たとえば不意に

こちらから訪ねたとか、約束していたとか、

兼続が連れて来たとか
おねね様が呼んできたりだとか


そんな予測できるような理由ではなく


例えば街中で
不意に、思いがけずその姿が見れたりしたら
それは


(嬉しい)


「これは三成殿!今日会うのは初めてですね、昨日はお世話になりました。」
「あ、ああ……いや、大したことではない……」


(運命なぞ信じたこともないが……)


「今日はどこかへお出かけで?」
「いや……ただの気晴らしだ」
「気晴らしですか」


(それとも……お前も)


「おお!!二人とも、今日も善き義日和だな!!」
「随分曇ってて暗いけどな」
「何を言う慶次!!義でない天候などあるものか!!」


「この反物の色、可愛いねえ。あっちのと合いそうだねえ。」
「おねね様……も、もうこれ以上もてませんぞ」
「なんだい正則、情けないねえ。
あ、三成がいるよ!!ついでにもって帰ってもらおうよ」
「な、なんですとぉ!?」


(お前も……会いたいと)


「ななななな何で居るんだ!?ど〜いうことだよ才蔵!!」
「(離れろ離れろ離れろ離れろ離れろ離れろ離れろ離れろ離れろ離れろついでにこけろ)」
「おいって!!」
「うっさい甚八!!今、念を送るので忙しいんだ!!」
「念!?」


(会いたいと思って……)


「会えるとは思わなかったので、吃驚しました」
「……そうか……」
(…………そうだよな)


「でも」


「会えたのが、嬉しいです」


そういって顔に広がる笑みに、三成の息が一瞬とまる


言え、早く言うのだ、石田三成。


ひとつ ふたつ、頭の中で数えながら、息をついて
意を決して口を開く




「幸村……」




「皆さんに」
「何!?」




くるり  振り向くまでがタイムリミット






おわり   もどる






偶には、(書いてて)恥ずかしいのを

別人……だよなあ