「不義!!」
  「人の話を聞けい!」


光秀「信長様のもとに様々な人物が集うのは仕方がないとはいえ、揉め事はこまりますね」
秀吉「ありゃあ、兼続か……んん? 珍しい組み合わせじゃなあ」


光秀「一体何事です」
懿「知らん! こいつが勝手に……」
兼続「民に対する仁に背く行為! そのくせ遠呂智を裏切っていつの間にやらいるし!
   さらには、何と言うめんどくさい漢字の名前なのだ!! しかも一文字か!!」
秀吉「兼続……ちょっと落ち着けや〜」
兼続「義の名の下、表記を変更するがいい! 
  う〜む、何がいいかな、しば、しば、い、い……」
懿「そんなもの、『司馬』か『仲達』でいいだろうが」
兼続「いーさま、いっちゃん、ちゅうちゅう……」
仲達「嫌がらせか!!」
光秀「ふう、解決したようですね」
仲達「…………」


秀吉「これでいいじゃろ〜? 兼続」
兼続「む、義についていろいろ語っときたいところですが、とりあえずは」
仲達「……良くはない、話があるのだろう」
秀吉「ありゃ?」
光秀「……いー殿が続けるとは、思いませんでしたね」


仲達「遠呂智に対する秘密兵器がある、だから力を貸せ、という話だったではないか」
兼続「あ、そうだった」
秀吉「秘密兵器?」
仲達「よもや、『愛と勇気で』とか言うのではないだろうな」
兼続「え?」

三者の視線が司馬懿へ集まる。赤面。

仲達「っで、ではなんだ!!」
兼続「秘密兵器とは、これだ」

そういって、どこからか壺を取り出す。

兼続「老酒もわるくはないのだがな
   これは奈良の寺で貰ってきた酒で、こっちのは謙信公もお好きな、どぶろくだ」

べり とめくって、ぺろっ とひと舐め。

兼続「ふふふふふふ」
秀吉「……美味かったか〜、よかったなあ……兼続」
光秀「う……匂いが」
兼続「ん? どうされたのだ?」
光秀「私は……お酒はちょっと……苦手でして……」
兼続「なんと!? では、回復のときは一体?
   は!! まさか『金印でなければいやですわ、おほほ』というのでは」
光秀「そんな変な笑い方はしませんよ」
秀吉「……違うさ、光秀
   まあ、光秀はあんまり無双が必要ないんじゃ」
仲達「うらやましいことだな」
光秀「しかし、秘密兵器がお酒とは……ヤマタノオロチですか……」
仲達「?」
兼続「八の頭を持つ大蛇のことだ。酒で弱ったところで退治された、という伝承があるのだ」
仲達「……見ていた限り、遠呂智の首は一つしかなかったがな」
兼続「いや! 危機に陥ってから、本性を現すのが世の習い!!
   巨大化して、古志城にぐるぐる巻きついて『あんぎゃあ』ぐらいは言ってくれるかもしれん!!」
秀吉「すっごい見たそうじゃな、兼続」
光秀「おろちはヘビですから、鳴いたりはしないと思いますよ」
秀吉「だからそこじゃないんさ、光秀」
仲達「全くだな、どんな巨大なヘビの抜け殻が出来るというのだ」
秀吉「えっ、本気!? 司馬懿殿」


秀吉「いくらなんでもそりゃないで〜
   第一、そんな無茶な敵と、どうやって戦うっていうんじゃあ」
光秀「……信長様ならば……いや、しかし……」
兼続「だからこその秘密兵器だ」
仲達「この酒がか?」
兼続「むろん、これだけではない。まだまだあるぞ!
   仲間を募ると同時に、各地を回って集めていたのだ
   引き裂かれた大地を巡り、方位すらでたらめなこの世界で!」
秀吉「そりゃあ、苦労しただろうなあ」
兼続「うむ! 専用の保存庫も造ったのだ
   光を遮断し、できる限り低温を保つためのな」
仲達「……まて、私を何に使うつもりだった!?」
兼続「その通り!! それがこれだ!」
仲達「話を聞けというに!!」


ばっ


兼続「あれ?」
光秀「空っぽですね」
兼続「…………」
秀吉「ふんふ〜ん、消えた銘酒はどこへ? か
   わしの冴えたる推理を披露しようか?」
光秀「いえ……私にもわかりました」
仲達「手がかりをもとめて、振り返るまでもないな」


兼続「謙信公〜〜!!」




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