イメチェン!
「ヒゲを生やそうとおもう」
唐突にやってきて宣言した上司をまじまじと見つめる左近
「……全く似合いそうにありませんな……」
「黙れ」
「正直な感想なんですが……」
「俺は決めたのだ」
「はあ……」
わざわざ宣言しに来たんですか?
「でもなんでです?今更シブ路線に憬れて……」
と言葉を区切ってちょっと考える。
「……というの自体似合いませんな……」
「色々調べてみたのだ」
「何をです?」
「幸村のことをだ」
まあ、大概おかしなことを言い出すのは幸村がらみですよね
納得して、一応忠告しておく。
「……あんまり犯罪まがいのことは……」
「なんでそうなるのだ!!兼続に色々聞いてもらっただけだ!!」
憤る三成だが、それはそれであまり威張れない。
「で、幸村の好みの傾向を分析してみたのだ」
「幸村の、好み??」
「ヒゲだ!」
「はあ……」
なにをどう分析したものやら
「野性味と包容力だ」
「ああ……」
左近は幸村の敬愛してやまぬ信玄公を思い浮かべた。
そして最近親しくしているらしい島津義弘。
まあ確かにヒゲだ。
「どちらも殿には乏しいですからなあ」
「黙れぃ」
そうやってすぐ怒るし
そもそもあの2人に対する幸村の好意は別に恋愛対象としてではないし
ヒゲの問題でも全くないのだが
……まあそれくらいかまいませんけれどね
どうせおねね様が反対されて、すぐ止める羽目になるでしょうし
「だが一つ問題があってな、お前に頼みたいことがあるのだ。」
「ほう?なんです」
「俺はどうもヒゲが生えにくいらしくてな」
「ああ、そうですねえ。戦場でもあんまりむさくならなくていいですよね。」
うんうんうん、と頷く。
三成ちょっと左近を睨むが、結局何も言わず続ける。
「で、頼む」
「はい?」
「毛生え薬を調達しろ、よく効くやつをな。」
「はあ?」
「いずれは関羽のごとき鬚を手に入れるのだ!」
……変な願望を持ったものだな……
最初の目的から段々ずれてってませんか?
「はあ……」
とぼとぼと歩く左近
別に毛生え薬を調達しに行くつもりはない。
毛生え薬を捜している、と噂になるのがなんか嫌だ
別に毛のことなど気にしていないけれど、なんか嫌だ
行く先は幸村のところ
「まあ、幸村に『三成殿にはヒゲなんか似合いません!』とでも言ってもらうか」
考えた末の策がそれだ
だが一つだけ穴がある
「……幸村が本当にヒゲ好きだとしたらどうしたものか……」
おわり もどる
左近苦労話、か?
肖像画だと三成ヒゲありますけど