家康「ふむ……拍手をいただいたようだの」
忠勝「ご油断召されるな。
   ここは西軍めいんに扱うさいとのようですぞ
   ゆうなれば敵陣でござる」
家康「敵陣なのか??
   とはいえ応援していただくのはありがたいこと
   感謝の礼をしたいところだが
   ならば、よろこんでいただけるものかの……」
稲姫「大丈夫です!それに崇伝殿に頼んで
   素晴らしいキャッチコピーをつけてもらいました!」
家康「キャッチコピー?」
稲姫「上の『家康とゆかいな仲間たち』です!」
家康「……あやつ……」
稲姫「殿はすばらしいです!」
家康「あ、ああ……うむ、ありがとう……」
稲姫「三河武士は皆ゆかいです!」
忠勝「ゆかいなのか?」
稲姫「アットホームでゆかいな職場!です!!」
半蔵「……滅……」
家康「………………」


稲姫「拍手、本当に力になります!」
半蔵「……感謝……」







家康「いただきます」
正信「殿、相変わらず粗食ですなあ」
家康「これで十分なのだ放っておけ
   食べてしまえば終わるものに無駄に金をかけてどうするのだ
   それに、粗食こそ長生きの秘訣よ」
正信「ははあ……しかし生きる楽しみ、という考えもありますぞ?」
家康「生きる楽しみならばあるぞ、
   長生きをすることだ」
正信「まあ……殿が満足なら別にかまいませぬが」


半蔵「……殿……我、帰還」
正信「おお!ハンゾ!!しかし一体どこへ行っていたのだ?」
家康「ハンゾ?」
半蔵「……はずれ……」
正信「は、はずれ?何じゃそれは!?」
半蔵「……でも当り……」
家康「おお!!幻といわれる薬草に木の根!」
正信「伊賀の棟梁を使って山菜摘み? もったいない」
半蔵「造反工作のついでに」
正信「ああ……そっちがはずれか……」
半蔵「……やはちー……」
家康「やはちー?」
正信「失態だな、ハンゾ……まあ、わしは知らんがな、何もせんぞ」
半蔵「……不要、己が力で挽回するのみ……」

2人の鋭い視線が、山菜の籠の上でぶつかり合う

家康「い、いや……お前たち、仲良いの……?」







半蔵「(……影は影……ん?)」


正信「お呼びですか、殿
   誰か失脚させるんですか?
   陥れるんですか?
   張り切って騙しましょうか?」
家康「正信、わしの事なんだと思ってるん?」
正信「しかし、それ以外のことではわしゃ役に立ちませんぞ?全く」
家康「自分で言い切らなくても……兎も角、今回は違うぞ」
正信「ではなんです?歌でも歌いましょうか?」
家康「歌……?
   い、いやちょっと相談事というか」
正信「お悩み相談?また難しいことを」
家康「そうは言うが、おぬし以外には相談しにくいというか……
   家庭のことというか……」
正信「ははあ、要はただの愚痴の聞き役ですな」
家康「子育って難しいのお……」
正信「殿は子沢山ですからの
   戦国事典でさらっと『家康 十男』とか書かれてて吃驚しましたぞ」
家康「ん?何かおかしいか?」
正信「…………
   まあ、男親と息子というのは色々ある物かも知れませんが」
家康「そうかの……他所のうちでもそうかのぉ……」
正信「そうですなあ
   うちも長男とはここ何年かまともに口をきいてませんし
   次男も随分前にでてったきり音信不通の消息不明ですぞ」
家康「な……」

がーん、と衝撃を受ける徳川家康

家康「……なんだそっかあ〜他所もそんなもんかあ〜」
正信「そうですぞ〜そんなもんですぞ〜」

ふは ふはは うふはははははは

どこか乾いた笑いが辺りに響く

半蔵「……(はあ)……」








家康「全てはこの手で泰平の世を築かんがため
   ……とはいえ結構疲れるものよ」
  首筋 ごきごき
正信「ほおぉ……殿にも首ってあったんですなあ……」
家康「しみじみ言うな!!」
  どす (ボディプレス)
正信「ぐば!?」


正信「ふう、年寄りは大切にしていただきたいですな」
家康「すまん、でも正直ちょっとすっとした」
正信「……何か考えないと、こっちの身がもちませんな……
   鍼とか灸とか、お酒に逃げるとか」
家康「酒は却下、針灸はやってる。ただのう精神的につらいというか
   イライラするというか」
正信「何もしないというのもありますが」
家康「はい?」
正信「目を閉じて、日々の雑音を捨てただ静かに、静かに……」
家康「(……そのまま寝てんじゃないだろうな)」
正信「……ただ、今耳に届く音だけを……少しずつ少しずつ……」
家康「音を……」

半蔵「(くしゅん)」

家康「(……今日は寒いしの……聞かなかったことに……ん)」

   じゃらっちゃっちゃ〜らっ

家康「この音楽は……」
正信「では失敬!(ずざっ、と退場)」
家康「おわ!?す、素早っ」

忠勝「殿、失礼します。ん?どうされました?」
家康「忠勝……そうか、いやはや……」
忠勝「?」
家康「……鈴みたいなもんか……?」










家康「猛将伝では結局、われら徳川勢や、東軍の武将は増えんかったのだ
   ……これもまた、耐えねばならんか」
正信「一人いたようですが?」
家康「厳密には東軍でないし……それに、わし、あの方微妙に苦手……」
正信「向こうは、殿のこと気に入って、あの方なりに可愛がってるようですが」
家康「……蹴鞠も、苦手なのだ」
正信「ああ! 脚の長さ、がで!!」
家康「お前も人のこと言えたもんではなかろ〜が!!」
正信「いだだ、筒槍でちくちくは止めて下され、わしの華奢な脚を」
家康「華奢とは、よう言うたの」


家康「しかし、四天王もう一人ぐらい、いてもいいのにのう」
正信「一勢力に四人無双武将がいるのは、多いほうだと思いますが」
家康「無双武将とまではいわんでも、もっと見せ場があってもいいと思わんか?」
正信「出てるだけでも十分ですな、ご子息も活躍されてますし」
家康「何? うちがもっと目立てなくてもいいというのか、お前は?」
正信「殿こそ、なんでそんなに四天王にこだわるんですかの?」

家康「…………」
正信「…………」

家康「お前まさか」
正信「あーあーあ!! そーうですぞ!!」


殿の馬鹿〜〜!!(逃亡)


家康「……なにあれ」
半蔵「……殿……」
家康「半蔵……わしは正信は正信として、いてくれればよいと思っておるよ」
半蔵「(ふるふる)」
家康「は? では何じゃい?」
半蔵「……密書……」
家康「ん? なになに『次回作で無双武将の平均自称年齢を上げる会』?」
半蔵「……略して……『じじ会』」
家康「…………『じへ会』じゃないか?」





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