あなの底の楽しき……


仕事を終えて、三成は自分の屋敷……ではなく幸村の家へと向かった。
「久しぶりだな……」
3日ぶりです。
近ごろは当たり前のように通っている三成だった。
屋敷の近くまで来たところで、幸村の姿を見つける。

「幸村!」
「あっ……」

酷く驚いた表情の幸村へ
声を掛けて走り寄ろうとしたところ、

ずぼ

「三成殿!」
「なんだこれは!?」


腰まで地面に埋まった石田三成の図


「すみませんすみませんっ!だっ大丈夫ですか?!」
慌てた幸村が両手を差し出して引っこ抜く。
「いや、大した事ないが……」
これは幸村が作った落とし穴だったらしい
「一体何故こんなものを……」
「はあ、実は占いで」
「占い!?」
「今日の午後屋敷から西南の方角に100歩進んだ所に穴を掘ると今晩いいことがあるかも(はーと)」
「はあ!?」
「と教えてもらったので」
「誰に!?」
「才蔵に。なんでも『修験道ごっつり占い』だそうで」
「ごっつり!?」
いや違う
「そんなの信じるのか!?」
「結構当たるんですよ?」

胡散臭い、というより自分への嫌がらせでなくてなんなのだ
最近影に日向に幸村に会うのを邪魔してくるからな
……しかし、なんで自分がこのタイミングでここを通るのがわかったんだろう……

幸村の両手は掴んだまま考え込む
考え込んだまま足を踏み出す



ずぼん
ずざざざざざざざ
「「!!!」」



「つっ、幸村!?」
「三成殿……」



2段構えだったのか……
今度はえらく深い。
「大丈夫か?体は動くか?」
「あ、大したことないです」
自分を庇った幸村を心配しながら三成はその近さに赤くなる。
(いや、暗くてわからんか……)
変に安堵しながら、あいまいなこの距離と温もりにしばし浸る三成
そこに……

「っだーーー!?幸村様ああっ!!」
「!!!」
「おいっ六郎!お前もう少し考えてほれよ!!」
「なに、俺のせい!?才蔵の考えが足りなかったんじゃないの!!」
「なに!」
「あ〜あ才蔵の占いって肝心なところがいまいちなんだよな……胡散臭いし」
「なんだとお!!第一おまえ先輩なんだから呼び捨てにするなといつも……」
「はいはい才蔵様」
「がーーーー!!!」
「……いいから、早く助けるぞ……」

数人の声がする
「……これはあいつらか……」
「すっすみませんっ!!そうみたいです……」
あなの底の2人は顔を見合わせる
「訓練なんでしょうか?
……三成殿まで巻き込んで」
「まあ、すぐに助けが来そうだが」
なんとも騒がしいことだ
「俺はさほど忍びについて知っているわけではないが、まあ、変わった連中だな……」
「はあ……私も彼ら以外の忍びについて詳しいわけではないので何ともいえないのですが
でも彼らは『忍び』といかなんと言うか……
仲間と言うか、同志というか……」

同類と言うか

いくら普段、笑ったり泣いたり当たり前のようにすごしていても
同時に当たり前のようにひとを狩る
それでもひとなのだと……自分では言いはることなんて出来ない
同類

「まあああやって騒いでいるのを見ていると普通のひとなのだな」
「ひと……ですか」

それは向けた刃の先に立つものの事だったから
笑って泣いて、でもその時がくるまでは

「三成殿の言うとなんだが響きが違いますね……」
「どうした、変な顔だぞ幸村」
すっと手を頬に手を伸ばす。
「あはは、変な顔ですか?」
「幸村……?」

ごっ

「ぐあ!?」
「うわあ!?」

「幸村様!!大丈夫ですかっ!!」
「なにかされてませんか!!」
「いやっ三成殿がっ!?」
「っく、き貴様らっ!!」

ずざずざっ

「まったく、落着かぬか才蔵も海野も」
「いや、佐助まで降りてこなくても」
「お前までおりてんなよ、甚八」



ぎゅうぎゅうぎゅう



「あほか!すぐに助けるんじゃないのか!?」
「皆?」
「すみません……慌ててました……」
「あきれたことだな……」
「お前がいうなよ!」



「さっさと上がらんか!!」



ぎゅうぎゅうぎゅう



あなの底の騒ぎはその淵でおろおろする十蔵も含めてしばし続いたと言う。






おわり    もどる







三成と幸村の会話再挑戦
す、少しは甘くなってる……かな

無闇に妄想版十勇士が多いです。
あまり誰が誰だか深く考えない方がいいです……