お見舞いに
「なに、幸村が病気だと!?」
部屋を訪ねて来た左近の言葉に三成は顔色を変える、
「そういえば、前会った時様子がおかしかったような……
くそっ小用で出かけてさえいなければ!!
左近、何をしている!医者の手配を!薬の用意を!!」
「あー、ただの風邪だそうですよ?」
落ち着いてください、と左近は苦笑する。
「何を言う!甘く見てると大変なことになるぞ!!」
がーー!!!!
叫んで詰め寄る三成。
「殿の方が大変ですよ
こほん……ではなく、幸村のことなら何があっても一大事な連中がたくさんついてますから、
人の身体の事も詳しければ、薬の知識も豊富でしょうし。」
「う……」
左近の言葉に納得はしたのだろうが、三成いらいらと手の扇を閉じたり開いたり。
「だが心配だ、とにかく見舞いに行くぞ!」
「そうだろうと思いましたよ」
とごそごそ左近なにやら取り出す。
「なんだ?見舞いの品か?」
「いえ」
と差し出したのは一枚の白い紙
「うん?なんだこれは」
「幸村の看病の申込み書です」
さらりと左近
「は!?」
と驚いて取り上げれば確かにそう書いてある。
六文銭の絵柄まで入っていた。
「見舞いのみと看病込みの2種類あったんですけど」
「な!?」
「大変混雑した上、幸村の体にも障るというので予約制にしたそうですよ」
と当然の事のように説明する
「こ、混雑……?」
「結構」
こくり、と頷いた左近をじいっと見つめた。
「…………」
三成はうつむく。
「殿?」
「幸村の……身体に障る、というのであれば……」
そういいながら背を向けて腰を下ろしてしまう。
「構わん、だろう……」
「殿……」
目を丸くする左近
「……ものすっごい行きたそうですが」
「……うるさい」
「なんだ、帰っていたのか、三成。」
と兼続が姿を見せる。
「……何用だ……」
不機嫌な顔で迎え入れる三成
「幸村の見舞いには行かんのか?」
「…………」
「兼続殿はもう行かれたので?」
ぶすっとした三成に代わって左近が尋ねる。
「うむ、昨日な
元気そう……に振舞ってはいたが、結構辛そうだったぞ」
「だ、そうですが、殿?」
「……う……だが、見舞いに行く者も多いのだろう……?」
三成、表情をゆらすが、まだこだわるところがあるようだ
「ふむ?だが幸村も会いたそうだったぞ?」
ぴくりと三成の肩がゆれる
「……そうか?」
「『三成殿は何時お帰りになるのでしょう』とな。」
「!!」
すっくと立ち上がる三成に
「顔を見せてやってくれ、三成」
兼続、微笑みながらそう告げた。
「まあ、今から申し込んだなら幸村が治ってからでないと会えんだろうがな」
立ち上がった三成の足が止まる
「水を差さんでくださいよ」
殿に面倒なこと頼まれるのは俺なんですから、と左近
「まあ、俺は既に、今日は看病もと思って予約しているのだが」
兼続は ぴらり と白い紙を取り出した。
ぴくり
ざざっ、と手を伸ばす三成
「よこせ」
「ははは!」
ぴらり
ざざっ
ぴらり、ざざっ、ぴらり、ずざざ……
「兼続ゥ〜〜〜!!!」
「あははははは!!!」
どたどたどた どたどたどたどた
去っていく騒音たち
「幸村によろしく〜〜」
左近の声が後を追った。
おわり もどる