か。
   お前、意外と気に入っているようだが……『正信おじいさん』とか呼ばれて
   孫でも出来たような気になってるのか?」
正信「物騒な孫をもつとおじいちゃんも大変ですぞ
   ではなくて、会ってみると、わりに話が合うものでして」
家康「そ、そうか。なにを話してるのか、聞きたいような聞きたくないような……」
正信「別に大した話はしてませんが……っと」

ばき

家康「うわっわわわ、ひ、ひびが、顔にひびが」
正信「落ち着いてください殿。白粉が乾いただけで顔に入ったわけではありませぬぞ」
家康「わかっておるわい!! わかっておるが……」


目の前に迫る恐怖の再来。眼が離せない。
び、び、と静かな音が途切れることなく続く。


しゅ、ばちゃ


正信「熱ゃー!?」
家康「は、半蔵!!」
半蔵「救援」
家康「おお! 逃げたわけではなかったのだな……疑ってすまぬ」
半蔵「退治」
正信「た、退治とはなんだ!! ハンゾ、ぶ」
半蔵「必殺、雑巾乱舞!!」
正信「いだだ! ぶ、分身までか、いだ!!」

半蔵「滅」







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家康「うむむむむむむ」
正信「おや? 悩み事ですかな殿」
家康「正信か……そうだ! お前の知恵を借りたい」
正信「おやおや」
家康「城ってどうすれば燃やされないかのう?」
正信「あ〜…………まあ、エンパでもおろちでも、炎上しほうだいですからなあ」
家康「火計火計って、ひとん家でやらんで欲しいのだが」
正信「自分ちではあまりやらんでしょうなあ
   城って軍事拠点でもありますし……
   防災訓練でもやりますかな?」
家康「いや……もうやってるようなものだし……」
正信「火災保険でもかけますかな」
家康「え!? 戦国乱世に保険業者が!?」
正信「まあ、掛け金が城二つ建つぐらいにはかかりましょうが」
家康「それじゃあ意味がない、って城二つ?」
正信「で、もし炎上してしまったら、保険がおりて城を再建する、と」
家康「城なんで二つ分?」
正信「しかし、そもそも火災が起きないよう考えるのが、一番大事ですぞ
   はっ! やはり、泰平の世ですな!! 殿」
家康「いや、城もう一つ分は……?」







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正信「殿、手紙ですか。誰からですかな?」
家康「む……はあ〜……」
正信「む? 愛しい何方かからの恋文
   ……というわけではなさそうですな、その表情だと」
家康「直江殿からだ」
正信「何ですとぉ!?」
家康「いや、あの……えっらい無礼な手紙が届いたであろう?」
正信「ああ、そういえばエンパで……」
家康「格好つけて『手紙の書き方を教えてしんぜよう』とか返したら、
   本気にされちゃったみたいで……ど、どうしようか?」
正信「あの方も、大概素直ですなあ……はっ!!」

ばしーん と叩き飛ばされる手紙

家康「あだ!! なにすん!?」
正信「殿! 大丈夫ですかな!?」
家康「お前のせいで手が腫れた」
正信「ふぃ〜〜無事なようですな、間に合ってよかった」
家康「いや、痛い。この痛み、耐えんから……あやまれ」
正信「あのまま読み続けていたら、殿が……
   殿までが『義』とか叫びだすところでしたぞ!」
家康「謝らん気だな」
正信「殿……わしは殿のことを心配してですな」
家康「手紙読んだぐらいでど〜にかなるわけないだろう
   第一単なる暑中見舞いだったぞ?」
正信「では『義』と書いてなかったんですかな」
家康「書いてあったな」
正信「書いてあったんじゃないですか」
家康「……(なんで勝ち誇った顔を)」




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