戦場の華?
「ちょといいか?三成。」
戦の準備にあちらこちらへ回っていた三成を呼び止める兼続。
「ん、何だ?」
真剣な顔に、何事かと足を止める。
「すまんな、忙しいところを……
大した事ではないのだが
気になったものでな」
「何がだ」
「戦で使う護符の色は何色がよいと思う?」
本当に大したことでなかった。
「おれはいそがしいんだがな……」
というか、どうでもいい
ほんっとにどうでもいい
口に出してもはっきりそう言ったのだが
兼続聞いてないのか気にせず続ける。
「白で良いかと思ってはいたのだが」
「……次の部隊の人数は……」
ほっといて歩き出す。
「衣装が白基調だからいまいち栄えないのだ」
だけど後からついてくる。
「…………」
ほうっておきたいの、だが……
「上杉らしくていいのだが白ばっかりと言うのも芸がないし」
「…………」
「紙なんだから白、と決まったものでもないだろうし」
「…………」
「で、皆に訊いて周っているのだ。何色がいい?」
「皆に!?この忙しい中、人様に迷惑かけるなよお前は!」
「別に迷惑だとは言われなかったぞ?」
「言わなかっただけだ!!」
はっ!
気がつけば、律儀な三成は結局話を聞いてしまうのだ。
「そもそも護符の色などどうでもいいだろう……」
「む?そうでもないぞ。
やはり、ばちっ と決まっていないと
術の威力も、すかっ と行かないのだ」
「すかっ?」
「気分が乗らないと気も乗らない
気が乗らないと符術も上手くいかないものなのだ」
「結局お前の気分なのか」
「とりあえず、お前は何色が好きなんだ?」
「関係ないだろうが」
「だからとりあえず、だ。」
「とりあえず……」
忙しいのを呼び止めといて……
とはいえ結構熱心に答えを待っている様子の兼続、
ため息ついて、とりあえず答える
「好きな色など、別に……」
一瞬脳裏に過ぎる色彩
「兼続殿!ああ、三成殿も」
ぱたぱた、と赤一式の甲冑に身を包んだ幸村が駆けて来る。
どきり、と動きを止める三成
「幸村!」
兼続が名を呼ぶ横で、眉間に皺を刻む
(……三成殿『も』……)
くだらない、と自分でも思う
思うけど何ともしようがないのだ
一人不機嫌な三成を余所に兼続は笑顔で幸村を迎えた。
「先ほどの話なのですが……」
「……お前幸村にも聞いたのか」
忙しいだろうに、と心配する三成だが
「やはり赤が一番だと思うのです!!」
幸村の背後に焔!が浮かぶ。
「……幸村?」
勢い良く、何処からともなく赤い束を掲げる
「なので赤色の護符を用意しました!!」
それは赤地に黒文字の大きな護符(大量)
「おおっ!結構格好よいな!!」
「早速使っていただけるとは!」
ぽかんと見つめる三成の前で、ぐるぐる 回り出す。
「おっ、赤にすんのか?折角持ってきたんだがな」
のっそり、いつの間にか背後に大きな人影
前田慶次
その手には紫色に金の文字の護符(やっぱり大量)
「む、それを持ってきてくれたのか
いや、もちろん使わせてもらうぞ!!」
ぐるぐる
「ふん……赤と紫では派手すぎるだろう」
ざ、と何処からともなくすらりとした影
立花ぎん千代
「というわけで黒い護符だ」
「黒い護符というのは、何とも不吉すぎんか?」
どし、とその隣に立つのは島津義弘
「蒼でよかろう」
ぐるぐるぐるぐる
「ああ、ここにいたんだねえ。皆と一緒に」
続いて聞こえてきた声に三成はあわてた。
「おねね様!」
「仲良くやってるみたいだねえ」
「いや……あの……なんですそれは……」
「ふふ、やっぱり金色が一番だよね!」
どん、と掲げていたのは金の護符
きらきら、光を反射して輝いていた。
「……貴女まで……」
ばさばさばさばさ
それからも、次から次からと
だんだんと増えていく武将たち
それにつれ増えてゆく色とりどりの護符が舞う。
ぐるぐるぐるぐる
ばさばさばさばさ
「あいつは、一体何人に質問していったんだ?」
あきれてその様子を眺めるばかりの三成
ふいに幸村がこちらを向く。
「三成殿は何色が好きですか?」
その顔を目前にして、どうしてもすぐ言葉が出てこない。
「……俺は……」
だけど『好きな色などない』と答えるのも残念なことだ。
残念なこと……だろう?
「……赤が、好きだ……」
ぱちり、と幸村の瞳が大きく広がる。
「嬉しいです」
そういって微笑んだ
「私も、好きです」
「うむ」
「兼続殿もとても嬉しそうです!」
「……そうなるのかな……」
まあ、兼続の話からすると、気分が乗っている限りは絶好調なんだろう
絶好調な兼続の姿は今、豪華絢爛、華やかな壁の向こう。
ぐるぐるぐる ぐるぐるぐる ぐるぐるぐるぐるぐる
おわり もどる
気がつけば三成ひとりだけツッコミ
暢気な味方だと思いつつも押されぎみ
でも多分最後は結構浮かれてる