1、三成と兼続
「いくら忙しくともあまり遅くまで仕事をするのはよくない、
お前のことだどうせ明かりをケチって薄暗い中で無理をやっているのだろう。
いや、言ったところで聞きはしないとは思うが一刻おき位には小休止を入れて湯で絞った布などを当ててだな……」
「いきなり入ってきて何だ、兼続」
開け放った戸に手を掛けたまま唐突に話し出した友人に、顔だけ向けたままの石田三成は内心ちょっと吃驚。
ただし表情だけは名にし負う鉄面皮
内心の動きなど滅多と現れたことはない
……最近まで、ではあるが
「うむ」
立ったままの兼続は一つ頷いて部屋の主の様子を見下ろしながら言い放つ、
「目つきが悪いぞ。三成」
「…………」
ぎしい
手にした扇が軋んだ。
「目が悪くなったんじゃないのか?」
「…………」
首をかしげる兼続には全く悪気は感じられない。
ため息をつきながら座るよう手で示す。
「む、すまんな」
そういって、ぴんと背を伸ばして正座する。
彼は進められるまでは座らない。
が、部屋に入って立ったまましゃべり続けるのはいいんだろうか?とその間見下ろされてた三成は思った。
「別に悪くなってない」
「そうか?今忙しいんだろう?先ほど戦があったからな。知らず疲れていることもあろう」
「夜更かしなどせん、俺はいつでも早寝早起き早食いで……」
「早食いは体に悪いぞ」
「……ともかく、目は悪くなってない!」
なんなのだお前は、と意識して睨み付ける。
その表情をじいっとみて、兼続。
「ふむ?」
「今度は何だ!」
「機嫌が悪かったのか、三成」
びしい
「指差すなぁ!!」
思わず怒鳴りつけた。
「何だ、悪かったのは目ではなかったのだな」
「誰のせいで今機嫌が悪いと思ってるんだ」
納得している兼続に思わずぼやく、
「誰のせいなんだ?」
「なっ……」
一瞬また怒鳴りそうになるが
そう言ってこちらに向ける表情は何処までも真摯なもので
「何か言われでもしたのか?それとも悩みでもあるのか?」
心から心配そうにいわれて結局口を閉じる。
(……悪気はないのだ……口の悪い奴だが)
「……何か言われたわけではない」
口調を和らげてそう答える。
「そうか。まあお前のことだ、嫌味なぞ言われでもしたならその場で3倍にして返すだろうしな。
ほどほどにしておけよ?お前は口が悪いしなあ」
ぎしい
「別に誰かに怒っていたわけじゃない、俺は……」
「そうか?だが部屋に入ってきた時は随分と険しい顔をしていたぞ。
お前は一人でいる方が表情に出やすいんじゃないか?」
「そんなこと解らん……」
「景勝様も人前ではああだが、本来は感情の豊かな方でな。この前も……」
おいっ
「俺の話ではなかったのか!?相談に乗るんじゃなかったのか!?」
「もちろん相談に乗るとも!」
「じゃあ話を聞け!!」
「もちろん聞くとも!」
「くっ……まあ、ともかく俺は誰かに対して怒っていたというわけではないのだ……
ただ……」
三成はすこし躊躇って、
「幸村が……」
「幸村?」
「いや、あいつがどうしたというわけではないんだ……
その、先の戦でも随分と活躍しただろう?」
遠く本陣からでも目を引く炎のような紅い色
最も激しい戦場へとまっすぐに駆けて行くその姿
ひやり と背筋を凍らせれば、まさか というような戦功をあげる
「秀吉様も……」
「秀吉様?」
「随分と、褒めていらした……」
初めこそそれを誇らしく、嬉しく思っていたのだが
秀吉のみならず、他のものたちもそれに続けて賞賛の声をあげるのを聞いているにつれ
「なんだか段々と……腹ただしくなってきたというか」
「ほう?」
「俺はそんなに了見が狭かったのかと情けなくも腹ただしいし……
でも思い返すとやはりいらいらするというか……」
歯切れが悪い
そんな『石田三成』らしくない姿をしばらくじっとみつめて、
「ところで三成。」
「……なんだ……」
「私も幸村と一緒に戦っていたんだ。」
「……知っている……」
「そうか?で、私も秀吉様ほか諸将にも随分と褒めていただいたんだ。」
「……よかったな……」
「三成」
ばんばんばんっ
兼続、唐突に背中をたたく
「ぶっ、なにをする!?」
「義とはすばらしいな!三成!」
そう叫んですっくと立った。
「はあ!?」
「今度は酒でも持ってくるかっ!」
「おいっ?!」
「越後の酒は美味いぞ!三成!」
では失礼!
颯爽と去っていく。
「何なんだ……」
呆然と見送る三成
「何なんだ、あいつは……」
『義とはずばらしいな!』
おわり
もどる
わかってないようでわかっているようでわかってない兼続と
発展途上な三成。
でも兼続しか相談する相手のいない悲劇
幸村出てないうえ会話ばっかり……
2、兼続と幸村
真上より焦がすように照りつける日差しの下に、捜していた姿が見えた。
戦場でのいでたちとは対照的に、今は涼しげな青い色の着物姿。
片手に荷物を提げており、ここから見る限り供の者の姿は見えなかった。
見えない、だけかもしれなかったが。
まあ、それはどちらでも良いこと。
滲む汗すらも、からり と吹き飛ばすかのような笑顔を浮かべると、名前を呼びながら駆け出した。
「幸村っ!」
「兼続殿」
幸村も笑顔になって足を止める。
「無事に会えてよかった。おねね様からは随分前に出て行ったと聞いたので間に合わぬかとも思ったのだが……」
「何か、急ぎの用事でも?」
笑みを収めて真剣に問う幸村に
「うむ」
と大きく頷いて、
「何事で……」
「これを三成へ渡してくれ。」
顔の前に、ずい と手に持っていた物を差し出した。
「ええと……?」
「酒だ」
そういって結構強引にあいている方の手に持たせる。
素直に受け取る幸村。
「そっちのも、酒か?」
「あ、これですか」
首をかしげる兼続に再び にこ と笑いかけ、もともと持っていた方の包みを持ち上げる。
「これも三成殿へ、ですよ。島津殿からです。」
「やっぱり酒か」
「何でも前に碁で負けたそうで。その時は別に何かを賭けたりしたわけではないそうなんですが……」
にこにこ と続ける。
「まあ、次は勝つつもりだから、それまで預かっておけと。」
「その時までとっておくのか?」
「多少減ってもかまわない、といってましたが。むしろ再戦するための口実かと。」
「三成へ、なあ……」
兼続も幸村と顔を見合わせて笑いあう。
「それは三成と約束していたものだ、私の秘蔵の酒だぞ。
……本当なら3人で飲むはずだったのだがな」
「三成殿と兼続殿と……」
「幸村とだ。だが急ぎ米沢へ戻らねばならなくなってな。」
「……お忙しいのですね」
「仕方あるまい。まあ私以上に多忙な奴もいるしな。」
天下の趨勢ほぼ定まった今、天下人秀吉の懐刀とも言われる三成。
唯でさえなすべき仕事も倍増したうえ、
その権勢を求めて接近してくるものも後を絶たない。
「そういうのは嫌う方ですが……」
「だが、豊臣のためには必要なことだ。必要と判断したなら寧ろきっちりやってのけるだろう」
「そうですね」
「無理をしてても気付かぬような奴だ。それを持っていって、少し息抜きでもさせてやれ。」
戻ってからは必ず3人で飲もう、と兼続は約束し、来たときと同じように走り去っていった。
残された幸村は、
「……これは、いいよ佐助」
『一人』そう声を漏らす。
「うん……お前も心配してのことだと思うけど……」
そう言って兼続のもってきた方の包みを眺める。
「秘蔵のとも言っていたしね」
ふわ、と柔らかな笑みが浮かぶ
「私は、嬉しいな……」
おわり もどる
幸村好きなもので色々と妄想が激しいです。
三成に近しい人は、連絡取るには幸村経由が一番早くて確実でかつ安全だと思っているもよう。
兼続のいう『約束』は1の最後のもの。
彼なりに2人が仲良くなればいいなと思ってるんです。うん。
3、幸村と三成と
なんとなく、彼の部屋に足が向いていて
なんとなく、名前を呼ぶまで時間がかかって
なんとなく、こちらに気付くまでの様子を計るように観ている
なんとなく……とは何事だ!
その日は、いつもよりも、顔を向けるのに明らかに時間がかかった。
「……随分うれしそうだな」
口から出た声が、低い。
微笑を浮かべて頭を下げていた幸村は、たいして気にとめずただ「はい」とだけ答えた。
その手には広げたままの書簡
「誰からの手紙だ?」
よもや、とは思うが
たとえばもしかして、こ、恋人、とか
まさか聞いたことはないぞでも別に話す必要もないことだし上田にとかいわれたなら俺は存在すら知らないんじゃないか
そりゃいたところでおかしくもなしだが楽しそうに見ていたではないかよい笑顔だったでもだれに
己の最大の武器と誇る、冷徹な……はずのこの頭脳が制御できない
それでも顔に全く出ないのがせめてもの意地
故にこちらの内心など知らない幸村は、す、と真剣な顔になって
「そうですね……三成殿には、話しておきましょう……」
などと続ける。
(な、な、な、な、まさか、本当に……)
「じつは……」
(どうしよう……)
ほうっ、と息をつく。
どうかしましたか?と首をかしげる幸村になんでもないと答えながらへたり込むように座った。
「真田の忍はもちろん父上に仕えているのですが、私に力を貸してくれる者もいるんです。
こうして諸国の様子を頻繁に教えてくれます。」
「それがそんなに楽しいのか?」
「楽しいですよ」
「大名の動静や土地の特徴などだけでなく、他にも色々と」
手に持った文をこちらに向けながら
「その場所で出会った人のことや名物や特産品とか」
「……手紙ではないか」
「報告書ですよ?」
にっこり と笑顔
その笑顔を間近で見ようと近付いて、ついでに幸村の手の中の手紙を覗き込む。
『お饅頭をおまけしてもらったよ〜うれし〜!イイ人だあ!』
「……気楽過ぎないか?」
「そうですか?……しかし、任務ですし本当は大変だと思うのです……
敵地にも向かうわけですし
それでもどんな時でも余裕を失わないというか、自分を見失うことのない者達で
食べる事ばかりのものもいれば、歌を添える者もいて、
本当にらしいなあ……と見返しておったのです。」
そうして部屋にあった文箱を示す。
「本当に……いつも皆に支えられています。」
そう語る表情をずっと見つめる
少しばかり……くやしいではないか
「私も見習わねばと、思います。」
「お前も書いて見ないか」
「え?」
「報告書なのだろう?その日あったことを書いて見せてくれ。俺も書く。」
「三成殿に書くのですか?」
「そうだ」
「こうして直接会ってますけど?」
「四六時中一緒というわけではないじゃないか」
「それはそうですけど……」
俺には書きたくないというのか?
むっとして詰め寄る
「私はあまり字も上手くないですし……」
「それが何だ」
勢いで腰を上げて更に詰め寄ると、幸村の体が後ろに傾いた。
なんだ、本当に近いな
そう思いながら見下ろしていただけだ
だから寧ろ無意識のことで
この手が伸びていったのは自分でも預かりしらぬこと、だ
ぷす
「はうたっ!?」
その手に刺さる短く細い一本の、針
気付いた瞬間体中から力が抜ける、くたり と伏すのをどうにも止められない
「三成殿!?」
(ち、力が、入らん……)
「申し訳ありません、幸村様。」
天井から声がしたかと思うと、いつの間にやら男が姿を見せる。
「針を落としてしまいました。」
「え、は、針って……針ってまさか!?」
「私がこんな失態を見せようとは……」
「才蔵にもそのようなことがあるとは」
(信じるのか幸村!?)
「誠に……すみませぬ幸村さま」
(こいつ俺には一言も謝っておらんぞ!!)
「ともかく解毒剤!解毒剤を!!」
「こちらの針に塗っておきましたのですぐに」
(準備いいな、って、さっきの針より大きくないか!?)
「ではざっくりと」
そういって針を振りかぶる
「ちょっ、才蔵!?」
(くそう……負けんぞ俺は!!)
おわり もどる
だいぶ進行ぎみ三成と天然っぽい幸村
三成VS十勇士
十勇士も危機感を覚えるぐらい仲良くなれるといい
左近と幸村
突然の訪問者の名を、聞いた時だけ瞳に鋭い光が走るが、次の瞬間には笑顔を浮かべて、部屋に通すよう告げた。
「……珍しい」
一人になってから、ぽつり、呟いた。
「何か、あったのですか?」
前置きも無しに、そう聞くのも無理はない。
真田幸村と石田家家老の島左近
三成がいるときならば何度も顔をあわせている2人だが、
逆に言うと三成のいないところで会うことはなっかたのだから。
「何事か不味いことが起きた、とかではないですから。ご心配なく……
まあ、ちょっと頼みたいことがあるんですけどね」
「はあ……」
あ、お茶どうぞ。と幸村が自ら入れる。
お、こりゃどうも。と左近が頭を下げる。
「頼みたいこと、ですか?」
「ああ……」
ずず……
2人でお茶を啜る音が響く。
「前に武田にいたとき……」
こつん
「幸村……?」
「何でしょう?」
話を止めた左近に、首をかしげる幸村。
だが、瞬きほどの間に浮かんだ無表情
気にするな、という意味なのかそれとも無意識のことなのか
にこにこにこにこ
今は必要以上の笑顔を向けている。
(…………)
「……信玄公は、面白いお方でしたなあ……」
「え?」
突然話し始めた左近に、意表を突かれたのかキョトンと目を瞬かせる。
「最初は軍略を学ばんと意気込んでたんですけどねえ……
実践で教える、といえばいいですが、仕事押し付けられて結構こき使われて
自分はといえばいつの間にかどっかで遊んてるし。」
「え?ええっ?」
幸村には意外な事実だったらしい。
「軍略についてどうだこうだと語られることは滅多となかったですよ
寧ろ俺のほうが色々訊かれたりして……」
試されてるのかと、思ったこともあったが
「いつも楽しそうに話をきいてました。」
「ええ……」
「人と話をするのが好きだったんでしょうなあ。」
過去形で語られるひと
「今」「だれか」との間に存在している「過去」
「正直いうと、何時も羨ましかったですよ。あなたが」
湯飲みを置いて幸村
「知ってました。」
その顔から笑みが薄れているのを見て、左近は改めてお茶を啜る
ずず……
「たまに睨んでましたからな」
「っそ、そうでしたか?!?」
あわてる幸村をみて、にやり、と笑う。
「あのくのいちには直に釘を刺されましたからな」
「え!?」
「で、もう一度会ってみたいと思いまして」
「くのいちに、ですか……?」
幸村の目にまた鋭い光が宿るが、その目の前で左近は手を大きく振る。
「いや、本当に何かあったというわけじゃないですよ」
「そうですか……?」
「実は口説こうと思いまして」
「ええ!!」
「それを頼みにきたんですよ」
「えええ!?」
目を白黒させるのを眺めながら、左近はお茶を飲み干した。
帰る左近を途中まで送って出る幸村
「……何処まで本当なんです?」
「さて……?」
赤い赤い光の中、長い長い影が離れてゆく
その背中に向かって
ありがとう、ございます
それは、届いたのか、届かなかったのか。
「人の色恋に首突っ込むのはやなんですけどね」
ふいに立ち止まって口を開く。
だから最初気付いたときも、放っておくつもりだったのだ。
ごそごそ、と懐から一枚の折りたたんだ紙を取り出す。
上司から渡される大量の文書に紛れていた一枚の紙、
ひろげてみた真ん中に
石田幸村
ふ、と遠い目になる
最初見たときはなんとも脱力させられたものだが
「殿も、変に不器用なところがあるし」
今はまあ、オヤゴコロ、とでも言いましょうか。
「ま、せめて2人っきりになる機会ぐらいはあってもいいじゃあないですか」
そう虚空につぶやいて
周囲に何も変わりがないのを確かめて
再び小路を歩き始めた。
おわり もどる
殿のため、策巡らす左近。
十勇士を牽制し、保護者を懐柔し、周りから攻略
のつもりがうっかり三成に恨まれそうなんですが……
……三幸ですよ?(不安)
俺と軍師とあにうえと
石田三成はその日、とある客人を向かえた。
―――その人物を送り出し、しばらくしてから
ようやく顔を出してきた己の家老
部屋に呼び出すと対座して、厳しい顔で問いただす。
「左近、一体どういうつもりだ」
そもそも、と続ける
「俺が頼んだ用事は大して急ぐものでもなかったのだがな
面識がないわけではないのだろう?
顔を出すぐらいしていけばよかっただろうに」
「……面識があるからこそ、なんですよ」
答える左近の顔はどこか暗い。
「どういうことだ?」
首を傾げる三成に、左近は答えなかった。
「ははっ……はあ〜」
笑って誤魔化そう……として結局ため息。
「わからんな」
ますます首を傾げる三成
「立派な方ではないか、信幸殿は」
三成は、今日初めて会ったその人物のことを思い返す
「実を言うと、いつもいつも幸村が嬉しそうに話すので、面白くないと感じていたのだが……」
と、首を振って
「実の兄のことだし、贔屓目もあるだろうと思っていたのだが、
確かにあれなら自慢に思うのも無理はないな」
挨拶を述べる声もその所作も、真に板に付いた堂々としたもので、
その年に似合わぬほどの威厳に満ちていた。
その立ち居振る舞いを見ていると、自然と信頼の感情が湧いて来る
実際には今まで何人もの大名に会ったことのあるはずの三成だったが
なるほど名門の後継というものはこういうものか、と
その時こそ、納得したものだった。
しかし、その態度は控えめで、
ついつい言動が横柄になりがちな三成の話にも終始穏やかな声で答えていた。
そして、話す言葉の端々から感じられる弟への、家族への愛情と……
ぽり、と頬を掻き
「まあ、的外れな嫉妬であったのだろうな……」
珍しく恥じ入る様子の三成
「磨きがかかってるようですなあ……あの方も……」
やっぱり暗い顔の左近。影まで見えるようだ。
「……なんだというのだ、左近」
と、顔をしかめる三成
「殿……左近は……左近は家臣として、軍師として、そして同士としても忠告します!!」
「な、なんだいきなり!?」
「信幸殿にはお気をつけ下さい
特に幸村のことを話すときは!!特に殿は!!」
「はあ?」
「表裏比興の策士なんですから!」
「それは……父親のほうだろう?」
「どうやらますます『真田家の長男』としての顔に磨きをかけているようですが
……その分裏側がどうなってるのか、俺は恐ろしくてしょうがないですよ……!」
「ちょっと落ち着け、左近」
「殿なんか、ぜってえ『ちょろい』とか思われましたって!!」
「何い!?」
沸騰する三成だが、
左近の滅多にない青い顔で瞬間冷却
(なんつう顔だ、左近……一体どうしたんだ)
というか、一体過去に何があったというのか
(信幸殿が……?)
ここで、兄のことを話す幸村の顔が思い浮かぶ。
(まさかな……左近も何を誤解しているのやら)
「信幸殿もお前のことを気にかけていたぞ?
昔お世話になったので、ぜひ会って話がしたかったと
……そうだ」
と、立ち上がってごそごそ
手に一つの小ぶりな箱を持って戻ってくる。
「お前に、と持ってこられたのだ。
変なことを言ってないで、後でお礼の挨拶に行って来いよ」
とん、と左近の目の前に置く
ずざあ
あっという間に距離を置く左近
「おい……」
ぴくり、と流石に青筋が浮かぶ
「すみません……でも俺の勘が告げているのです」
近寄るな、危険
「あのなあ、左近……お前の言うことを信じないわけではないが
なにか誤解があるんだと思うぞ」
ぽんぽんと箱を叩きながら
「本当にお前のことを心配されていたのだ、よい方ではないか
それに……」
「幸村の兄上だぞ
……ということはいずれは俺にとっても義兄上となる方なのだからな」
「あ」
がたがたがた
ぷしゅうううぅぅぅぅ
何にどう反応したものか
何がどう作用したものか
小箱からあたり一面に白い煙が噴出して
とっさに反応できなかった三成も、うっかり逃げ遅れた左近も
しゅうしゅうしゅう ぼふぼふぼふ
うぎゃ〜〜〜〜!!??
――――こうして
佐和山白髪主従が誕生した
おわり もどる
実はエンパネタだった
モブ武将への妄想は止まず
いや……信幸兄上も黒いわけではないんですよ
弟思いで責任感が強くて……二重人格なだけで