一つだけ願いがかなうとしたら―――





ぽすんと出現する桐の箱
「ん?……武器か。一応取っておくか」
既に第四武器まで入手済みだが、まあ折角出たんだし
と三成が箱を開けると。
ぱんぱっかぱ〜ん

「おめでとうございます!!私は魔法の嘉瑞招福、
その名も大一大万大大吉!!」

と何処からともなくファンファーレ、扇からはやたらにかわいい声

「…………」

三成は無言で振りかぶった

「わあ〜っ、ちょ、ちょっと待って!待って〜!?」
「怪しい武器はいらん」
「怪しくは……いや、怪しいかもしれませんが
ともかく私は大一大万大大吉。入手したあなたにビッグチャンス!!」
「びっぐ……?」
「願い事を一つ叶えましょう!!もちろん無料ですよ!!」
「はあ?」
怪しい武器は限りなく怪しい事をのたまった。



「願い事などない」
「あ、信じてませんね?でもホントちゃんと叶えますよ……出来ることなら」
「それはどっちでもいい。やりたいことなら自力で成し遂げる、いちいち願う暇など、ない。」
「それはいい心がけですが……でもどうにもならない事だってあるでしょう?
わたくしだって、『世界を平和に』とか逆に『世界征服!』とか願われてもどうにもならないですし」
「どうにもならないのか」
「そんなに何でもと言うわけには……」
と扇
「そうですね〜『よろずやの特売品を増やしてくれ』とか『親知らずが痛いので何とかしてくれ』とか位ならば……」
「そんなもんなのか……」
気抜けする三成
「そんなもんです
ちょっと自力では不可能で、でもなんとかちょっと力を貸して欲しい
そんな事、本当にないですか?」
ちょとした力を、ですよ……



一つだけ願い事がかなうなら―――



「幸村に……」

人の気持ちは自力では不可能なことだろうか

「幸村に、あ……」

それはちょっとしたことなのだろうか

ぎゅっと拳を握り締め
「幸村に『兄上!』と呼んでもらいたい!!!」



「はあ……」
「一度で良いぞ!!」
「まあ……一回ぐらいなら何とか、呼び間違うってことで……」
「呼び間違いではなくってだな!!」
「え〜……」
「そこを何とか!!」
「何とかって……」
立場一転
気がつけば、
扇に向かって一人叫んでいるのだった。





おわり   もどる