密やかな話は闇の中……ではなく真昼間のだんご屋の前で

とある大名の屋敷も近く、人通りも多い。
そこに2人の男がだんごを囲んでなにやら話し合い
何故かその足元に数匹の黒猫
何処となく怪しげであり、でも何処となくのどかな情景



「う〜む、昨日の手は失策だったな」
凛々しい顔つきの若い男がだんごを銜えたまま器用に話す。
「大道芸人の振りをして、道を塞いだまでは良かったと思ったのになあ」
「まあ、確かに。凄い盛況ぶりだったよね」
とだんごの皿を持って、店の奥から少年が出てきて言う。
「おかげでだんごも良く売れて」
「……お前、本気でだんご屋になるつもりじゃあないだろうな」
「偶にならいいかもね」
といいつつ、隣に座って持ってきただんごを自分で食べ始める。
「そっちも女の人にもてもてで、本気で芸人になるのもいいんじゃない?」
「ふん……偶にならな」
ふりふり、話すにあわせて、だんごの串がゆれる。
「商品の大半を身内で食っては、商売にはならんじゃろう……」
と大柄な僧の姿の壮年の男が呆れた声

「それに道一つ塞いだところで、別の道を行けばそれですむことじゃからなあ」
「計算外だった……」
「最初に気付いてよ……」



にゃ〜ん



「今日の作戦はこれだ!!」
と足元の黒猫一匹持ち上げる。
「甚八から預かった『人懐っこい黒猫』だ!!」
「本当になつっこいのお」
「で、これをどうすんのさ。才蔵」
「うむ!これをうちの屋敷へ行く道、すべてに配置する」
「ほほう」
「そして通るたんびに前を横切らせる!という寸法だ」
「「…………、はあ」」
「鎌之助!なんだそのやる気のない反応は!!清海入道まで!!」
才蔵は怒鳴るが
「なんだもなにも」
「そんな迷信なぞ気にする方ではなかろう」
2人そろって呆れた表情
「ひょっとしたらひょっとするかも知れんじゃないか!!」
「ひょっとなんかしないよ」



にゃ〜ん



人通りは相変わらずで、ただ、だんご屋の雰囲気に客が寄り付かない。
子供が遠巻きに猫を構いたそうにしてはいたが
この分ではそのうち会議は打ち切らねばなるまい、今日の作戦は中止だろうか。



「直接叩き潰すわけにはいかんのがなあ」
「物騒だね」
「物騒なものか!!それに物騒なのは相手の方だ!!」
頭をかきむしって才蔵
「幸村様に何かあっては!!」
「ふむ……幸村様が今日は会えぬと断るのが確実ではないか?」
と三好清海が尋ねる。
「それは……」
「こう毎日毎日会う用事があるとも思えん、そもそもどう考えておるのか聞いて……」
「ま、まってくれ!!」
と止める
「なんじゃ」
「その……幸村様に聞くのは、それは……待ってくれ!!」
「なんじゃあ〜」
入道、呆れ顔で才蔵の何時にない焦燥の様を眺めた。

「聞くことで事態が動くかもしれないからね」
「まだまだ、意識するようになるかも、といった段階ということか?」
「……本当は、どうだろうね」
だんごをもう一本手にとって鎌之助
「まあ『恐くて聞けない』のは向こうもみたいだし」
「なんとまあ……では」
と猫を膝に乗せて清海
「この攻防、これからも毎日毎日続くのかの」
「この調子じゃいつ成功するのやら、だよねえ
でも……」



「簡単に、毎日毎日会えるのが当たり前、と思ってるのは叩き直さなきゃね」
「ふむ」
2人、決意を込めて立ち上がる。
「では……」
と2人を見上げて、間に座っていた若い男の姿が掻き消えた。

「……猫は置いてけい、猫は……」



ふにゃ〜ん





おわり   もどる






義トリオすら全くでてない……
ま、まあ、偶(?)には……