なつやすみ
どさどさ と目の前――どころか部屋中に積みあげられる仕事の山
無言で、でも喜々として運び込む部下らを憮然と眺める三成
「……おかしいではないか……」
「なにがです?」
取り合えず今日中にいるのはこれだけです、と澄まして言う左近をにらみつつポツリと呟いた。
「なんでこんなに仕事が溜まっているのだ?」
「やんなかったからでしょう」
「俺は今日仕事をして帰ったところなんだぞ?」
「そうですか?」
「領内の視察だ」
「……そうでしたっけ?」
「そうだ」
「でもまあ、それはそれ、これはこれですから」
「だがな……」
「さっさと終らせちゃってください」
「む……」
机の前に座らせる。
大人しく仕事を始めたのをみて左近以下他の部下たちも仕事を始めた。
だが少しして三成が話し始めた。
「最近こんなことが多いような気がするんだが……」
「まだ納得いかないんですが?」
「原因を考えてみようと思う。」
「考えるのは良い事ですよ、手も動かしてくださいね。」
「……大概の過程はこうだ。」
1、兼続がくる。だいたい何か誘いに。
「三成!!義を行いに行くぞ!!」
「唐突になんだ!?俺は今日忙しいんだぞ!」
「うむ、お前んちの近くに怪現象が起きているというのだ!」
「俺の家??」
「怪現象……もしかしたら不義かもしれん!見に行こう!」
「お前、単なる好奇心……」
2、幸村もいる。だいたい兼続に巻き込まれて。
「では行くぞ幸村!!」
「あ、おはようございます三成殿」
「……ああ、おはよう幸村……」
3、だいたい何もなく終る。今回は山歩きをしただけ。
「結局怪現象はなんだったんだ……?」
「うむ、天気も良くて良好!」
「あ、この先に滝があるみたいですよ」
扇を取り出し、ばさり、と広げた。
「なるほど……原因はわかった」
「そうですか」
「うむ」
扇を翻しながら立ち上がる。
「幸村に兼続の誘いは断るように言っておこう。では早速……」
ずい べちゃっ
その裾を掴むものあり
頭から派手にこける三成
「………………」
それは無言で仕事をし続けていた部下の一人。
ずっと無言でじっと見つめる。
「………………」
「う……」
無言の圧力に、負けた。
なんだかんだでテキパキと仕事をこなし始めた三成。
この分なら早々終るだろうと、左近はそっと部屋を出た。
別の部屋へと向かう。
そこには客人が待っているはずだった。
「殿は宿題が終るまで待ってくださいね〜」
「しゅくだい??」
きょとんと目を丸くするのは幸村。
笑って左近はその向かいに座る。
「いつもお世話になってますな。」
頭を下げる。
「いいえっ」
慌てる幸村。ぱたぱたと手を振る。
「あ、否。実際に大変だったのは十勇士たちで、私は結局ゆっくりさせてもらいましたし……」
ぱた、振っていた手をついて表情を引き締める。
「今回は、以前三成殿が指揮した山賊討伐の際の残党だったようです。」
「ああ」
「わざわざ山賊と手を結んで怪現象の噂を広めてた、その後ろ盾は今確認しているところですが……
証拠の方はもう少し待ってください。」
と頭を軽く下げた。
「本当にいつもすいませんなあ、大変でしょう。」
「いえ……大変なのは三成殿です」
「ま、何かと恨みを買いやすい人ですからな」
「本当に良い方なのに……」
苦笑する左近に対して幸村は結構本気で怒っている様だ
左近も真剣な顔になる。
「まあ普通に探ったところで弾劾の種になるような事は全くないのが殿ですからな
あせって馬鹿なことをする輩もいるんでしょう」
「勝手すぎます」
「しかし、こうも毎度毎度……」
とため息をつく左近。
直江兼続の持ってくる話にはかなりの確立で『何事か』――彼の言うところの不義が絡んでいた
そして必ず幸村を誘う。
必然的に十勇士も動く。
「流石兼続殿です!上杉の情報収集網も凄いのですね」
幸村は感心しきりだが
「う〜ん……ちゃんとわかっての事とはとても思えないんですが……」
左近は首をひねるばかりだ
「でもまあ、殿にとっては結構息抜きになってるみたいですよ」
「そうですか……よかった」
「最近は周りの部下も心得てきたみたいですし」
「はあ」
「また誘ってやってください」
「はい!」
それは夏の、だいたい穏やかな日常
おわり もどる
保護者左近と義トリオ
夏休みと言えば宿題
やっているつもりなのにどうしてか最終日に残ってしまうような記憶が
兼続は不義センサーを内臓しております