《墓守》たち


深夜―――1日が終わろうという時刻。
薄雲が月を覆い闇に包まれる中、一棟の建物には明々と灯が燈っていた。


重い音をたてて扉が閉じる。

ふてくされた顔をして生徒会室に入ってきた男子生徒を、 とびきり綺麗だが何処かからかう調子を含んだ笑顔が出迎えた。

「あら、ちゃんと顔を出したのね」
「……ふん、別に」

部屋の中央の大きなテーブル、入り口を眺める位置に座っていた生徒会会計が文庫本から顔を上げて 声をかける。

「ああ、女子寮の件ならもう解決しましたよ、副会長が」
「は!?」
「あら? ……何やってんのかしらね《副会長》」
「まあ解決するつもりでやったわけじゃ無いことは確かでしょうねえ……《副会長》ですから」
「副会長!?」
「そうよ〜《副会長補佐》」
「《補佐役》なのに逆に補佐されちゃいましたねえ」
「っ!? なんなんすかそいつはっ」
《補佐》の男子生徒は両手でテーブルを叩いて声を荒げる。

「なんなのってねえ」
「なんなんでしょうねえ」





「っくし!」
「風邪か?」
「ずっと外にいたからな」
「牛乳でも飲むか? 温めさせるぞ」
「……いやいい」


儚げな光を放つ照明の下、黒く塗られた机が一つ。
机の前には一人の男が腰掛けており、窓辺に立つもう一人の人物に向かって静かに視線を投げかけていた。
窓辺に立つ人影から、再び大きなくしゃみが聞こえた。
黙したまま、男は執事を呼ぶための鐘を鳴らした。


「身体能力も高いし、カレーもうまい。武器を扱う能力も高い……が」

ふっ、と二人の間に沈黙が降りる。
大きな窓を風の音が叩く。雲が流れたのだろう、月の光が差し込んできた。

「だが、詰めが甘い―――真実に辿り着くことなく終わるさ」

窓を背にした男の顔は暗く、その表情は誰にもうかがい知ることはできない。

「それがお前の見解か、ならばもう……」
「まあ、あいつを送り込んできた組織については得体が知れないままだ」
「そうか」

「それより、聞きたいことがあるんだが」
「……なんだ」
窓の外へと視線を向けたまま、椅子に座った男が答える。



「《執行委員》を選んだ基準はなんだ?」
「ふむ?」




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