その1
小喬「ほほ〜、かなり練習したみたいだね! 『やりおる』……かな?」
兼続「ははっ! ありがとうございます、先生!」
関平「せ、先生!? 一体何をやってるんですか!?」
兼続「とび蹴りの道の修行だ」
小喬「まだまだ、だけどね!」
関平「はあ……」
小喬「ああ〜違うなあ! ドカーン、じゃなくてどか〜んなの!」
兼続「どか〜ん、か……やはり義の道は険しく遠いな……」
関平「……義なんですか?」
どか〜ん
小喬「…………(静かに首を横にふる)」
兼続「くっ、まだだ!」
関平「あの〜……とりあえず、その重そうな陣羽織を脱いだらどうですか?
ひらひらしてて邪魔そうですよ」
小喬&兼続「「!!!!」」
兼続「何を……そんな……何を言うのだ、関平殿!?」
小喬「なんてこと……」
小喬&兼続「「ひらひらしてるからいいんじゃないの」か!!!!」
関平「(凄いお怒りだ!!)」
小喬「師として……悲しいわ……」
兼続「いいえ……いずれ、きっと分かってくれるでしょう、
彼の義を信じてやりましょう!」
関平「(もしかして……)」
兼続「というわけで兄弟子だ!!」
小喬「ししょーとおよび!!」
関平「仲間に入れられてる!?」
兼続「ちなみにもう一人兄弟子がいるのだ、『師兄』とかいて『あにうえ』と呼んでいるぞ!」
びしり、と指し示すその先
関平「ええ!? って黄忠殿がもくもくと屈伸運動を!?」
黄忠「はっ、ほっ……ん、なんじゃ師弟?」
兼続「準備は念入りにですな! 師兄!!」
関平「わ〜……」
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その2
その人物を目にしたとたん、先ほどまでの朗らかな表情一変した。
ぎっ 上がるりりしき眉、 びし 突きつける長い指の先。
そして辺りに響く大きな声。
「政宗〜!? なんで貴様がいる!!!!」
「あああ!! 五月蝿いわ、兼続
どこに居ろうがわしの勝手じゃろうが!」
それは、2度目の邂逅
「『蜀軍』から使者が来ているの聞いたので、てっきり幸村が来るものと思っていたのに……なんで山犬が!!」
「幸村は幸村で用事があるのだそうだ。ふん! ふられたな兼続!!」
「……む〜……」
「まあまあ、『蜀』とはこれからもより協力していくんですし、すぐにその人とも会えますよ」
間に立って二人をなだめるのは関平。
織田を中心とするこの反乱軍には蜀の関係者も多いのだが、とりあえずの代表者として彼が使者に会いに出向いてきたのだ。
途中で、話を聞いてくっついてきたのが直江兼続。
しばらく睨みつけていたが、ふいと横を向いて口を開く。
「……遠呂智から離れたそうだな」
「……なんじゃ、文句あるのか?」
「別に! 貴様は孫市殿にもっと感謝することだな!!
だがとりあえず、こうしてくれる!」
といって、どこからか取り出す白い護符
ぺたぺたぺたぺた
かぶいた兜に鎧にそのマントに。
「こら! 何するか!!」
「破邪顕聖!」
ぺたぺたぺたぺた
「どうしてだろう……止めるべきとは思えないな」
その様子を見ながら首を傾げる関平。
「じゃ、じゃれておるわけではない! さっさとこの馬鹿を止めむぐ!!」
その口にもぺたぺた
「ふ〜〜」
一仕事終えた顔で額を拭う兼続。
その背後で関平は、そっと貼り付けられていた護符を一枚はがしてやる。
「使者として来ていたのは二人と聞いていたのだが、もう一人は?」
「ぷは! ちょっと席を外しておるだけじゃ、ほら」
といって、あごで背後を示す。
「これは……関平、久しぶりだな」
「趙将軍!!」
そこに立っていたのは、今の『蜀』をまとめている趙雲その人。
その姿を目にして、蜀が瓦解してからの長い時間が思い起こされ、
思わず関平も言葉が詰まる。
「何!!」
ばっと振り向く兼続。
「趙雲殿だと! 本物!?」
「ちょっと、兼続殿!?」
「え? ええ、本物ですよ」
苦笑しながら答える趙雲。
「貴方は、兼続殿ですね。幸村から話は聞いています」
「そ、そうか! いや……幸村は元気にやっているだろうか」
「はい」
「ああ! そうだ、私は直江……直江兼続という者だ
貴殿にあえて光栄に思う!!」
「あ、ありがとう。わたしもです」
「本当か!!」
きらきら輝く目
「ええと……将軍が使者としてこられるとは思いませんでした。
『蜀』軍のほうは大丈夫なのですか?」
「ああ、幸村に任せているので大丈夫だ。他にも頼りになる仲間が増えている。
関平の知っている者もいるぞ」
「そうですか!」
話込む二人。
「おい、貴様らわしを……」
放って置かれて、ひとりでせっせと護符を剥がすはめになる政宗。
ぎっ、と入念に貼り付けた張本人を見れば、
きらきら輝く目
「……兼続?」
「くうっ!! 感激だ!!!!」
叫んだ。
「こうして趙雲殿のような義の武人と会えるとは!!
集う義!! まさに奇跡!!」
興奮した様子で、ぶんぶんと腕を振る。
「しかも会話しちゃった〜!!
うわ! どうしよう、何も準備していなかった!!」
落ち着かないまま辺りを見回して、ふ、と政宗と目が合う。
「おお! そうだ、趙雲殿!!」
「はへ!?」
「これ、もらってください!! 義を込めて手作りした護符です!!」
ごぞっと、取り出してその手に乗せる。
「私が使っているものとおそろいですぞ!!
ああ! なんだったらこの一枚にサインをお願いしたい!!」
「さ、さいん?」
「名前と、あと『義』の一文字を書いてください!!
わあ! 直筆だぁ!!」
ぱこん!
叩かれる長い兜の先、ずれる庇。
怯んだところで、がし! と腕をつかむとそのまま全力で引き摺っていく伊達政宗。
「なにする政宗!!」
「喧しいわ馬鹿め〜〜!!」
遠くなっていく二人をぽかんと眺める趙雲と関平、
「なんだろう?」
「……恥ずかしかった、みたいです」
護符まみれの自分の姿よりも。
「なるほど、あれが直江兼続殿か……話に聞いて思っていた通りの人だな」
「どういう……話だったんですか?」
趙雲の様子を見て首を傾げる関平。
「幸村の、話だよ」
ふっと微笑んだ。
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その3
側面から、そして背後から上がる喊声。予測し切れなかった増援。
関平は、敵ただ中を駆けながら、味方の位置を思い浮かべる。
「しまった! 囲まれた!!」
大刀を振り抜く。ずん、と重い音をたてて倒れる敵将。
それでも道は開けない。
本陣は、遠い。
柄を握りしめる手が震えるほどに力が篭る。
その時、青い光が煌めいたような気がした。
幻覚だろうか
そして舞い散る花の色
兼続「とりゃあ! 不義を断つ!!」
阿国「平ちゃん、無事〜?」
関平「あ……」
阿国「ああ、良かった。平ちゃん、うちの舞い見てくれた?」
関平「はい! 救援ありがとうございます!」
兼続「ふっ、別に救援というわけではない
私は私の役目を果たしに来たのだ」
関平「え?」
兼続「桃を手に入れたのだ!!」
ぐい、と目の前に突き出される薄紅の果実
兼続「食べ物の効果は、一人だけではなく、皆で分け合うものだろう!
ひとりは皆のため!! 義!! というわけでさっそく」
取り出す短刀
するする、ととと
阿国「まあ、上手どすなあ」
兼続「いつも謙信公のためにやっているからな」
関平「あ、あの……敵が……囲んでますけど……」
兼続「さあ、出来たぞ!」
阿国「平ちゃん、あ〜ん」
関平「え!? いや、あの」
阿国「じゃあ、うちにあ〜ん?」
関平「うわ、あの、ええと」
兼続「とう」
ぽぽい
2切れ、2つの口へと放り込んで
兼続「では、次へいくぞ!!」
桃を載せた皿を片手に、敵のど真ん中へと飛び込んでいく。
関平「……回復するのは、皆というか、一緒にいる『ちーむ』の人だけですし
兼続殿が食べれば自動的に効果はあるはずなんですが……」
ごっくん
阿国「んん……ほな、いこか〜」
関平「あ! はい!!」
桃、一切れ分の力をもらって
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